「微小透析法」の版間の差分
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DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年2月1日 原稿完成日:2016年月日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br> | ||
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==微小透析法とは== | ==微小透析法とは== | ||
[[脳]] | [[脳]]を含む臓器の局所の細胞外液中の物質の濃度を測定するための方法。[[ノルアドレナリン]]、[[セロトニン]]、[[ドーパミン]]、[[ヒスタミン]]、[[アセチルコリン]]、[[GABA]]、[[アミノ酸]]([[グリシン]]、[[グルタミン酸]]を含む)、各種[[神経ペプチド]]、[[cAMP]]、[[cGMP]]、[[サイトカイン]]、[[活性酸素]]、[[NO2-|NO<sup>2-</sup>]]/[[NO3-|NO<sup>3-</sup>]]、などの[[神経伝達物]]、[[神経修飾物質]]、或は、外来性薬物の濃度を測定することに用いられる。時間分解能は、分単位(1分から30分程度)である場合が多く、[[活動電位]]の電気生理学的方法による解析に比べ良くない。しかし、物質の同定が可能であり、長時間にわたる測定を意識下[[動物]]において行うことが可能である。 | ||
== 方法 == | == 方法 == | ||
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[[ファイル:Microdialysis probe.jpg|サムネイル|200px|'''図. | [[ファイル:Microdialysis probe.jpg|サムネイル|200px|'''図. 微小環流法に使われるプローブの一例'''<br>Wikipediaより。]] | ||
測定する物質が透過できる膜でできた管(プローブ, probe, '''図''')を、脳あるいは臓器(血管内を含む)の局所に刺入させ、プローブの中に人工細胞外液(脳だと[[人工脳脊髄液]])を潅流させる。 | |||
プローブの周辺の細胞外液中に、プローブの膜を透過できる物質が潅流液に比べ高い濃度で存在すれば、拡散の原理(principle of diffusion)に従い、その物質はプローブの膜を透過し潅流液中に入る。プローブに膜があることで潅流による組織への損傷や刺激を少なくすることができる。潅流させる流速をゼロにし長時間置くことで、分解と生成がなければ原理的には潅流液中の濃度は細胞外液中の濃度と等しくなるはずである。潅流液を収集し、潅流液に含まれる物質の濃度を測定することで、刺入部位の局所の細胞外液中に含まれる物質の濃度の指標とする。一定時間間隔で連続して潅流液を採取し、潅流液中の物質の濃度を測定することで、プローブ周辺の細胞外液中の物質の濃度の時間経過を推測することができる。 | プローブの周辺の細胞外液中に、プローブの膜を透過できる物質が潅流液に比べ高い濃度で存在すれば、拡散の原理(principle of diffusion)に従い、その物質はプローブの膜を透過し潅流液中に入る。プローブに膜があることで潅流による組織への損傷や刺激を少なくすることができる。潅流させる流速をゼロにし長時間置くことで、分解と生成がなければ原理的には潅流液中の濃度は細胞外液中の濃度と等しくなるはずである。潅流液を収集し、潅流液に含まれる物質の濃度を測定することで、刺入部位の局所の細胞外液中に含まれる物質の濃度の指標とする。一定時間間隔で連続して潅流液を採取し、潅流液中の物質の濃度を測定することで、プローブ周辺の細胞外液中の物質の濃度の時間経過を推測することができる。 | ||
採集する物質の回収率は、膜と標的とする物質の化学的特徴、濃度、そして潅流流速に依存する。潅流速度を遅くすれば理論的には回収率は上昇する。潅流液をポンプを用いて一定流速で押し出す、或は、潅流液の押し出しと共にプローブの出口に陰圧負荷をかけ引きとを組み合わせる(push-pull法)ことで、潅流液を一定時間間隔で回収する。分子量が1000程度までの低分子量の物質の採取には、押し出しのみを用いることが多い。高分子量の物質を収集する場合には、高分子量の物質が透過できるよう透過性の高い膜を用いる必要があり、潅流液が膜を通して生体側に漏れ出すことを防ぐ目的で、陰圧を懸けるpush-pull法を用いる必要がある。 | |||
=== 検出 === | === 検出 === | ||
測定には、[[電気化学検出器]] | 測定には、[[電気化学検出器]]付き [[高速液体クロマトグラフィー]] (HPLC)、[[ラジオイッムノアッセイ]]、[[エンザイイムノアッセイ]]、[[質量分析]]器などを用いる。時間経過を観察する場合の時間分解能は、目的とする物質の測定感度に依存する。高感度で測定できるほど時間分解能がよくなる。 | ||
== 応用 == | == 応用 == | ||
