「脳波」の版間の差分

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英語名:Electroencephalography 英語略名:EEG 独語名:Elektroenzephalografie<br>  
英語名:Electroencephalography 英語略名:EEG 独語名:Elektroenzephalografie<br>  


脳波とは、ヒトの主に大脳皮質の錐体細胞のシナプス後電位の集合電位を頭皮上から観察しているものである。動物についても脳波とよぶことがある。身体に害を与えない非侵襲性の手法であることから、ヒト脳イメージング研究によく用いられる。非侵襲性イメージング手法の中でも、神経活動に伴う緩徐な血流動態を計測する核磁気共鳴画像法(fMRI)に比べて高い時間分解能をもち、ミリ秒オーダーの神経細胞集団の活動を計測できる。その一方で空間分解能は低く、計測信号から活動領域を推定することは高度な解析技術を要する。
{{box|text=脳波とは、ヒトの主に大脳皮質の錐体細胞のシナプス後電位の集合電位を頭皮上から観察しているものである。動物についても脳波とよぶことがある。身体に害を与えない非侵襲性の手法であることから、ヒト脳イメージング研究によく用いられる。非侵襲性イメージング手法の中でも、神経活動に伴う緩徐な血流動態を計測する核磁気共鳴画像法(fMRI)に比べて高い時間分解能をもち、ミリ秒オーダーの神経細胞集団の活動を計測できる。その一方で空間分解能は低く、計測信号から活動領域を推定することは高度な解析技術を要する。}}




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=== 入力インピーダンス ===
=== 入力インピーダンス ===
脳波計測では、脳を生体電源として抵抗をかませた回路をつくり、オームの法則から抵抗の前後における電位差を測る。しかし実際には生体内部で合計数十kΩにもなる抵抗が生じる。これは変動する可能性があり、測定はできない。これによって回路内に用意した抵抗にかかる電圧が生体電源電圧と等しくならず、正しい計測ができない。この生体内のインピーダンスを無視するために、回路に組み込んだ抵抗、つまり脳波計の入力端子間における入力インピーダンスを高くする必要がある(10MΩ以上)。生体側のインピーダンスよりも入力インピーダンスが十分に高ければ、抵抗の両端で生じる電位差を脳で生じた電圧とほぼ等しいとみなすことができる。<br> 生体信号の記録には、Ag/AgCl電極の電気特性が最も良いといわれている。Ag/AgCl電極では、数秒間にわたる緩やかな電位変化を記録することができる。ただし、脳波計の入力インピーダンスが十分に高ければ、電極の種類によらず歪のない計測ができるといわれている。電極を頭皮に接地する際には、頭皮との間に導電性のゲルを埋めて電気的に接触させる。この電極と頭皮における接触抵抗は、S/N比の高い脳波計測をするうえで非常に重要になってくる。接触抵抗が高いと信号が減衰してしまうため、頭皮の角質を落とすといった前処理で下げる必要がある。接触抵抗は電極間に交流電流を流した際の電極間インピーダンスとして計測が可能であり、これが一般的に言われる電極インピーダンスである。電極インピーダンスは5kΩ以下にすることが望ましいとされ、電極インピーダンスはできるだけ一様に下げることが望ましい。電極インピーダンスの値が揃っていれば差動増幅器(脳波計)の特性によって同相信号が除去されるため、電源ラインから混入する交流障害(ハム)の影響を少なくすることができる。<br> 入力インピーダンスは脳波計の性能次第であるが、接触インピーダンスは計測者の前処理によって下げる必要がある。ボルテージフォロワのような回路が仕込まれている電極では、電極ごとの接触インピーダンスに応じて入力インピーダンスを上げることができる。この電極を能動電極(アクティブ電極)とよび、対照的に回路が組み込まれていな電極をパッシブ電極と呼ぶ。<br>
脳波計測では、脳を生体電源として抵抗をかませた回路をつくり、オームの法則から抵抗の前後における電位差を測る。しかし実際には生体内部で合計数十kΩにもなる抵抗が生じる。これは変動する可能性があり、測定はできない。これによって回路内に用意した抵抗にかかる電圧が生体電源電圧と等しくならず、正しい計測ができない。この生体内のインピーダンスを無視するために、回路に組み込んだ抵抗、つまり脳波計の入力端子間における入力インピーダンスを高くする必要がある(10MΩ以上)。生体側のインピーダンスよりも入力インピーダンスが十分に高ければ、抵抗の両端で生じる電位差を脳で生じた電圧とほぼ等しいとみなすことができる。<br> 
 
