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'' | ''電気通信大学大学院 情報理工学研究科 基盤理工学専攻''<br> | ||
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担当編集委員:[http://researchmap.jp/wadancnp 和田 圭司](国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/wadancnp 和田 圭司](国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)<br> | ||
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英略語:AP complex | 英略語:AP complex | ||
{{box|text= アダプタータンパク質複合体は4種類のポリペプチド鎖からなるヘテロ4量体で、2種類のlarge subunit, 1種類のmedium subunit, 1種類のsmall | {{box|text= アダプタータンパク質複合体は4種類のポリペプチド鎖からなるヘテロ4量体で、2種類のlarge subunit, 1種類のmedium subunit, 1種類のsmall subunitから構成されている。このタンパク質複合体はファミリーを形成し、AP-1からAP-5の5つのメンバーが報告されている。AP-1からAP-5はいずれも、それぞれが積み荷となる膜貫通タンパク質を細胞内の特定の膜領域へと輸送する機能を持っている 。積荷タンパク質の認識はmedium subunitが積荷タンパク質の細胞内領域に存在するシグナル配列に結合することにより行われるのが一般的である。アダプタータンパク質複合体のメンバーは全て共通の高次構造をとっていると考えられている。2つのlarge subunitのC末領域は”Ear domain”を形成し、”Head domain”はlarge subunitのN末領域とmedium subunitとsmall subunitからなっている。}} | ||
== | == アダプタータンパク質複合体とは== | ||
[[ファイル:Matsuda Fig 1.png|300px|サムネイル|右|'''図1 アダプタータンパク質複合体の構造''']] | [[ファイル:Matsuda Fig 1.png|300px|サムネイル|右|'''図1 アダプタータンパク質複合体の構造''']] | ||
[[ファイル:AdaptorsOverviewc.jpg|300px|サムネイル|'''図2 各アダプタータンパク質複合体の細胞内機能'''<br><ref name=Hirst2011><pubmed>22022230</pubmed></ref>より引用。]] | [[ファイル:AdaptorsOverviewc.jpg|300px|サムネイル|'''図2 各アダプタータンパク質複合体の細胞内機能'''<br><ref name=Hirst2011><pubmed>22022230</pubmed></ref>より引用。]] | ||
[[wj:真核細胞|真核細胞]]は細胞をつつむ[[細胞膜]]と共に、様々な[[wj:細胞内膜系|細胞内膜系]]を有しており、それぞれの膜が特有の機能を果たしている。これらの膜機能は、細胞膜と細胞内膜系、あるいは細胞内膜系間での厳密に制御されたタンパク質輸送に大きく依存していることから、その輸送機構が盛んに研究されてきている。 | |||
これまでに膜タンパク質の輸送に中心的な役割を果たす分子として、[[アダプタータンパク質複合体#AP-1|AP-1]]から[[アダプタータンパク質複合体#AP-5|AP-5]]の5種類アダプタータンパク質複合体が報告されている('''表''')。これら5種類のアダプタータンパク質は、全て、2種類のlarge subunit, 1種類のmedium subunit, 1種類のsmall subunitからなるヘテロ4量体構造をとっており、'''図1'''に示すような共通の高次構造を持つと考えられている。2つのlarge subunitのC末領域は”Ear domain”を形成し、”Head domain”はlarge subunitのN末領域とmedium subunitとsmall subunitからなっている。 | |||
5種類のアダプタータンパク質はいずれも、それぞれが積み荷となる膜貫通タンパク質を細胞内の特定の膜領域から別の膜領域へと輸送する機能を持っている<ref name=Guardia2018><pubmed>29558740</pubmed></ref><ref name=Robinson2001><pubmed>11454451</pubmed></ref>('''図2''')。 | |||
アダプタータンパク質が司る膜輸送には[[クラスリン]]依存性のものと非依存性のものがあり、AP-1および[[アダプタータンパク質複合体#AP-2|AP-2]]は主にβサブユニットを介してクラスリンに結合し、膜タンパク質のクラスリン依存的な輸送を司る。これに対して、[[アダプタータンパク質複合体#AP-3|AP-3]], [[アダプタータンパク質複合体#AP-4|AP-4]], AP-5はクラスリン非依存的に膜タンパク質の輸送を行うと考えられている。 | |||
いずれのアダプタータンパク質の場合も、積荷タンパク質の認識はmedium subunitが積荷タンパク質の細胞内領域に存在するシグナル配列に結合することにより行われるのが一般的である。 | |||
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! AP-1 | ! AP-1 | ||
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! AP-3 | ! AP-3 | ||
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! AP-4 | ! AP-4 | ||
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| ζ || β5 || μ5 || σ5 | | ζ || β5 || μ5 || σ5 | ||
