「プルキンエ細胞」の版間の差分

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(プルキンエ細胞は、小脳皮質における唯一の出力神経細胞であり、小脳核または前庭核の神経細胞にGABAを伝達物質 とする抑制性のシナプスを形成している。プルキンエ細胞特異的)
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プルキンエ細胞は、小脳皮質における唯一の出力神経細胞であり、小脳核または前庭核の神経細胞にGABAを伝達物質とする抑制性のシナプスを形成している。プルキンエ細胞特異的に発現するタンパク質のノックアウトマウス及び、プルキンエ細胞特異的なプロモーターを用いた遺伝子改変マウスを用いた実験等により、プルキンエ細胞へのシナプス入力とその調節が運動制御及び運動学習に重要な寄与をしていることが明らかになっている。
==形態と入出力==
==形態と入出力==
プルキンエ細胞の細胞体は、小脳皮質内の分子層と顆粒細胞層の間に一層に並び、プルキンエ細胞層を形成してい る(図1,2)[[Image:Image0005.tif (RGB).jpg|thumb|right|250px|図1:マウス小脳矢状断面の免疫染色図。マゼンダ:プルキンエ細胞マーカーであるcalbindin、緑:顆粒細胞マーカーであるneuNに対する抗体を用いて染色。]][[Image:Purkinjedevelopmentfig2a1.png|thumb|left|250px|図3:プルキンエ細胞の発生過程。灰色:小脳およびその原基、マゼンダ:プルキンエ細胞及びその前駆細胞、緑:顆粒細胞及びその前駆細胞、青:登上線維。A:胎生13日目のマウス中枢神経系を上後方から見た模式図。B :A内の四角部の拡大図。C: B内の矢印方向から見た平面図。D~F各時期における小脳皮質冠状断面の模式図。]][[Image:Cerebellum circuit figure1.png|thumb|right|250px|図2:小脳神経回路の模式図。]]。プルキンエ細胞の樹状突起はプルキンエ細胞層より脳表側の分子層へ伸び、矢状面上で数回枝分かれし扇状の形態となっている。この樹状突起 の遠位には顆粒細胞由来の平行線維から、近位には下オリーブ核由来の登上線維からグルタミン酸作動性の興奮性シナプスが形成される。1つのプルキンエ細胞 に対して、約200,000本の平行線維がシナプスを形成するが<ref>Gordon M. Shephred<br>The synaptic organization of the brain fifth edition<br>医学書院(東京):2004</ref>、 1本の平行線維が1つのプルキンエ細胞に作るシナプスは1から2個と推定されており、その伝達効率も低い。一方、1つのプルキンエ細胞にシナプス形成をす る登上線維は1本に限られる。登上線維は1つのプルキンエ細胞上に数百個のシナプスを形成し、個々のシナプスでの伝達効率は高い。また、プルキンエ細胞は 分子層にある2種類のGABA作動性の介在神経細胞(星状細胞及び籠状細胞)から抑制性の入力も受けている。星状細胞はプルキンエ細胞の樹状突起にシナプ スを作り、一方、籠状細胞はプルキンエ細胞体を囲むようにシナプスを形成する。プルキンエ細胞の軸索は顆粒細胞層を縦断し、小脳核または前庭神経核に投射 して、抑制性の出力をする。
[[Image:Image0005.tif (RGB).jpg|thumb|right|250px|図1:マウス小脳矢状断面の免疫染色図。マゼンダ:プルキンエ細胞マーカーであるcalbindin、緑:顆粒細胞マーカーであるneuNに対する抗体を用いて染色。]]
[[Image:Spiketrace.jpg|thumb|left|250px|図4、プルキンエ細胞の電気生理学的性質。マウスプルキンエ細胞から記録した単純スパイクA、複雑スパイクB。C:長期抑圧の模式図。]]                                              
 
