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[[Image:Takeshiimai_Fig_2.jpg|thumb|right|340px|<b>図2. 嗅球の双方向性シナプス</b><br />[[嗅球]]では、僧帽細胞・房飾細胞の側方樹状突起と顆粒細胞の間で樹状突起間双方向性シナプスが形成される。また、僧帽細胞・房飾細胞の主樹状突起と傍糸球体細胞の間にも樹状突起間双方向性シナプスが形成される。赤色の矢印は[[興奮性シナプス]]、青色の矢印は[[抑制性シナプス]]を示す。]] | [[Image:Takeshiimai_Fig_2.jpg|thumb|right|340px|<b>図2. 嗅球の双方向性シナプス</b><br />[[嗅球]]では、僧帽細胞・房飾細胞の側方樹状突起と顆粒細胞の間で樹状突起間双方向性シナプスが形成される。また、僧帽細胞・房飾細胞の主樹状突起と傍糸球体細胞の間にも樹状突起間双方向性シナプスが形成される。赤色の矢印は[[興奮性シナプス]]、青色の矢印は[[抑制性シナプス]]を示す。]] |
2017年6月12日 (月) 17:41時点における版
岩田 遼、今井 猛
独立行政法人理化学研究所 発生・再生科学総合研究センター 感覚神経回路形成研究チーム
DOI:10.14931/bsd.7457 原稿受付日:2017年5月13日 原稿完成日:2015年2月27日
担当編集委員:河西 春郎(東京大学 大学院医学系研究科)
英:reciprocal synapse 独:reziproke Synapse 仏:synapse réciproque
同義語:相反性シナプス
シナプスは、神経情報を出力する側と入力される側の2つの神経細胞の間に形成されるが、この2つの神経細胞が同時に逆方向のシナプスを持つ場合、これを双方向性シナプスまたは相反性シナプスという。双方向性シナプスは2本の樹状突起の間、または樹状突起と軸索の間に形成されるものが知られている。嗅球や網膜では、双方向性シナプスは側方抑制などの機能を担い、感覚刺激に対する応答特異性を調節する。
双方向性シナプスとは
シナプスは、神経情報を出力する側と入力される側の2つの神経細胞の間に形成されるが、この2つの神経細胞が同時に逆方向のシナプスを持つ場合、これを双方向性シナプスまたは相反性シナプスという(図1)。2本の樹状突起の間、または樹状突起と軸索の間に形成されるものが知られている。1960年代に嗅球と網膜で独立に発見された[1]。
嗅球
構造
嗅球の僧帽細胞(mitral cell)・房飾細胞(tufted cell)は、単一の主樹状突起(primary dendrite)により糸球体から興奮性入力を受け入れる(嗅球を参照)。
その一方、複数の側方樹状突起(lateral dendrite)は外網状層に広く伸びて、顆粒細胞(granule cell)の樹状突起スパインとの間で樹状突起間シナプスを作る(図2)。この樹状突起間シナプスの多くは双方向性であり、樹状突起間双方向性シナプス(dendrodendritic reciprocal synapse)と呼ばれる。僧帽細胞・房飾細胞から顆粒細胞へのシナプスはグルタミン酸性の興奮性シナプスであり、その逆方向のシナプスはGABA性の抑制性シナプスである。
嗅球では、傍糸球体細胞(periglomerular cell)も、僧帽細胞・房飾細胞の主樹状突起との間に樹状突起間双方向性シナプスをつくる(図2)。
傍糸球体細胞は嗅神経細胞(olfactory sensory neuron)から興奮性入力を受け入れるとともに、嗅神経細胞に対してシナプス前抑制を行う[2]。しかし、電子顕微鏡観察では傍糸球体細胞樹状突起から嗅神経細胞シナプス前終末へと入力するシナプス構造が認められないため[3]、volume transmissionなどシナプス伝達以外の可能性も含めて、シナプス前抑制の伝達機構は不明である。そのため、他の例の様に単一シナプスレベルで双方向性シナプスが形成されているわけではない。
匂い情報処理における機能
僧帽細胞・房飾細胞が反応する匂い分子の種類(分子受容範囲)は、嗅覚受容体のリガンド結合特性を引き継ぎつつ(嗅球を参照)、顆粒細胞を介した側方抑制により修飾される。
僧帽細胞・房飾細胞からの入力によって興奮した顆粒細胞は、入力元のみならず、接続している他の僧帽細胞・房飾細胞に対しても抑制性の出力を行う(図3)。この側方抑制により、同じ匂いに反応する僧帽細胞・房飾細胞の間でコントラストが強まり、応答特異性が向上する(分子受容範囲が狭まる)[4][5]。
