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Yoshiyamatsuzaka (トーク | 投稿記録) 細 (ページの作成:「前補足運動野(presupplementary motor area, pre-SMA)<br>概要<br>前補足運動野(presupplementary motor area, pre-SMA)とは大脳皮質前頭葉のうちBrodmann...」) |
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前補足運動野(presupplementary motor area, pre-SMA)<br> | =前補足運動野(presupplementary motor area, pre-SMA)=<br> | ||
歴史的経緯<br> | 前補足運動野(presupplementary motor area, pre-SMA)とは大脳皮質前頭葉のうちBrodmann分類の6野内側部かつ[[補足運動野]]の前方を占める皮質運動領野である。かつては[[補足運動野]]の一部と看做されていたが、その後の研究によって解剖・生理学的性質や機能の違いが明らかになり、現在では6野内側部後方を(狭義の)補足運動野、前方を前補足運動野として区別する。前補足運動野は[[前頭前野]]と密接な線維連絡を持ち、[[補足運動野]]に比べて高次の運動制御に関わっていると考えられている。 | ||
歴史的経緯<br> 古典的な定義による[[補足運動野]]はBrodmann分類の6野内側部全体を占めると考えられてきた。しかし6野内側部は皮質の層構造の違いから前後二つの領域(それぞれ6aβ及び6aα、又はF3及びF6)に分けられることが知られており、又90年代に入って6aαに加えて6aβからも電気刺激によって上肢の運動を惹起できること、及び6aβ野には動物が手を伸ばして物を取ろうとするときに特徴的な活動を示すニューロン群が見られることなどから6野内側部全体を一つの皮質運動野と看做す考え方に疑義が呈されるようになった。こうした経緯を踏まえて、同じ個体(サル)で系統的に6野内側部前方・後方の性質を比較した研究(Matsuzaka et al 1992)の結果、1).従来補足運動野と呼ばれていた6野内側部には、前後各一つずつの上肢の運動に関連した領域が存在すること、2).6野前方部の領域は後方部とは解剖・生理学的な性質が異なること、3).従来から知られていた補足運動野の性質([[体部位再現]]の存在、電気刺激による運動の誘発、脊髄への投射経路の存在など)は6野内側部後方に当てはまる事、が明らかにされるに及んで6野前方部は前補足運動野として確立され、[[補足運動野]]とは異なる領域として取り扱われるに至った。なお、前補足運動野の概念は最初に動物実験で確立されたが、現在ではヒトでも6野内側部は前補足運動野と補足運動野に分けられることが明らかにされている(Zilles et al 1995; Picard & Strick, 1996; Baleydier et al 1997)。 | |||
解剖・生理学的所見<br>前補足運動野の位置は6野内側部前方で組織学的には6aβ(Vogt and Vogt 1919)やF6(Matelli et al 1991)と呼ばれる領域に該当する。前補足運動野は補足運動野とは以下の点で区別される。<br>1) 電気刺激の効果<br>前補足運動野のニューロンは上肢の運動に関連して活動し、又この領域からは電気刺激によって上肢の運動を惹起することが出来る。しかし、前補足運動野における誘発運動には補足運動野に比べてより強い電流を必要とし、しかも刺激の効果は明確でない場合が大部分である。又、前補足運動野の上肢領域は補足運動野の顔の領域よりも前方に位置し、それよりも後方に位置する補足運動野の上肢支配領域とは空間的にも分離している。<br>2) 感覚応答<br>前補足運動野のニューロンは視覚刺激に対して反応する一方、体性感覚刺激には殆ど反応しない。対照的に補足運動野においては体性感覚刺激に対する応答が顕著であり、しかもその受容野は前方から後方にかけて顔、上肢、体幹、下肢の順に配置されている(体部位再現)。反面視覚刺激に対する応答性は乏しい。<br>3) 皮質-皮質間投射及び皮質下との線維連絡(Luppino et al 1993; Inase et al 1996)<br>前補足運動野と補足運動野はその入力・出力のパターンが大きく異なる。前補足運動野には前頭前野背外側部(Brodmannの46野)から密な直接入力があり、その他にも8b野、及び前頭眼窩皮質の11,12野からも入力を受け取っている。対照的に補足運動野と前頭前野との線維連絡は乏しい。他の皮質運動野との線維連絡も前補足運動野と補足運動野は異なる。先ずどちらの領野にも背側及び腹側運動前野(PMd及びPMv)からの入力があるが、前補足運動野への入力はPMd, PMvの吻側部(PMdr及びPMvr)からの入力が主であるのに対して、補足運動野へはPMd, PMvの尾側部(PMdc及びPMvc)からの入力が優勢である。帯状皮質運動野からの入力も両領野は異なり、前補足運動野は吻側帯状皮質運動野(CMAr)から、補足運動野は尾側帯状皮質運動野(CMAc)からそれぞれ入力を受け取る。