「ソニック・ヘッジホッグ」の版間の差分

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===神経系での機能===
===神経系での機能===
 ソニック・ヘッジホッグと神経系について最も研究が進んでいるのは神経分化における役割である。1991年、[[w:Thomas Jessell|Thomas M. Jessell]]と山田俊哉は、[[脊策]]([[notochord]])を神経管の別の場所に移植し、移植した周辺領域の細胞が[[底板]]([[floor plate]])や[[運動神経]]([[motor neuron]])に異所的に分化することを発見し、脊策と底板から分化誘導因子が分泌されていることを示した<ref><pubmed>1991324</pubmed></ref><ref><pubmed>8500163</pubmed></ref>。
 ソニック・ヘッジホッグの神経系における機能解析の歴史は1990年代にさかのぼる。


 その後、この分泌因子がソニック・ヘッジホッグであること<ref><pubmed>8124714</pubmed></ref> 、さらにソニック・ヘッジホッグが[[神経管]]内で濃度勾配を形成することが明らかとなった<ref><pubmed>7736596</pubmed></ref><ref><pubmed>20066087</pubmed></ref>。ソニック・ヘッジホッグは中枢神経系の中でも底板やその下部に存在する[[中胚葉]]系の組織(脊索)の細胞で発現し、発現細胞の周辺で濃度勾配を形成、[[モルフォゲン]]とし働いて濃度依存的に運動神経や[[介在神経]]の前駆細胞を誘導する(詳細は別項で議論する)。
 1991年、[[w:Thomas Jessell|Thomas M. Jessell]]と山田俊哉は、ニワトリ胚の脊策を神経管の別の場所に移植し、移植した周辺領域の細胞が[[底板]]([[floor plate]])や[[運動神経]]([[motor neuron]])に異所的に分化することを発見し、脊策と底板から分化誘導因子が分泌されていることを示した<ref><pubmed>1991324</pubmed></ref><ref><pubmed>8500163</pubmed></ref>


 また生後の脳において、神経前駆細胞の存在が知られており、ソニック・ヘッジホッグシグナルが微小環境(ニッチ:niche)において活性化されて前駆細胞の幹細胞性を維持している<ref><pubmed>16208373</pubmed></ref><ref><pubmed>27666792</pubmed></ref>。
 その後、この分泌因子がソニック・ヘッジホッグであること<ref><pubmed>8124714</pubmed></ref> 、さらにソニック・ヘッジホッグが[[神経管]]内で濃度勾配を形成して<ref><pubmed>7736596</pubmed></ref><ref><pubmed>20066087</pubmed></ref><ref name=ref5 />、[[モルフォゲン]]とし働いて濃度依存的に運動神経や[[介在神経]]の前駆細胞を誘導する(詳細は別項で議論する)。
 
 詳細な発現・機能解析の結果、Shhは神経発生の初期には前脳の領域化に<ref><pubmed>883777</pubmed></ref><ref><pubmed>17030124</pubmed></ref>を加えてください)、その後中枢神経全体のパターン形成に関与することが明らかとなった。さらに胚発生が進み、出生前後になると、小脳のプルキンエ細胞(Purkinje cells)からShhが分泌され、顆粒細胞の前駆細胞に作用してその増殖を促進し、さらにバーグマングリア細胞への分化を誘導することが知られている<ref><pubmed>10226030</pubmed></ref><ref><pubmed>15183722</pubmed></ref><ref><pubmed>10375501</pubmed></ref>。
 
 また生後の脳においても神経前駆細胞の存在が知られており、ソニック・ヘッジホッグシグナルが微小環境(ニッチ:niche)において活性化されて前駆細胞の幹細胞性を維持している<ref><pubmed>16208373</pubmed></ref><ref><pubmed>27666792</pubmed></ref>。


==実験手法 ==
==実験手法 ==