「サイクリックAMP応答配列結合タンパク質」の版間の差分

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== 標的遺伝子 ==
== 標的遺伝子 ==
 CREBは進化的に酵母、センチュウ、アメフラシ、ショウジョウバエから脊椎動物まで保存されている転写因子であり、神経細胞において多くの遺伝子の発現を調節している。CREBファミリータンパク質はCRE配列(-TGACGTCA-、またはその半分のTGACG or CGTCA)に結合し、CREをプロモーター領域にもつ遺伝子の転写を活性化させる<ref><pubmed>2885756</pubmed></ref>[18]。特に、CRE配列がTATAボックス近傍にある遺伝子ではCREBを介した刺激依存的な転写誘導が効率的に引き起こされる。
 CREBは進化的に酵母、センチュウ、アメフラシ、ショウジョウバエから脊椎動物まで保存されている転写因子であり、神経細胞において多くの遺伝子の発現を調節している。CREBファミリータンパク質はCRE配列(-TGACGTCA-、またはその半分のTGACG or CGTCA)に結合し、CREをプロモーター領域にもつ遺伝子の転写を活性化させる<ref><pubmed>2885756</pubmed></ref>。特に、CRE配列がTATAボックス近傍にある遺伝子ではCREBを介した刺激依存的な転写誘導が効率的に引き起こされる。


 CREBによって転写が制御される“CREB標的遺伝子”はCREBの発見以来精力的に探索されてきたが、近年の網羅的解析技術の発展によってゲノムワイドに包括的な解析が数多く行われている<ref name=Impey2004/><ref name=Zhang2005/><ref name=Kim2010><pubmed> 20393465 </pubmed></ref>[13, 14, 19]。これらの研究によるとゲノム中には5000以上のCREB結合部位が存在し、多数の遺伝子の発現制御に関わっている可能性が示唆されている。例えば、細胞にcAMP刺激を加えると1000以上の遺伝子でmRNA発現が上昇するが、このうちの約半分の遺伝子においてCREB結合部位が存在する。しかしながら、CREB標的遺伝子は刺激や細胞の種類によって大きく異なる。神経活動依存的に発現量が変動する遺伝子群にはCREB標的遺伝子が特に多く含まれていることが報告されている(表1)。これらのCREB標的遺伝子は古典的な前初期遺伝子を数多く含む。
 CREBによって転写が制御される“CREB標的遺伝子”はCREBの発見以来精力的に探索されてきたが、近年の網羅的解析技術の発展によってゲノムワイドに包括的な解析が数多く行われている<ref name=Impey2004/><ref name=Zhang2005/><ref name=Kim2010><pubmed> 20393465 </pubmed></ref>。これらの研究によるとゲノム中には5000以上のCREB結合部位が存在し、多数の遺伝子の発現制御に関わっている可能性が示唆されている。例えば、細胞にcAMP刺激を加えると1000以上の遺伝子でmRNA発現が上昇するが、このうちの約半分の遺伝子においてCREB結合部位が存在する。しかしながら、CREB標的遺伝子は刺激や細胞の種類によって大きく異なる。神経活動依存的に発現量が変動する遺伝子群にはCREB標的遺伝子が特に多く含まれていることが報告されている('''表1''')。これらのCREB標的遺伝子は古典的な前初期遺伝子を数多く含む。


 興味深いことに、遺伝子の転写開始部位に近いプロモーター領域においては刺激の有無にかかわらずCREBはゲノムのCRE配列に結合しているが、遠位に存在するエンハンサー領域においてはCREB-CRE結合は刺激依存的に増強することが示されており<ref name=Kim2010/>[19]、CREの存在する位置によって多様なCREBの転写制御機構が示唆されている。
 興味深いことに、遺伝子の転写開始部位に近いプロモーター領域においては刺激の有無にかかわらずCREBはゲノムのCRE配列に結合しているが、遠位に存在するエンハンサー領域においてはCREB-CRE結合は刺激依存的に増強することが示されており<ref name=Kim2010/>、CREの存在する位置によって多様なCREBの転写制御機構が示唆されている。


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