一次運動野との関係では、補足運動野は一次運動野と密な双方向性の線維連絡を持つ一方、前補足運動野は一次運動野とは線維連絡を持たない。頭頂葉との関係についてみると、前補足運動野、補足運動野はそれぞれ下、上頭頂皮質(それぞれBrodmann分類の7a, 5野)からの入力を受ける。<br>皮質下との線維連絡にも両領野間に違いが見られる。前補足運動野、補足運動野への視床からの入力はそれぞれVApc, VLo核が主な入力源である。線条体に対しては補足運動野が被殻に投射するのに対して、前補足運動野は被殻と尾状核の中間部に投射する。又、脊髄に対しては補足運動野からは脊髄への直接投射があるのに対して前補足運動野からは皮質脊髄投射はない。<br>上記の入出力パターンの違いは多くの場合絶対的なものではない。即ち前補足運動野・補足運動野と入出力関係を持つ領域は完全には分離しておらず、ある程度の重なりが見られる。しかしその中で最も顕著な違いは前頭前野、一次運動野・脊髄との関係で、前頭前野は前補足運動野に投射するのに対して、補足運動野には投射しない(Luppino et al 1993)。また補足運動野は一次運動野・脊髄に直接投射しているのに対して、前補足運動野からは電気刺激による運動の誘発のしにくさから予想されるように、一次運動野・脊髄への投射はない(Matsuzaka et al 1992; Luppino et al 1993)。 | 解剖・生理学的所見<br>前補足運動野の位置は6野内側部前方で組織学的には6aβ(Vogt and Vogt 1919)やF6(Matelli et al 1991)と呼ばれる領域に該当する。前補足運動野は補足運動野とは以下の点で区別される。<br>1) 電気刺激の効果<br>前補足運動野のニューロンは上肢の運動に関連して活動し、又この領域からは電気刺激によって上肢の運動を惹起することが出来る。しかし、前補足運動野における誘発運動には補足運動野に比べてより強い電流を必要とし、しかも刺激の効果は明確でない場合が大部分である。又、前補足運動野の上肢領域は補足運動野の顔の領域よりも前方に位置し、それよりも後方に位置する補足運動野の上肢支配領域とは空間的にも分離している。<br>2) 感覚応答<br>前補足運動野のニューロンは視覚刺激に対して反応する一方、体性感覚刺激には殆ど反応しない。対照的に補足運動野においては体性感覚刺激に対する応答が顕著であり、しかもその受容野は前方から後方にかけて顔、上肢、体幹、下肢の順に配置されている(体部位再現)。反面視覚刺激に対する応答性は乏しい。<br>3) 皮質-皮質間投射及び皮質下との線維連絡(Luppino et al 1993; Inase et al 1996)<br>前補足運動野と補足運動野はその入力・出力のパターンが大きく異なる。前補足運動野には前頭前野背外側部(Brodmannの46野)から密な直接入力があり、その他にも8b野、及び前頭眼窩皮質の11,12野からも入力を受け取っている。対照的に補足運動野と前頭前野との線維連絡は乏しい。他の皮質運動野との線維連絡も前補足運動野と補足運動野は異なる。先ずどちらの領野にも背側及び腹側運動前野(PMd及びPMv)からの入力があるが、前補足運動野への入力はPMd, PMvの吻側部(PMdr及びPMvr)からの入力が主であるのに対して、補足運動野へはPMd, PMvの尾側部(PMdc及びPMvc)からの入力が優勢である。帯状皮質運動野からの入力も両領野は異なり、前補足運動野は吻側帯状皮質運動野(CMAr)から、補足運動野は尾側帯状皮質運動野(CMAc)からそれぞれ入力を受け取る。一次運動野との関係では、補足運動野は一次運動野と密な双方向性の線維連絡を持つ一方、前補足運動野は一次運動野とは線維連絡を持たない。頭頂葉との関係についてみると、前補足運動野、補足運動野はそれぞれ下、上頭頂皮質(それぞれBrodmann分類の7a, 5野)からの入力を受ける。<br>皮質下との線維連絡にも両領野間に違いが見られる。前補足運動野、補足運動野への視床からの入力はそれぞれVApc, VLo核が主な入力源である。線条体に対しては補足運動野が被殻に投射するのに対して、前補足運動野は被殻と尾状核の中間部に投射する。又、脊髄に対しては補足運動野からは脊髄への直接投射があるのに対して前補足運動野からは皮質脊髄投射はない。<br>上記の入出力パターンの違いは多くの場合絶対的なものではない。即ち前補足運動野・補足運動野と入出力関係を持つ領域は完全には分離しておらず、ある程度の重なりが見られる。しかしその中で最も顕著な違いは前頭前野、一次運動野・脊髄との関係で、前頭前野は前補足運動野に投射するのに対して、補足運動野には投射しない(Luppino et al 1993)。また補足運動野は一次運動野・脊髄に直接投射しているのに対して、前補足運動野からは電気刺激による運動の誘発のしにくさから予想されるように、一次運動野・脊髄への投射はない(Matsuzaka et al 1992; Luppino et al 1993)。 |
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