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時間分解能は、分単位(1分から30分程度)である場合が多く、モノアミンの測定や酵素被覆電極を使用してグルタミン酸、GABAの測定を行う生体内ボルタンメトリ-法、あるいは、ニューロンの活動電位[[活動電位]]の電気生理学的方法による解析に比べ良くない。また、空間分解能は、標的物質の収集するためのプローブの大きさ(通常、直径0.2 mm x 長さ0.5 mm以上)により制限を受ける。しかし、物質の同定が可能であり、長時間にわたる測定を意識下[[動物]]において行うことが可能である。その時間分解能と空間分解能から、脳における拡散性の信号伝達(volume transmission)を担う物質、外来性薬物の解析に適している。 | |||
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2016年2月17日 (水) 09:24時点における版
英語名:microdialysis 独:Mikrodialyse 仏:microdialyse
同義語:マイクロダイアリシス
微小透析法とは
脳を含む臓器の局所の細胞外液中の物質を透析膜を介して回収し、濃度などを測定するための方法。半透膜を介して比較的低分子の物質を脳組織から回収したという報告は1966年に遡る[1]。1972年には半透膜で囲まれた袋の中に潅流液を流し細胞外液中の物質を回収したという報告がなされている[2]。組織の損傷を少なく半透膜を介して、脳の局所あるいは様々な末梢臓器から細胞外液中の標的物質を継時的に回収する方法としてUngerstedt Uらにより確立されたのは1970年代後半から1980年代である[3]。微小透析法は、生体組織の局所の細胞外液中の物質を回収するのに今日広く用いられている[4] [5] [6]。
ノルアドレナリン、セロトニン、ドーパミン、ヒスタミン、アセチルコリン、GABA、アミノ酸(グリシン、グルタミン酸を含む)、各種神経ペプチド、cAMP、cGMP、サイトカイン、活性酸素、NO2-/NO3-、などの神経伝達物、神経修飾物質、生体の様々な低分子物質(グルコース、乳酸、ピルビン酸、グリセロール、尿素など)、タンパク質、或は、外来性薬物の濃度を測定することに用いられる[5] [6]。近年、amyloid-β、tau、α-synucleinといった病態に関連する因子も微小透析法で収集され、解析されている[5]。
時間分解能は、分単位(1分から30分程度)である場合が多く、モノアミンの測定や酵素被覆電極を使用してグルタミン酸、GABAの測定を行う生体内ボルタンメトリ-法、あるいは、ニューロンの活動電位活動電位の電気生理学的方法による解析に比べ良くない。また、空間分解能は、標的物質の収集するためのプローブの大きさ(通常、直径0.2 mm x 長さ0.5 mm以上)により制限を受ける。しかし、物質の同定が可能であり、長時間にわたる測定を意識下動物において行うことが可能である。その時間分解能と空間分解能から、脳における拡散性の信号伝達(volume transmission)を担う物質、外来性薬物の解析に適している。
方法
灌流
目的とする物質が透過できる膜でできた管(プローブ, probe, 図)を、脳あるいは臓器(血管内を含む)の局所に刺入させ、プローブの中に人工細胞外液(脳だと人工脳脊髄液)を一定流速で(例えば2 μl/min)潅流させ、プローブの出口から潅流液を一定時間間隔で収集することで、標的とする物質を回収する。
プローブの周辺の細胞外液中に、プローブの膜を透過できる物質が潅流液に比べ高い濃度で存在すれば、拡散の原理(principle of diffusion)に従い、その物質はプローブの膜を透過し潅流液中に入る。プローブに膜があることで潅流による組織への損傷や刺激を少なくすることができる。潅流させる流速をゼロにし長時間置くことで、分解と生成がなければ原理的には潅流液中の濃度は細胞外液中の濃度と等しくなるはずである。潅流液を収集し、潅流液に含まれる物質の濃度を測定することで、刺入部位の局所の細胞外液中に含まれる物質の濃度の指標とする。一定時間間隔で連続して潅流液を採取し、潅流液中の物質の濃度を測定することで、プローブ周辺の細胞外液中の物質の濃度の時間経過を推測することができる。
採集する物質の回収率は、膜と標的とする物質の化学的特徴、濃度、そして潅流流速に依存する。潅流速度を遅くすれば理論的には回収率は上昇する。潅流液をポンプを用いて一定流速で押し出す、或は、潅流液の押し出しと共にプローブの出口に陰圧負荷をかける出口からの引きとを組み合わせる(push-pull法)ことで、潅流液を一定時間間隔で回収する。分子量が1000程度までの低分子量の物質の採取には、潅流流速が遅く、プローブの出口側の抵抗が充分小さく(プローブからサンプル採取までの間の管の径が太くて短く)プローブ内の圧力によるプローブ膜から生体側への潅流液の漏れが問題とならない場合、押し出しのみを用いることが多い。高分子量の物質を収集する場合には、高分子量の物質が透過できるよう透過性の高い膜(例えば、ポアサイズが1,000kDa)を用いる必要があり、潅流液が膜を通して生体側に漏れ出すことを防ぐ目的で、プローブ内側の圧が細胞外より高くなることを避けるために陰圧をかけるpush-pull法を用いる必要がある。
また、外傷などで脳圧が亢進しプローブ膜の外側(組織側)の圧が膜の内側よりも高く、膜のポサイズが大きい(例えば、100kDa以上)と、細胞外液がプローブ内に流入する可能性が出てくる。また、高分子の回収効率を上げるため潅流液にalbumin、あるいは3% w/v Dextran 500kDaを加えることがある[6]が、この場合、潅流液の膠質浸透圧のために組織からプローブ内に細胞外液が流入する可能性が出てくる。いずれにしても、プローブ内に流した量と等しい容量の潅流液が回収できているか確認する必要がある。
検出