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== AP-1 == | |||
=== 機能 === | |||
AP-1は[[エンドソーム]]と[[トランスゴルジネットワーク]]との間で[[膜タンパク質]]の[[膜輸送|輸送]]を行うアダプタータンパク質複合体である<ref name=Robinson2004><pubmed>15066634</pubmed></ref> 。 | |||
[[神経細胞]]や[[wj:上皮細胞|上皮細胞]]といった極性をもつ細胞においては、ある種の膜タンパク質を[[樹状突起]]や[[側基底膜]]へと輸送することも知られている<ref name=Dwyer2001><pubmed>11502258</pubmed></ref><ref name=Folsch1999><pubmed>10535737</pubmed></ref><ref name=Folsch2001><pubmed>11157985</pubmed></ref><ref name=Jain2015><pubmed>25378584</pubmed></ref> 。 | |||
AP-1は[[クラスリン]]を[[細胞内膜]]上に集積させると共に[[積荷タンパク質]]を認識することで積荷タンパク質を含んだクラスリン被覆小胞を形成し、積荷タンパク質を輸送する。AP-1の細胞内膜への集積は[[低分子量Gタンパク質]]である[[ARF]]に依存している。ARFによって[[ホスファチジルイノシトール4リン酸]]が細胞内膜上に合成されることによりAP-1がリクルートされると考えられている<ref name=Robinson1992><pubmed>1555237</pubmed></ref><ref name=Wang2003><pubmed>12914695</pubmed></ref> 。また、AP-1がホスファチジルイノシトール4リン酸と結合することも報告されている<ref name=Wang2003><pubmed>12914695</pubmed></ref> 。 | |||
こうして細胞内膜上にリクルートされたAP-1は積荷タンパク質のYXXΦ配列や[DE]XXXL[LI]配列、あるいはこれら以外の非典型的な配列を認識して結合する<ref name=Bonifacino2003><pubmed>12651740</pubmed></ref><ref name=Ohno1995><pubmed>7569928</pubmed></ref> 。同時にAP-1はクラスリンに対する結合能も有することから細胞内膜系に存在する積荷タンパク質をクラスリン被覆小胞へと運びこむことができる<ref name=Keen1987><pubmed>2890644</pubmed></ref> 。 | |||
=== サブユニット構造 === | |||
AP-1は2つのlarge subunit (β1とγ)、1つのmedium subunit (μ1)、1つのsmall subunit (σ1)からなる<ref name=Robinson2001><pubmed>11454451</pubmed></ref> 。 | |||
主なクラスリン結合部位はβ1サブユニットに存在する<ref name=Gallusser1993><pubmed>8262066</pubmed></ref> が、γサブユニットもクラスリン結合に関与していることが報告されている<ref name=Doray2001><pubmed>11451993</pubmed></ref> 。積荷タンパク質との結合は主にμサブユニットによって行われている。γサブユニットにはγ1とγ2の2つのisoformが、μ1サブユニットにはμ1Aとμ1Bの2つ、σ1サブユニットにはσ1A~σ1Cの3つのisoformが存在する<ref name=Folsch1999><pubmed>10535737</pubmed></ref><ref name=Setta-Kaffetzi2014><pubmed>24791904</pubmed></ref><ref name=Takatsu1998><pubmed>9733768</pubmed></ref> 。 | |||
=== 発現パターンおよび欠損マウス === | |||
μ1Aはユビキタスに発現しているが、μ1Bの発現は[[wj:上皮細胞|上皮細胞]]特異的であることが報告されている<ref name=Ohno1999><pubmed>10338135</pubmed></ref> 。つまり、μ1Aを含むAP-1(AP-1A)はユビキタスに発現しており、μ1Bを含むAP-1(AP-1B)は上皮細胞特異的に発現している。 | |||
[[ゼブラフィッシュ]]では、μ1Bは[[wj:受精|受精]]直後の2細胞期には多く発現するものの、その後一時的に大きく減少し、受精後24時間から再び発現し始めることも報告されている<ref name=Zizioli2010><pubmed>20652956</pubmed></ref> 。またσ1サブユニットはどれもユビキタスに発現しているが、σ1Aとσ1Bの発現は脳で最も強いことが知られている<ref name=Glyvuk2010><pubmed>20203623</pubmed></ref> 。 | |||
σ1Bの欠損マウスでは[[運動失調]]並びに[[空間記憶]]の異常が生じることも報告されている。μ1Aおよびγ1の欠損マウスは胎生致死である<ref name=Meyer2000><pubmed>10811610</pubmed></ref><ref name=Zizioli1999><pubmed>10026148</pubmed></ref> 。μ1Bの欠損マウスでは一部の[[側基底膜]]に存在する[[サイトカイン受容体]]が頂端膜へと輸送されることで、上皮細胞の[[wj:抗菌性タンパク質|抗菌性タンパク質]]の発現の減少や[[wj:IgA|IgA]]の分泌異常が引き起こされ、[[wj:腸管免疫|腸管免疫]]が異常をきたし、慢性[[wj:大腸炎|大腸炎]]をしめす。<ref name=Takahashi2011><pubmed>21669204</pubmed></ref> | |||
=== 疾患との関連 === | === 疾患との関連 === | ||
==== MEDNIK症候群 ==== | ==== MEDNIK症候群 ==== | ||
