「PDZドメインタンパク質」の版間の差分

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<font size="+1">坪山 幸太郎、[http://researchmap.jp/tanakasj 田中 慎二]、[http://researchmap.jp/shigeookabe 岡部 繁男]</font><br>
<font size="+1">坪山 幸太郎、[http://researchmap.jp/tanakasj 田中 慎二]、[http://researchmap.jp/shigeookabe 岡部 繁男]</font><br>
''東京大学大学院医学系研究科''<br>
''東京大学大学院医学系研究科''<br>
DOI [[XXXX]]/XXXX 原稿受付日:2013年10月31日 原稿完成日:2013年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年10月31日 原稿完成日:2015年12月30日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br>
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===リガンドタンパク質のC末端構造===
===リガンドタンパク質のC末端構造===
 リガンドタンパク質においてPDZドメインとの結合に重要な構造は、先述した溝と相互作用するC末端部分の4つのアミノ酸残基である<ref name=ref2 />。両者の安定な結合にはPDZドメインのβBストランド構造との[[wikipedia:ja:水素結合|水素結合]]が寄与している。
 リガンドタンパク質においてPDZドメインとの結合に重要な構造は、先述した溝と相互作用するC末端部分の4つのアミノ酸残基である<ref name=ref2 />。両者の安定な結合にはPDZドメインのβBストランド構造との間の[[wikipedia:ja:水素結合|水素結合]]が寄与している。


===分類===
===分類===
 PDZドメインタンパク質とリガンドタンパク質との結合は、αBの最初のアミノ酸残基とリガンドタンパク質のC末端から3番目の位置(C(-2))のアミノ酸残基との相互作用によっている<ref name=ref2 />。そのため、リガンドタンパク質のC(-2)に位置するアミノ酸の種類によって、それと結合するPDZドメインタンパク質の分類が行われている。
 PDZドメインタンパク質とリガンドタンパク質との結合は、αBの最初のアミノ酸残基とリガンドタンパク質のC末端から3番目の位置(C(-2))のアミノ酸残基との相互作用によっている<ref name=ref2 />。そのため、リガンドタンパク質のC(-2)に位置するアミノ酸の種類によって、それと結合するPDZドメインタンパク質の分類が行われている。


 クラスIには、PSD-95などが含まれ、C(-2)には、[[wikipedia:ja:セリン|セリン]]または[[wikipedia:ja:スレオニン|スレオニン]]が存在している。
 クラス Iには、PSD-95などが含まれ、C(-2)には、[[セリン]]または[[スレオニン]]が存在している。


 クラスIIには、PICK1などが含まれ、C(-2)には、[[wikipedia:ja:疎水性アミノ酸|疎水性アミノ酸]]残基が存在している。クラスIIIには、[[nNOS]]などが含まれ、C(-2)には、[[グルタミン酸]]や[[wikipedia:ja:アルギニン酸|アルギニン酸]]といった負の電荷をもつアミノ酸が存在する。
 クラス IIには、[[PICK1]]などが含まれ、C(-2)には、[[wikipedia:ja:疎水性アミノ酸|疎水性アミノ酸]]残基が存在している。クラス IIIには、[[nNOS]]などが含まれ、C(-2)には、[[グルタミン酸]]や[[アルギニン酸]]といった負の電荷をもつアミノ酸が存在する。


 C(-2)の位置のアミノ酸も重要であるが、その一つN末端側のC(-3)の位置のアミノ酸も、PDZドメインタンパク質とリガンドタンパク質との特異的な結合において重要である事がわかっている。
 C(-2)の位置のアミノ酸も重要であるが、その一つN末端側のC(-3)の位置のアミノ酸も、PDZドメインタンパク質とリガンドタンパク質との特異的な結合において重要である事がわかっている。


{| class="wikitable" style="float=right"
{| class="wikitable"
|+ 表1.PDZドメインの分類
|+ 表1.PDZドメインの分類
|-  
|-  
| Class
! Class!! C末端配列!! リガンドタンパク質!! PDZドメインタンパク質
| C末端配列
| リガンドタンパク質
| PDZドメインタンパク質
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| ClassI
|colspan="4" | '''Class I'''
|
|
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|-
| rowspan="3" | X-S/T-X-V
| rowspan="3" | X-S/T-X-V
124行目: 118行目:
| Shank
| Shank
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|-
| ClassII
|colspan="4" | '''Class II'''
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|
|-
|-
| rowspan="4" | X-φ-X-φ
| rowspan="4" | X-φ-X-φ
146行目: 137行目:
| CASK
| CASK
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| ClassIII
|colspan="4" | '''Class III'''
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| X-D-X-V  
| X-D-X-V  
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==調整機構==
==調整機構==
 PDZドメインタンパク質とリガンドタンパク質の相互作用は[[リン酸化]]によって調節される<ref name=ref6 />。典型的には、リガンドタンパク質のC末端のリン酸化によって、PDZドメインとの相互作用が阻害される。例えば、[[カリウムチャネル]]や[[β1アドレナリン受容体]]、[[stargazin]]などのC末端がリン酸化されることによって、PSD-95のPDZドメインとの結合能が低下する。また、PDZドメインのリン酸化もリガンドタンパク質との相互作用に影響を及ぼす。例えば、[[Ca2+/カルモジュリン依存製タンパク質キナーゼII|Ca<sup>2+</sup>/カルモジュリン依存製タンパク質キナーゼII]] ([[Ca2+/calmodulin dependent protein kinase II|Ca<sup>2+</sup>/calmodulin dependent protein kinase II]], [[CaMKII]])依存的に[[synapse-associated protein97]]([[SAP97]])のPDZドメインがリン酸化されることによって、[[NMDA受容型グルタミン酸]]のサブユニットの[[NR2A]]との相互作用が低下する。
 PDZドメインタンパク質とリガンドタンパク質の相互作用は[[リン酸化]]によって調節される<ref name=ref6 />。典型的には、リガンドタンパク質のC末端のリン酸化によって、PDZドメインとの相互作用が阻害される。例えば、[[カリウムチャネル]]や[[β1アドレナリン受容体]]などのC末端がリン酸化されることによって、PSD-95のPDZドメインとの結合能が低下する。また、PDZドメインのリン酸化もリガンドタンパク質との相互作用に影響を及ぼす。例えば、[[Ca2+/カルモジュリン依存製タンパク質キナーゼII|Ca<sup>2+</sup>/カルモジュリン依存製タンパク質キナーゼII]] ([[Ca2+/calmodulin dependent protein kinase II|Ca<sup>2+</sup>/calmodulin dependent protein kinase II]], [[CaMKII]])依存的に[[synapse-associated protein97]]([[SAP97]])のPDZドメインがリン酸化されることによって、[[NMDA受容型グルタミン酸]]のサブユニットの[[NR2A]]との相互作用が低下する。


==機能==
==機能==