測定には、電気化学検出器(蛍光分光検出器、紫外可視分光検出器、質量分析検出器)付き 高速液体クロマトグラフィー (HPLC)、ラジオイッムノアッセイ、エンザイイムノアッセイなどを用いる。時間経過を観察する場合の時間分解能は、目的とする物質の測定感度に依存する。高感度で測定できるほど時間分解能がよくなる。
応用
潅流液中にプローブの膜を透過できる物質を入れることで、脳内局所にその物質を投与することで局所の刺激あるいは抑制を行うこともできる。この方法はreverse microdialysisと呼ばれる。この方法により薬物の局所投与による細胞外液中の神経伝達物質・修飾物質の局所濃度の変化を観察できる。
様々な解析と組み合わせて用いることも可能である。例えば、電気生理学的記録[7]、光遺伝学的あるいはDREADD(Designer receptors exclusively activated by Designer Drugs)による活動修飾(刺激あるいは抑制)と組み合わせても用いられる。さらに、行動を含む生体反応の解析と並行して用い、特定の生体反応と因果関係のある物質を特定することに用いられたりする。
ヒトにおいて、脳外傷あるいは、くも膜下出血時の二次脳損傷を防止する目的で代謝関連物質(グルコース、ピルビン酸、乳酸)を測定することがある[8] [9]。
関連項目
参考文献
- ↑
Bito, L., Davson, H., Levin, E., Murray, M., & Snider, N. (1966).
The concentrations of free amino acids and other electrolytes in cerebrospinal fluid, in vivo dialysate of brain, and blood plasma of the dog. Journal of neurochemistry, 13(11), 1057-67. [PubMed:5924657] [WorldCat] [DOI] - ↑
Delgado, J.M., DeFeudis, F.V., Roth, R.H., Ryugo, D.K., & Mitruka, B.M. (1972).
Dialytrode for long term intracerebral perfusion in awake monkeys. Archives internationales de pharmacodynamie et de therapie, 198(1), 9-21. [PubMed:4626478] [WorldCat] - ↑
Ungerstedt, U. (1991).
Microdialysis--principles and applications for studies in animals and man. Journal of internal medicine, 230(4), 365-73. [PubMed:1919432] [WorldCat] [DOI] - ↑
Chefer, V.I., Thompson, A.C., Zapata, A., & Shippenberg, T.S. (2009).
Overview of brain microdialysis. Current protocols in neuroscience, Chapter 7, Unit7.1. [PubMed:19340812] [PMC] [WorldCat] [DOI] - ↑ 5.0 5.1 5.2
Kennedy, R.T. (2013).
Emerging trends in in vivo neurochemical monitoring by microdialysis. Current opinion in chemical biology, 17(5), 860-7. [PubMed:23856056] [PMC] [WorldCat] [DOI] - ↑ 6.0 6.1 6.2
Anderzhanova, E., & Wotjak, C.T. (2013).
Brain microdialysis and its applications in experimental neurochemistry. Cell and tissue research, 354(1), 27-39. [PubMed:24022232] [WorldCat] [DOI] - ↑
Ludwig, M., & Leng, G. (1997).
Autoinhibition of supraoptic nucleus vasopressin neurons in vivo: a combined retrodialysis/electrophysiological study in rats. The European journal of neuroscience, 9(12), 2532-40. [PubMed:9517458] [WorldCat] [DOI] - ↑
Hillered, L., Dahlin, A.P., Clausen, F., Chu, J., Bergquist, J., Hjort, K., ..., & Lewén, A. (2014).
Cerebral microdialysis for protein biomarker monitoring in the neurointensive care setting - a technical approach. Frontiers in neurology, 5, 245. [PubMed:25520696] [PMC] [WorldCat] [DOI] - ↑
Hutchinson, P.J., Jalloh, I., Helmy, A., Carpenter, K.L., Rostami, E., Bellander, B.M., ..., & Ungerstedt, U. (2015).
Consensus statement from the 2014 International Microdialysis Forum. Intensive care medicine, 41(9), 1517-28. [PubMed:26194024] [PMC] [WorldCat] [DOI]