「多系統萎縮症」の版間の差分

(ページの作成:「<div align="right"> <font size="+1">[http://researchmap.jp/read0113019 西澤 正豊]</font><br> ''新潟大学 脳研究所 ''<br> DOI:<selfdoi /> 原稿受付日...」)
 
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{{box|text= 多系統萎縮症とは、小脳系、大脳基底核系、自律神経系の3系統を中心とし、錐体路にも及ぶ多系統が変性する神経変性疾患である。小脳系の系統変性を主体とする病型は、オリーブ橋小脳萎縮症、大脳基底核系では線条体黒質変性症、自律神経系ではShy-Drager症候群と呼ばれてきた。病理学的にはオリゴデンドログリアや神経細胞の細胞質内に特徴的な封入体が観察され、その主な構成成分はリン酸化されたα-シヌクレインである。}}
{{box|text= 多系統萎縮症とは、小脳系、大脳基底核系、自律神経系の3系統を中心とし、錐体路にも及ぶ多系統が変性する神経変性疾患である。小脳系の系統変性を主体とする病型は、オリーブ橋小脳萎縮症、大脳基底核系では線条体黒質変性症、自律神経系ではShy-Drager症候群と呼ばれてきた。病理学的にはオリゴデンドログリアや神経細胞の細胞質内に特徴的な封入体が観察され、その主な構成成分はリン酸化されたα-シヌクレインである。}}
==概念==
==概念==
 [[多系統萎縮症]]とは、[[小脳]]系、大脳基底核系、自律神経系の3系統を中心とし、錐体路にも及ぶ多系統が変性する神経変性疾患である。これまで[[脊髄小脳変性症]]と総称されてきた疾患の一型である。小脳系の系統変性を主体とする病型は、従来、[[オリーブ橋小脳萎縮症]](olivopontoserebellar atrophy:OPCA)、大脳基底核系では[[線条体黒質変性症]](striatonigral degeneration:SND)、自律神経系では[[Shy-Drager症候群]](Shy-Drager syndrome:SDS)と呼ばれてきた。
 [[多系統萎縮症]]とは、[[小脳]]系、[[大脳基底核]]系、[[自律神経系]]の3系統を中心とし、[[錐体路]]にも及ぶ多系統が変性する[[神経変性疾患]]である。従来、[[脊髄小脳変性症]]と総称されてきた疾患の一型で、特に小脳系の系統変性を主体とする病型は、[[オリーブ橋小脳萎縮症]](olivopontoserebellar atrophy:OPCA)、大脳基底核系を主体とする病型は、[[線条体黒質変性症]](striatonigral degeneration:SND)、自律神経系を主体とする病型は、[[Shy-Drager症候群]](Shy-Drager syndrome:SDS)とも呼ばれてきた。


 オリーブ橋小脳萎縮症はDejerineとAndré-Thomasによる1900年の報告に始まるが、オリーブ小脳系を超えた病変も認められていた。1964年にAdamsが提唱した線条体黒質変性症においても、黒質線条体だけでなく、オリーブ小脳系の変性を伴うと記載されていた。Shy-Drager症候群はShyとDragerにより1960年に報告されたが、1967年のSchwarzによる4剖検例では、自律神経系を超えた変性が認められていた。こうした経緯から、GrahamとOppenheimerは1969年、病変分布の共通性から、オリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症、Shy-Drager症候群を包括する多系統委縮症という名称を提案した。高橋によるShy-Drager症候群のわが国初の詳細な剖検報告(1969年)でも、Shy-Drager症候群とオリーブ橋小脳萎縮症病変の共通性が指摘されている。
 オリーブ橋小脳萎縮症はDejerineとAndré-Thomasによる1900年の報告に始まるが<ref>'''J. J. Dejerine, A. Thomas'''<br>L'átrophie olivo-ponto-cérébelleuse.<br>In: ''Nouvelle iconographie de la Salpêtrière''. 1900, 13, S. 330.</ref>、オリーブ小脳系を超えた病変も認められていた。1964年にAdamsが提唱した線条体黒質変性症においても、黒質線条体だけでなく、オリーブ小脳系の変性を伴うと記載されていた<ref><pubmed> 14219099</pubmed></ref>。Shy-Drager症候群はShyとDragerにより1960年に報告されたが<ref><pubmed> 14446364 </pubmed></ref>、1967年のSchwarzによる4剖検例では、自律神経系を超えた変性が認められていた<ref><pubmed> 6018044 </pubmed></ref>。こうした経緯から、GrahamとOppenheimerは1969年、病変分布の共通性から、オリーブ橋小脳萎縮症、線条体黒質変性症、Shy-Drager症候群を包括する多系統委縮症という名称を提案した<ref><pubmed>5774131</pubmed></ref>。高橋によるShy-Drager症候群のわが国初の詳細な剖検報告(1969年)<ref>'''高橋昭, 高城晋, 山本耕平ほか'''<br>Shy-Drager症候群. オリーブ橋小脳萎縮症との関連<br>''臨床神経学'' 9: 121-129, 1969</ref>でも、Shy-Drager症候群とオリーブ橋小脳萎縮症病変の共通性が指摘されている。


==症候==
==症候==