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[[遺伝子欠損マウス]]は生存可能で、繁殖能力も見掛け上正常であるが、末梢組織では幾つかの表現型を呈する。 | [[遺伝子欠損マウス]]は生存可能で、繁殖能力も見掛け上正常であるが、末梢組織では幾つかの表現型を呈する。 | ||
たとえば、[[wikipedia:ja:エンドトキシン|エンドトキシン]] | たとえば、[[wikipedia:ja:エンドトキシン|エンドトキシン]]<ref group="注">エンドトキシ(内毒素):[[wikipedia:ja:グラム陰性菌|グラム陰性菌]]の外膜に存在する耐熱性の毒素。糖脂質と糖鎖からなるリポ多糖で、免疫系などに作用して[[wikipedia:ja:マクロファージ|マクロファージ]]や[[wikipedia:ja:好中球|好中球]]を活性化してサイトカインなどの炎症性因子の放出を促す。</ref>)ショックによる感受性<ref name="ref16"><pubmed> 7760013 </pubmed></ref>や[[wikipedia:ja:低酸素|低酸素]]負荷による換気応答<ref name="ref17"><pubmed> 10517751 </pubmed></ref>が著しく増大している。[[wikipedia:ja:消化管|消化管]]では血管透過性が2〜3倍亢進しているが、これはリコンビナントのネプリライシンやブラジキニンまたはサブスタンスPの[[wikipedia:ja:受容体|受容体]][[wikipedia:ja:アンタゴニスト|アンタゴニスト]]の投与によって回避される<ref name="ref18"><pubmed> 9256283 </pubmed></ref>。 | ||
また、遺伝子欠損マウスでは心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の分解が抑制されるため、血圧が20%程度低下している<ref name="ref18" />。しかし、慢性的低酸素負荷を与えると、野生型マウスに比較して、肺動脈の血管平滑筋細胞が異常増殖するため、肺組織内は[[wikipedia:ja:高血圧|高血圧]]状態になることが示されている<ref name="ref19"><pubmed> 19234135 </pubmed></ref>。サブスタンスP誘発[[wikipedia:ja:アレルギー性接触皮膚炎|アレルギー性接触皮膚炎]]<ref name="ref20"><pubmed> 11145711 </pubmed></ref>やブラジキニン誘発[[痛覚]]過敏<ref name="ref21"><pubmed> 11931342 </pubmed></ref>に対する感受性の亢進も観察されることから、ネプリライシンは末梢組織でブラジキニン、サブスタンスPやANPに作用して炎症反応や血圧の調節に携わると考えられている。 | また、遺伝子欠損マウスでは心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)の分解が抑制されるため、血圧が20%程度低下している<ref name="ref18" />。しかし、慢性的低酸素負荷を与えると、野生型マウスに比較して、肺動脈の血管平滑筋細胞が異常増殖するため、肺組織内は[[wikipedia:ja:高血圧|高血圧]]状態になることが示されている<ref name="ref19"><pubmed> 19234135 </pubmed></ref>。サブスタンスP誘発[[wikipedia:ja:アレルギー性接触皮膚炎|アレルギー性接触皮膚炎]]<ref name="ref20"><pubmed> 11145711 </pubmed></ref>やブラジキニン誘発[[痛覚]]過敏<ref name="ref21"><pubmed> 11931342 </pubmed></ref>に対する感受性の亢進も観察されることから、ネプリライシンは末梢組織でブラジキニン、サブスタンスPやANPに作用して炎症反応や血圧の調節に携わると考えられている。 | ||
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しかし、Aβの分解に関しては補償的分解経路が十分でないために、ネプリライシン活性が低下しただけで脳内Aβ濃度が上昇する。前脳特異的に発現するように遺伝子操作したネプリライシン[[トランスジェニックマウス]]では脳内のニューロペプチドYレベルが顕著に低下することが明らかにされている<ref name="ref23"><pubmed> 19176820 </pubmed></ref>。この研究では、ネプリライシンによって限定分解を受けたニューロペプチドYのカルボキシル末端フラグメント(NPY-CTF: NPY21-36またはNPY 31-36)が神経保護作用をもつことが示されている。しかし、ネプリライシン欠損マウス脳ではNPY-CTF 量は減少しているがNPY量はほとんど変化していないので、ニューロペプチドYの場合にも脳内で分解を補償する系が十分に機能していると考えられる。 | しかし、Aβの分解に関しては補償的分解経路が十分でないために、ネプリライシン活性が低下しただけで脳内Aβ濃度が上昇する。前脳特異的に発現するように遺伝子操作したネプリライシン[[トランスジェニックマウス]]では脳内のニューロペプチドYレベルが顕著に低下することが明らかにされている<ref name="ref23"><pubmed> 19176820 </pubmed></ref>。この研究では、ネプリライシンによって限定分解を受けたニューロペプチドYのカルボキシル末端フラグメント(NPY-CTF: NPY21-36またはNPY 31-36)が神経保護作用をもつことが示されている。しかし、ネプリライシン欠損マウス脳ではNPY-CTF 量は減少しているがNPY量はほとんど変化していないので、ニューロペプチドYの場合にも脳内で分解を補償する系が十分に機能していると考えられる。 | ||
== アルツハイマー病との関係 == | == アルツハイマー病との関係 == |