「プルキンエ細胞」の版間の差分

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プルキンエ細胞はシナプス入力がない状態でも、自発的に[[活動電位]]を連続発火する。プルキンエ細胞では電位依存性ナトリウムチャネルNav1.6が発現しているが、Nav1.6は比較的深い膜電位で活性化し、不活性化状態からの回復が早い。このことがプルキンエ細胞の連続発火に寄与していると考えられている<ref><pubmed>12882229</pubmed></ref>。生体内における活動電位の発火頻度は50~100 Hzである。登上線維からのシナプス入力は、樹状突起でのP型電位依存性カルシウムチャネルを介したカルシウムイオン流入を引き起こし、複数のピークを持つ特徴的な複雑スパイクを引き起こす。複雑スパイクは、単純スパイクと呼ばれる通常の活動電位と波形により区別される(図4)。生体での複雑スパイクの発火頻度は約1 Hzと低い。なお、複雑スパイク後数十ミリ秒間は、単純スパイクの発火が抑えられる。<ref><pubmed>20950649</pubmed></ref>  
プルキンエ細胞はシナプス入力がない状態でも、自発的に[[活動電位]]を連続発火する。プルキンエ細胞では電位依存性ナトリウムチャネルNav1.6が発現しているが、Nav1.6は比較的深い膜電位で活性化し、不活性化状態からの回復が早い。このことがプルキンエ細胞の連続発火に寄与していると考えられている<ref><pubmed>12882229</pubmed></ref>。生体内における活動電位の発火頻度は50~100 Hzである。登上線維からのシナプス入力は、樹状突起でのP型電位依存性カルシウムチャネルを介したカルシウムイオン流入を引き起こし、複数のピークを持つ特徴的な複雑スパイクを引き起こす。複雑スパイクは、単純スパイクと呼ばれる通常の活動電位と波形により区別される(図4)。生体での複雑スパイクの発火頻度は約1 Hzと低い。なお、複雑スパイク後数十ミリ秒間は、単純スパイクの発火が抑えられる。<ref><pubmed>20950649</pubmed></ref>  
==シナプス可塑性と運動学習==
==シナプス可塑性と運動学習==
プルキンエ細胞への平行線維と登上線維の入力の同期が繰り返し起こると、平行線維によるシナプス応答が持続して減弱する[[長期抑圧]]と呼ばれる[[シナプス可塑性]]が起こる<ref><pubmed>11427694</pubmed></ref>。長期抑圧は、登上線維入力を誤差情報とする教師あり学習の基盤機構と考えられ、小脳における運動学習に寄与すると考えられてきた。長期抑圧の阻害、及び促進された遺伝子改変動物を用いた実験で運動学習の障害及び亢進が認められている<ref><pubmed>11427694</pubmed></ref><ref><pubmed>18509461</pubmed></ref>。一方で、長期抑圧が阻害された遺伝子改変マウスで、運動学習の異常が認められなかった例も報告された<ref><pubmed>21482355</pubmed></ref>。プルキンエ細胞上のシナプスでは、他の可塑性が起こることも知られており、それらも学習に寄与している可能性がある<ref><pubmed>11319554</pubmed></ref>。平行線維シナプスでの[[長期増強]]、抑制性シナプスでの長期増強等が報告されている<ref><pubmed>22090365</pubmed></ref>。さらに、神経活動に依存して[[電位依存性チャネル]]が変化し、活動電位発火の起こりやすさが持続的に変わる現象も知られている<ref><pubmed>9651230</pubmed></ref>。  
プルキンエ細胞への平行線維と登上線維の入力の同期が繰り返し起こると、平行線維によるシナプス応答が持続して減弱する[[長期抑圧]]と呼ばれる[[シナプス可塑性]]が起こる<ref name = ref5><pubmed>11427694</pubmed></ref>。長期抑圧は、登上線維入力を誤差情報とする教師あり学習の基盤機構と考えられ、小脳における運動学習に寄与すると考えられてきた。長期抑圧の阻害、及び促進された遺伝子改変動物を用いた実験で運動学習の障害及び亢進が認められている<ref name = ref5/><ref><pubmed>18509461</pubmed></ref>。一方で、長期抑圧が阻害された遺伝子改変マウスで、運動学習の異常が認められなかった例も報告された<ref><pubmed>21482355</pubmed></ref>。プルキンエ細胞上のシナプスでは、他の可塑性が起こることも知られており、それらも学習に寄与している可能性がある<ref><pubmed>11319554</pubmed></ref>。平行線維シナプスでの[[長期増強]]、抑制性シナプスでの長期増強等が報告されている<ref><pubmed>22090365</pubmed></ref>。さらに、神経活動に依存して[[電位依存性チャネル]]が変化し、活動電位発火の起こりやすさが持続的に変わる現象も知られている<ref><pubmed>9651230</pubmed></ref>。  
==プルキンエ細胞の欠失と疾患==
==プルキンエ細胞の欠失と疾患==
Lurcher, PSD等プルキンエ細胞が欠失するマウス系統が知られている。そして、これらのマウスは明らかな運動失調を示す。ヒトでは、脊髄小脳失調症6型でプルキンエ細胞の脱落が起こり、運動失調が認められる<ref><pubmed>21921472</pubmed></ref>。この原因遺伝子として P型カルシウムチャネルが同定されている。
Lurcher, PSD等プルキンエ細胞が欠失するマウス系統が知られている。そして、これらのマウスは明らかな運動失調を示す。ヒトでは、脊髄小脳失調症6型でプルキンエ細胞の脱落が起こり、運動失調が認められる<ref><pubmed>21921472</pubmed></ref>。この原因遺伝子として P型カルシウムチャネルが同定されている。
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