しかしながら、この側方抑制は網膜のように必ずしも近傍の細胞間で起きるわけではなく、どのような接続特異性があるのかよく分かっていない[6]。このため、その主要な機能については、応答特異性のチューニングであるという説に対して、むしろ非選択的な側方抑制に基づくゲインコントロールであるという可能性も指摘されている[7]。
この他、顆粒細胞の樹状突起間双方向性シナプスでは、ガンマ波長帯(30-100 Hz)の神経振動が発生し[5]、僧帽細胞・房飾細胞の同期活動や嗅皮質への情報の転送に重要であると考えられている。
なお、嗅球における側方抑制では、糸球体層の短軸索細胞(short axon cell)が異なる糸球体同士を接続する[8]。この側方抑制は近傍の糸球体のうち一部の糸球体に対してのみ選択的に出力すると推定されるが[9]、その機能については未だ不明な点が多く、今後の解明が待たれる。
網膜
網膜では、外網状層において視細胞(photoreceptor cell)と水平細胞(horizontal cell)の間で双方向性シナプスが形成される(図2)。また、内網状層においても双極細胞(bipolar cell)とアマクリン細胞(amacrine cell)の間で双方向性シナプスが形成される。
網膜における双方向性シナプスは、中心周辺拮抗型受容野の形成に寄与する[10]。たとえば水平細胞は、樹状突起を側方に伸ばして多くの視細胞と接続し、双方向性シナプスをつくる(図3)。視細胞は水平細胞に興奮性の出力を行い、逆に水平細胞は視細胞のシナプス前終末に対して抑制性の出力を行う。抑制を受けたシナプス前終末では、視細胞から双極細胞へのグルタミン酸の放出が減少する。水平細胞を介した側方抑制によって、強い光を受容した視細胞と、その周りで弱い光を受容した視細胞の間のコントラストが強化される。こうした中心周辺拮抗型の側方抑制は、網膜において物体の輪郭を検出しやすくしていると考えられる。アマクリン細胞の双方向性シナプスもこうした機能に寄与すると考えられる。
その他の脳領域
視床の外側膝状体[11](図1)、脊髄後角の膠様質[12]、また視交叉上核[13]で樹状突起間双方向性シナプスが見つかっているが、その機能はほとんど知られていない。
関連項目
参考文献
- ↑
Shepherd, G.M. (2009).
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McGann, J.P. (2013).
Presynaptic inhibition of olfactory sensory neurons: new mechanisms and potential functions. Chemical senses, 38(6), 459-74. [PubMed:23761680] [PMC] [WorldCat] [DOI] - ↑ Gordon M Shepherd, Wei R Chen, Charles A Greer
Chapter 5: Olfactory Bulb.
In: The synaptic organization of the brain 5th ed.(Shepherd GM ed). Oxford University Press, 2004 - ↑
Yokoi, M., Mori, K., & Nakanishi, S. (1995).
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Mori, K., Nagao, H., & Yoshihara, Y. (1999).
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Murthy, V.N. (2011).
Olfactory maps in the brain. Annual review of neuroscience, 34, 233-58. [PubMed:21692659] [WorldCat] [DOI] - ↑ 7.0 7.1 Liqun Luo
Chapter 6: Olfaction, taste, audition, and somatosensation.
In: Principles of neurobiology. Garland Science, 2015 - ↑
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Chapter 6: Retina.
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