 生体信号の記録には、Ag/AgCl電極の電気特性が最も良いといわれている。Ag/AgCl電極では、数秒間にわたる緩やかな電位変化を記録することができる。ただし、脳波計の入力インピーダンスが十分に高ければ、電極の種類によらず歪のない計測ができるといわれている。電極を頭皮に接地する際には、頭皮との間に導電性のゲルを埋めて電気的に接触させる。この電極と頭皮における接触抵抗は、S/N比の高い脳波計測をするうえで非常に重要になってくる。接触抵抗が高いと信号が減衰してしまうため、頭皮の角質を落とすといった前処理で下げる必要がある。接触抵抗は電極間に交流電流を流した際の電極間インピーダンスとして計測が可能であり、これが一般的に言われる電極インピーダンスである。電極インピーダンスは5kΩ以下にすることが望ましいとされ、電極インピーダンスはできるだけ一様に下げることが望ましい。電極インピーダンスの値が揃っていれば差動増幅器(脳波計)の特性によって同相信号が除去されるため、電源ラインから混入する交流障害(ハム)の影響を少なくすることができる。<br> 
 
 入力インピーダンスは脳波計の性能次第であるが、接触インピーダンスは計測者の前処理によって下げる必要がある。ボルテージフォロワのような回路が仕込まれている電極では、電極ごとの接触インピーダンスに応じて入力インピーダンスを上げることができる。この電極を能動電極(アクティブ電極)とよび、対照的に回路が組み込まれていな電極をパッシブ電極と呼ぶ。<br>




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脳波はその振幅情報だけでなく、その律動的なリズムも認知機能に関与することが示唆されている。たとえば、運動に関連してμ波リズム(α波とほぼ同一周波数帯域)のパワー値が減衰するmu-suppression (Pfurtscheller et al., 1977)という現象がある。このように事象に関連してある周波数帯域のパワー値が減衰する現象を事象関連脱同期(event-related desynchronization: ERD)と呼び,逆にパワー値が増強する現象を事象関連同期(event-related synchronization: ERS)と呼ぶ。<br>
脳波はその振幅情報だけでなく、その律動的なリズムも認知機能に関与することが示唆されている。たとえば、運動に関連してμ波リズム(α波とほぼ同一周波数帯域)のパワー値が減衰するmu-suppression (Pfurtscheller et al., 1977)という現象がある。このように事象に関連してある周波数帯域のパワー値が減衰する現象を事象関連脱同期(event-related desynchronization: ERD)と呼び,逆にパワー値が増強する現象を事象関連同期(event-related synchronization: ERS)と呼ぶ。<br>
近年では、周波数成分の位相情報に注目したネットワーク解析が行われるようになってきた。Hogeら()は,二値化された顔の画像を実験参加者に提示したところ,その画像が顔であると近くしたときに脳波の位相が大域的に同期することを発見した。このように、離れた領域間での脳波リズムの位相同期が情報統合に重要な役割を果たすと考えられている(Varela et al., 2000)。<br>
近年では、周波数成分の位相情報に注目したネットワーク解析が行われるようになってきた。Hogeら()は,二値化された顔の画像を実験参加者に提示したところ,その画像が顔であると近くしたときに脳波の位相が大域的に同期することを発見した。このように、離れた領域間での脳波リズムの位相同期が情報統合に重要な役割を果たすと考えられている(Varela et al., 2000)。<br>
==関連項目==
*[[脳磁法]]
*[[誘発電位および誘発脳磁界]]
==参考文献==
<REFERENCES />
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