 
プルキンエ細胞の細胞体は、小脳皮質内の分子層と顆粒細胞層の間に一層に並び、プルキンエ細胞層を形成してい る(図1,2)。プルキンエ細胞の樹状突起はプルキンエ細胞層より脳表側の分子層へ伸び、矢状面上で数回枝分かれし扇状の形態となっている。この樹状突起 の遠位には顆粒細胞由来の平行線維から、近位には下オリーブ核由来の登上線維からグルタミン酸作動性の興奮性シナプスが形成される。1つのプルキンエ細胞 に対して、約200,000本の平行線維がシナプスを形成するが<ref>Gordon M. Shephred<br>The synaptic organization of the brain fifth edition<br>医学書院(東京):2004</ref>、 1本の平行線維が1つのプルキンエ細胞に作るシナプスは1から2個と推定されており、その伝達効率も低い。一方、1つのプルキンエ細胞にシナプス形成をす る登上線維は1本に限られる。登上線維は1つのプルキンエ細胞上に数百個のシナプスを形成し、個々のシナプスでの伝達効率は高い。また、プルキンエ細胞は 分子層にある2種類のGABA作動性の介在神経細胞(星状細胞及び籠状細胞)から抑制性の入力も受けている。星状細胞はプルキンエ細胞の樹状突起にシナプ スを作り、一方、籠状細胞はプルキンエ細胞体を囲むようにシナプスを形成する。プルキンエ細胞の軸索は顆粒細胞層を縦断し、小脳核または前庭神経核に投射 して、抑制性の出力をする。
                                              
==発生==
==発生==
[[Image:Purkinjedevelopmentfig2a1.png|thumb|left|250px|図3:プルキンエ細胞の発生過程。灰色:小脳およびその原基、マゼンダ:プルキンエ細胞及びその前駆細胞、緑:顆粒細胞及びその前駆細胞、青:登上線維。A:胎生13日目のマウス中枢神経系を上後方から見た模式図。B :A内の四角部の拡大図。C: B内の矢印方向から見た平面図。D~F各時期における小脳皮質冠状断面の模式図。]]
[[Image:Cerebellum circuit figure1.png|thumb|right|250px|図2:小脳神経回路の模式図。]]
[[Image:Spiketrace.jpg|thumb|left|250px|図4、プルキンエ細胞の電気生理学的性質。マウスプルキンエ細胞から記録した単純スパイクA、複雑スパイクB。C:長期抑圧の模式図。]]
プルキンエ細胞は小脳皮質内で最も早く分化する神経細胞である。ここでは、マウスにおける発生過程を説明する(図 3)。胎生10日目から、プルキンエ細胞の前駆細胞は菱脳唇近傍の脳室帯で最終分裂し、胎生13日目に表層に向けて移動を開始する。胎生後期には、すべて のプルキンエ細胞が異動を完了し、生後数日間で1層に整列してプルキンエ細胞層を完成する。プルキンエ細胞は、生後5~7日目に樹状突起を伸張し、平行線 維とのシナプスを形成し始め、生後20日でほぼ生体と同様のシナプス構築となる。
プルキンエ細胞は小脳皮質内で最も早く分化する神経細胞である。ここでは、マウスにおける発生過程を説明する(図 3)。胎生10日目から、プルキンエ細胞の前駆細胞は菱脳唇近傍の脳室帯で最終分裂し、胎生13日目に表層に向けて移動を開始する。胎生後期には、すべて のプルキンエ細胞が異動を完了し、生後数日間で1層に整列してプルキンエ細胞層を完成する。プルキンエ細胞は、生後5~7日目に樹状突起を伸張し、平行線 維とのシナプスを形成し始め、生後20日でほぼ生体と同様のシナプス構築となる。
登上線維末端は誕生直前にプルキンエ細胞に到達する。生後5~7 日目では、それぞれの登上線維の先端は個々のプルキンエ細胞の細胞体を網状を囲むようになる。この時期は、1つのプルキンエ細胞に対して約5本の登上線維 末端がシナプスを形成している。しかし、14日までに、1本の登上線維のみがプルキンエ細胞に多数のシナプス形成をした状態となり、他の登上線維のシナプ ス数は減少する。20日後までには、登上線維とプルキンエ細胞間で1対1の投射パターンが完成す る<ref><pubmed>7605067</pubmed></ref>。  
登上線維末端は誕生直前にプルキンエ細胞に到達する。生後5~7 日目では、それぞれの登上線維の先端は個々のプルキンエ細胞の細胞体を網状を囲むようになる。この時期は、1つのプルキンエ細胞に対して約5本の登上線維 末端がシナプスを形成している。しかし、14日までに、1本の登上線維のみがプルキンエ細胞に多数のシナプス形成をした状態となり、他の登上線維のシナプ ス数は減少する。20日後までには、登上線維とプルキンエ細胞間で1対1の投射パターンが完成す る<ref><pubmed>7605067</pubmed></ref>。  
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