潅流液中にプローブの膜を透過できる物質を入れることで、脳内局所にその物質を投与することで局所の刺激あるいは抑制を行うこともできる。この方法はreverse microdialysisと呼ばれる。この方法により薬物の局所投与による細胞外液中の神経伝達物質・修飾物質の局所濃度の変化を観察できる。 | 潅流液中にプローブの膜を透過できる物質を入れることで、脳内局所にその物質を投与することで局所の刺激あるいは抑制を行うこともできる。この方法はreverse microdialysisと呼ばれる。この方法により薬物の局所投与による細胞外液中の神経伝達物質・修飾物質の局所濃度の変化を観察できる。 | ||
様々な解析と組み合わせて用いることも可能である。例えば、[[電気生理学]] | 様々な解析と組み合わせて用いることも可能である。例えば、[[電気生理学]]的、[[光遺伝学]]的あるいは[[DREADD]]([[Designer receptors exclusively activated by Designer Drugs]])による活動修飾(刺激あるいは抑制)と組み合わせても用いられる。さらに、行動を含む生体反応の解析と並行して用い、特定の生体反応と因果関係のある物質を特定することに用いられたりする。 | ||
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2016年2月3日 (水) 10:59時点における版
英語名:microdialysis 独:Mikrodialyse 仏:microdialyse
同義語:マイクロダイアリシス
微小透析法とは
脳を含む臓器の局所の細胞外液中の物質の濃度を測定するための方法。ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミン、ヒスタミン、アセチルコリン、GABA、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸を含む)、各種神経ペプチド、cAMP、cGMP、サイトカイン、活性酸素、NO2-/NO3-、などの神経伝達物、神経修飾物質、或は、外来性薬物の濃度を測定することに用いられる。時間分解能は、分単位(1分から30分程度)である場合が多く、活動電位の電気生理学的方法による解析に比べ良くない。しかし、物質の同定が可能であり、長時間にわたる測定を意識下動物において行うことが可能である。
方法
環流
測定する物質が透過できる膜でできた管(プローブ, probe, 図)を、脳あるいは臓器(血管内を含む)の局所に刺入させ、プローブの中に人工細胞外液(脳だと人工脳脊髄液)を潅流させる。
プローブの周辺の細胞外液中に、プローブの膜を透過できる物質が潅流液に比べ高い濃度で存在すれば、拡散の原理(principle of diffusion)に従い、その物質はプローブの膜を透過し潅流液中に入る。プローブに膜があることで潅流による組織への損傷や刺激を少なくすることができる。潅流させる流速をゼロにし長時間置くことで、分解と生成がなければ原理的には潅流液中の濃度は細胞外液中の濃度と等しくなるはずである。潅流液を収集し、潅流液に含まれる物質の濃度を測定することで、刺入部位の局所の細胞外液中に含まれる物質の濃度の指標とする。一定時間間隔で連続して潅流液を採取し、潅流液中の物質の濃度を測定することで、プローブ周辺の細胞外液中の物質の濃度の時間経過を推測することができる。
採集する物質の回収率は、膜と標的とする物質の化学的特徴、濃度、そして潅流流速に依存する。潅流速度を遅くすれば理論的には回収率は上昇する。潅流液をポンプを用いて一定流速で押し出す、或は、潅流液の押し出しと共にプローブの出口に陰圧負荷をかけ引きとを組み合わせる(push-pull法)ことで、潅流液を一定時間間隔で回収する。分子量が1000程度までの低分子量の物質の採取には、押し出しのみを用いることが多い。高分子量の物質を収集する場合には、高分子量の物質が透過できるよう透過性の高い膜を用いる必要があり、潅流液が膜を通して生体側に漏れ出すことを防ぐ目的で、陰圧を懸けるpush-pull法を用いる必要がある。
検出
測定には、電気化学検出器付き 高速液体クロマトグラフィー (HPLC)、ラジオイッムノアッセイ、エンザイイムノアッセイ、質量分析器などを用いる。時間経過を観察する場合の時間分解能は、目的とする物質の測定感度に依存する。高感度で測定できるほど時間分解能がよくなる。
応用
潅流液中にプローブの膜を透過できる物質を入れることで、脳内局所にその物質を投与することで局所の刺激あるいは抑制を行うこともできる。この方法はreverse microdialysisと呼ばれる。この方法により薬物の局所投与による細胞外液中の神経伝達物質・修飾物質の局所濃度の変化を観察できる。
様々な解析と組み合わせて用いることも可能である。例えば、電気生理学的、光遺伝学的あるいはDREADD(Designer receptors exclusively activated by Designer Drugs)による活動修飾(刺激あるいは抑制)と組み合わせても用いられる。さらに、行動を含む生体反応の解析と並行して用い、特定の生体反応と因果関係のある物質を特定することに用いられたりする。
関連項目
参考文献
編集部コメント:文献をお願いいたします。