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担当編集委員:[http://researchmap.jp/keijitanaka 田中 啓治](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/keijitanaka 田中 啓治](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | ||
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その経歴を通して、今日の脳科学の基礎となる脳外科学のみならず、今日に至る神経科学の発展に多大な貢献をした。てんかんの外科治療の先駆者であるとともに、脳外科手術時に[[wikipedia:ja:全身麻酔|全身麻酔]]を行わず、切開部の局所麻酔で行った。脳そのものには痛みを含む[[感覚受容体]]がないためこのような術式が可能である。この術式を用いると手術中も患者に意識があるため、[[大脳皮質]]の電気刺激による脳局所の機能同定を行なうことができ、疾患のある脳領域の切除部決定をするにあたって、機能保存すべき大脳皮質領域の決定が可能になった。世界的に麻酔の安全性を優先させるため脳外科手術も全身麻酔で行われるようになったため、このような術式は行われることが少なくなったが、最近になって麻酔全般の安全性向上にともなって復活してきている。 | |||
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Penfieldはさまざまな脳領域の刺激に基づく膨大な知見をもとに、[[ヒト]]大脳の[[一次運動野]]と[[一次体性感覚野]]の[[ホムンクルス]](homunculus, 小人間像)として知られる[[体性地図]]の存在を明らかにするなど、ヒト脳の大脳皮質に[[機能局在]]があることを明らかにした<ref>'''Penfield, W. & Rasmussen, T.'''<br>The Cerebral Cortex of Man.<br>MacMillan, New York, 1950</ref>。さらに、同様の方法を用いて、[[運動連合野]]である[[補足運動野]]の存在を明らかにしたとともに<ref><pubmed> 14867993</pubmed></ref>、ヒト側頭葉の電気刺激により過去の記憶が誘発されたことから側頭皮質が視覚記憶に関与することを明らかにした<ref><pubmed> 14893992 </pubmed></ref>ことなど、ヒト脳の機能地図を発見したパイオニアである。その後サルの大脳皮質にも一次運動野および補足運動野の存在が確認されたが、近年の研究により、大脳前頭皮質には一次運動野および補足運動野の他にも多数の運動領野が存在し、それぞれが機能特異性を有していることが明らかにされてきた。またサル側頭葉が短期および長期記憶に重要な役割を果たしていることなどが明らかにされてきた<ref> '''Kandel, E. et al.'''<br>Principles of Neural Science 5th ed..<br>McGraw-Hill, New York.</ref>。 | |||
Penfieldはさまざまな脳領域の刺激に基づく膨大な知見をもとに、[[ヒト]]大脳の[[一次運動野]]と[[一次体性感覚野]]の[[ホムンクルス]](homunculus, 小人間像)として知られる[[体性地図]]の存在を明らかにするなど、ヒト脳の大脳皮質に[[機能局在]]があることを明らかにした<ref>'''Penfield, W. & Rasmussen, T.'''<br>The Cerebral Cortex of Man.<br>MacMillan, New York, 1950</ref>。さらに、同様の方法を用いて、[[運動連合野]]である[[補足運動野]]の存在を明らかにしたとともに<ref><pubmed> 14867993</pubmed></ref>、ヒト側頭葉の電気刺激により過去の記憶が誘発されたことから側頭皮質が視覚記憶に関与することを明らかにした<ref><pubmed> 14893992 </pubmed></ref> | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
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2015年12月16日 (水) 09:30時点における版
蔵田 潔
弘前大学 大学院医学研究科 統合機能生理学講座
DOI:10.14931/bsd.965 原稿受付日:2012年12月6日 原稿完成日:2015年月日
担当編集委員:田中 啓治(独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)
ワイルダー・グレイヴス・ペンフィールド | |
---|---|
Dr Wilder G. Penfield (vers 1934). | |
Born |
Wilder Graves Penfield Jan. 26, 1891 Spokane, Washington, United States |
Died |
April 5, 1976 (age 85) Montreal, Quebec, Canada |
Nationality | Canadian |
Fields | Neurology, neurosurgery |
Institutions |
Hôpital Royal Victoria, Institut neurologique de Montréal |
Alma mater | Princeton, Oxford, Johns Hopkins |
Known for |
Surgical treatment of epilepsy Functional localization in brain |
Penfield, Wilder Graves
アメリカ合衆国、カナダの脳神経外科医。米国ワシントン州スポケーン生まれ。米国プリンストン大学卒業後、イギリス・オックスフォードのマートン・カレッジでシェリントンの下で神経科学を学んだ。また、オックスフォードでは今日の医学教育・医療の基礎を築いたことで知られるウイリアム・オスラーとも出会っている。米国に戻り、ボルチモアのジョンズ・ホプキンス大学で医学博士号を取得後、クッシング病でその名の残るハーヴェイ・クッシングのもとで脳外科の薫陶を受けた。その後、ニューヨーク神経学研究所に移り、てんかんの脳外科手術を手がけるようになった。1928年にPenfieldはカナダのモントリオールにあるマギル大学に招聘され、同大学に1934年に設立されたモントリオール神経学研究所の初代所長となった。
その経歴を通して、今日の脳科学の基礎となる脳外科学のみならず、今日に至る神経科学の発展に多大な貢献をした。てんかんの外科治療の先駆者であるとともに、脳外科手術時に全身麻酔を行わず、切開部の局所麻酔で行った。脳そのものには痛みを含む感覚受容体がないためこのような術式が可能である。この術式を用いると手術中も患者に意識があるため、大脳皮質の電気刺激による脳局所の機能同定を行なうことができ、疾患のある脳領域の切除部決定をするにあたって、機能保存すべき大脳皮質領域の決定が可能になった。世界的に麻酔の安全性を優先させるため脳外科手術も全身麻酔で行われるようになったため、このような術式は行われることが少なくなったが、最近になって麻酔全般の安全性向上にともなって復活してきている。
Penfieldはさまざまな脳領域の刺激に基づく膨大な知見をもとに、ヒト大脳の一次運動野と一次体性感覚野のホムンクルス(homunculus, 小人間像)として知られる体性地図の存在を明らかにするなど、ヒト脳の大脳皮質に機能局在があることを明らかにした[1]。さらに、同様の方法を用いて、運動連合野である補足運動野の存在を明らかにしたとともに[2]、ヒト側頭葉の電気刺激により過去の記憶が誘発されたことから側頭皮質が視覚記憶に関与することを明らかにした[3]ことなど、ヒト脳の機能地図を発見したパイオニアである。その後サルの大脳皮質にも一次運動野および補足運動野の存在が確認されたが、近年の研究により、大脳前頭皮質には一次運動野および補足運動野の他にも多数の運動領野が存在し、それぞれが機能特異性を有していることが明らかにされてきた。またサル側頭葉が短期および長期記憶に重要な役割を果たしていることなどが明らかにされてきた[4]。
参考文献
- ↑ Penfield, W. & Rasmussen, T.
The Cerebral Cortex of Man.
MacMillan, New York, 1950 - ↑
PENFIELD, W., & WELCH, K. (1951).
The supplementary motor area of the cerebral cortex; a clinical and experimental study. A.M.A. archives of neurology and psychiatry, 66(3), 289-317. [PubMed:14867993] [WorldCat] - ↑
PENFIELD, W. (1952).
Memory mechanisms. A.M.A. archives of neurology and psychiatry, 67(2), 178-98. [PubMed:14893992] [WorldCat] - ↑ Kandel, E. et al.
Principles of Neural Science 5th ed..
McGraw-Hill, New York.