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<font size="+1">[http://researchmap.jp/7000009419 下條 博美]、[http://researchmap.jp/ryoichirokageyama 影山 龍一郎]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/7000009419 下條 博美]、[http://researchmap.jp/ryoichirokageyama 影山 龍一郎]</font><br> | ||
''京都大学''<br> | ''京都大学''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年5月6日 原稿完成日:2018年1月10日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/fujiomurakami 村上 富士夫](大阪大学 大学院生命機能研究科)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/fujiomurakami 村上 富士夫](大阪大学 大学院生命機能研究科)<br> | ||
</div> | </div> | ||
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ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)では1種類のNotchレセプター(Notch)があるのに対し、[[線虫]]([[Caenorhabditis elegans]])では2種類のNotchレセプター([[LIN12]], [[GLP1]])、[[哺乳類]]では4種類のNotchパラログ([[Notch1]]-[[Notch4|4]])が報告されている。 | ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)では1種類のNotchレセプター(Notch)があるのに対し、[[線虫]]([[Caenorhabditis elegans]])では2種類のNotchレセプター([[LIN12]], [[GLP1]])、[[哺乳類]]では4種類のNotchパラログ([[Notch1]]-[[Notch4|4]])が報告されている。 | ||
== 発現 == | |||
発生期神経組織および成体脳において、[[神経幹細胞]]および[[神経前駆細胞]]に発現が認められる。機能タンパク質は細胞膜上に発現する。 | |||
==機能== | ==機能== | ||
[[ファイル:Notch fig3.png|サムネイル|400px|右|'''図3 Notchタンパク質の発現とプロセシング過程'''<br> | |||
'''(A)'''Notchタンパク質は合成後、ゴルジ体や細胞膜上でさまざまな翻訳後修飾やプロセシングを受け、活性化する。<br> | |||
'''(B)'''Notchタンパク質はプロセシングを受けることで活性化する。(a)ゴルジ体ではFurinによるS1サイトの最初の切断を受ける。(b)細胞膜上において、ADAMタンパク質分解酵素によるS2サイトの切断。(c)続いてγセクレターゼによるS3/S4サイトの切断によりNotch細胞内ドメインは活性化され、核内へと運ばれる。<br>]] | |||
===活性化とプロセシング=== | ===活性化とプロセシング=== | ||
Notchレセプターの活性化にはタンパク質分解過程が連続的に起こることが重要である<ref name=ref3 /> <ref name=ref11 />。 | Notchレセプターの活性化にはタンパク質分解過程が連続的に起こることが重要である<ref name=ref3 /> <ref name=ref11 />。 | ||
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===神経発生における役割=== | ===神経発生における役割=== | ||
哺乳動物の神経発生においてNotchシグナルは、[[神経幹細胞]]の維持に重要な機能を果たしている。また発生過程の網膜において[[ミュラーグリア]]への運命決定に寄与するなど、[[グリア細胞]]の運命決定にもNotchが寄与している。 | 哺乳動物の神経発生においてNotchシグナルは、[[神経幹細胞]]の維持に重要な機能を果たしている。また発生過程の網膜において[[ミュラーグリア]]への運命決定に寄与するなど、[[グリア細胞]]の運命決定にもNotchが寄与している。 | ||
さらに中枢神経系において、[[zona limitans intrathalamica]] ([[Zli]])、峡部 (中脳・菱脳境界背側部のくびれた部位; [[Isthmus]])、[[底板]]、[[蓋板]]といった領域の境界を形成する構造の形成にも機能していることが報告されている<ref name=ref2><pubmed>16728479</pubmed></ref> <ref name=ref4><pubmed>15068793</pubmed></ref>。 | さらに中枢神経系において、[[zona limitans intrathalamica]] ([[Zli]])、峡部 (中脳・菱脳境界背側部のくびれた部位; [[Isthmus]])、[[底板]]、[[蓋板]]といった領域の境界を形成する構造の形成にも機能していることが報告されている<ref name=ref2><pubmed>16728479</pubmed></ref> <ref name=ref4><pubmed>15068793</pubmed></ref>。 | ||
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==疾患との関連== | ==疾患との関連== | ||
Notchシグナル伝達は発生過程および成体の幹細胞維持において重要な機能を果たしているため、このシグナル伝達における欠陥は様々な疾患を引き起こすことが知られている。 | Notchシグナル伝達は発生過程および成体の幹細胞維持において重要な機能を果たしているため、このシグナル伝達における欠陥は様々な疾患を引き起こすことが知られている。 | ||
{| class="wikitable" | {| class="wikitable" | ||
|+表. Notchシグナル伝達が関与する疾患 | |+表. Notchシグナル伝達が関与する疾患 | ||
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| '''発生過程における疾患'''<ref name=ref7><pubmed>16025100</pubmed></ref> <ref name=ref8><pubmed>12668592</pubmed></ref> | | colspan="2"|'''発生過程における疾患'''<ref name=ref7><pubmed>16025100</pubmed></ref> <ref name=ref8><pubmed>12668592</pubmed></ref> <ref name=ref27959635 ><pubmed>27959635</pubmed></ref> | ||
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|[[wj:アラジール症候群|アラジール症候群]]||Notch2, Jagged1の機能低下 | |||
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|[[wj:合指症|合指症]]|| | |||
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|[[wj:脊椎肋骨異骨症|脊椎肋骨異骨症]]||Dll3の機能低下 | |||
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|[[wj:大動脈二尖弁|大動脈二尖弁]] (Biscuspid aortic valve):[[wj:大動脈弁膜症|大動脈弁膜症]]||Notch1の機能欠損、機能低下 | |||
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|colspan="2"| '''成体における疾患'''<ref name=ref12><pubmed>16508299</pubmed></ref><ref name=ref27959635 /> | |||
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|[[皮質下梗塞および白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症]] ([[Cerebral autosomal dominant arteriopathy with subcortical infarcts and leukoencephalopathy]], [[CADASIL]])||Notch3の機能異常および機能低下、欠損 | |||
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|[[wj:Hajdu-Cheney症候群|Hajdu-Cheney症候群]](末節骨の骨吸収、進行性骨粗鬆症、頭蓋骨の変形)||Notch2の機能異常、分解異常 | |||
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|[[wj:Adams-Oliver症候群|Adams-Oliver症候群]]|||Notch1, RBPj, Dll4の機能欠損、機能低下 | |||
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|colspan="2"|'''その他'''<ref name=ref14><pubmed>17183313</pubmed></ref> <ref name=ref18><pubmed>17183323</pubmed></ref> <ref name=ref20><pubmed>15959515</pubmed></ref> <ref name=ref21><pubmed>15326347</pubmed></ref> | |||
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|[[wj:T細胞急性リンパ芽球性白血病|T細胞急性リンパ芽球性白血病]]||Notch1の活性型変異、機能異常 | |||
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| | |[[wj:大腸ガン|大腸ガン]]|| | ||
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==参考文献== | ==参考文献== | ||
<references /> | <references /> |