σ1Aの欠損により[[MEDNIK症候群|MEDNIK (mental retardation, enteropathy, deafness, neuropathy, ichthyosis, and keratodermia) 症候群]]が引き起こされることが報告されている<ref name=Montpetit2008><pubmed>19057675</pubmed></ref> | σ1Aの欠損により[[MEDNIK症候群|MEDNIK (mental retardation, enteropathy, deafness, neuropathy, ichthyosis, and keratodermia) 症候群]]が引き起こされることが報告されている<ref name=Montpetit2008><pubmed>19057675</pubmed></ref> 。健常者由来の繊維芽細胞では、銅イオンポンプATP7Aは基底状態ではゴルジ体に、高濃度の銅イオン存在下では細胞膜に輸送されるのに対し、患者由来の繊維芽細胞では基底状態でも細胞膜に多くATP7Aが検出されることが報告されている <ref name=Martinelli2013><pubmed>23423674</pubmed></ref> 。その為、この疾患は銅ポンプであるATP7AおよびそのホモログであるATP7Bの細胞内輸送の異常のために引き起こされると考えられている。 | ||
====Pettigrew症候群 ==== | ====Pettigrew症候群 ==== | ||
σ1Bの欠損により[[X連鎖精神遅滞]]である[[Pettigrew症候群]]<ref name=Tarpey2006><pubmed>17186471</pubmed></ref> に関連しているといわれている。 | σ1Bの欠損により[[X連鎖精神遅滞]]である[[Pettigrew症候群]]<ref name=Tarpey2006><pubmed>17186471</pubmed></ref> に関連しているといわれている。 | ||
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== AP-2 == | == AP-2 == | ||
=== 機能 === | === 機能 === | ||
AP- | AP-2はクラスリン依存性エンドサイトーシスを司り、細胞膜からエンドソームへの膜タンパク質の輸送を行うアダプタータンパク質である<ref name=Robinson2004><pubmed>15066634</pubmed></ref> 。 | ||
AP-2はAP-1と同様にクラスリン結合部位を有しており、クラスリンを細胞膜上に集積させる。同時に、積荷タンパク質を認識することによって、AP-2は積荷タンパク質をクラスリン被覆小胞によってエンドサイトーシスさせる。 | AP-2はAP-1と同様にクラスリン結合部位を有しており、クラスリンを細胞膜上に集積させる。同時に、積荷タンパク質を認識することによって、AP-2は積荷タンパク質をクラスリン被覆小胞によってエンドサイトーシスさせる。 | ||
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[[シナプス前部]]における[[シナプス小胞]]のエンドサイトーシスにもAP-2は重要な役割を果たしている。シナプス小胞がシナプス前部の細胞膜と融合するエキソサイトーシスにより神経伝達物質は放出されるが、その後シナプス小胞上に存在するタンパク質はクラスリン依存性エンドサイトーシスによって再び細胞膜から回収される<ref name=Jockusch2005><pubmed>15953416</pubmed></ref><ref name=Jung2007><pubmed>18166656</pubmed></ref> 。 | [[シナプス前部]]における[[シナプス小胞]]のエンドサイトーシスにもAP-2は重要な役割を果たしている。シナプス小胞がシナプス前部の細胞膜と融合するエキソサイトーシスにより神経伝達物質は放出されるが、その後シナプス小胞上に存在するタンパク質はクラスリン依存性エンドサイトーシスによって再び細胞膜から回収される<ref name=Jockusch2005><pubmed>15953416</pubmed></ref><ref name=Jung2007><pubmed>18166656</pubmed></ref> 。 | ||
== サブユニット構造 == | === サブユニット構造 === | ||
AP-2も2つのlarge subunit (β2とα)、1つのmedium subunit (μ2)、1つのsmall subunit (σ2)からなる<ref name=Robinson2001><pubmed>11454451</pubmed></ref> 。 | AP-2も2つのlarge subunit (β2とα)、1つのmedium subunit (μ2)、1つのsmall subunit (σ2)からなる<ref name=Robinson2001><pubmed>11454451</pubmed></ref> 。 | ||
YXXΦ配列とμ2サブユニットとの結合の構造的基盤が明らかにされており<ref name=Owen1998><pubmed>9812899</pubmed></ref> 、それによるとμ2サブユニットの2つの疎水性ポケットの一方にチロシンが、もう一方にΦが結合することが示されている。YXXΦ配列はAP-1の輸送シグナル配列と同じであるが、XやΦの位置に存在するアミノ酸によってどちらのアダプタータンパク質に結合しやすいかが決まると考えられている<ref name=Ohno1998><pubmed>9748267</pubmed></ref> 。 | YXXΦ配列とμ2サブユニットとの結合の構造的基盤が明らかにされており<ref name=Owen1998><pubmed>9812899</pubmed></ref> 、それによるとμ2サブユニットの2つの疎水性ポケットの一方にチロシンが、もう一方にΦが結合することが示されている。YXXΦ配列はAP-1の輸送シグナル配列と同じであるが、XやΦの位置に存在するアミノ酸によってどちらのアダプタータンパク質に結合しやすいかが決まると考えられている<ref name=Ohno1998><pubmed>9748267</pubmed></ref> 。 | ||
=== 発現パターンと欠損マウス === | |||
AP-2はユビキタスに発現しており、μ2サブユニットの欠損マウスは胎生致死であることが報告されている<ref name=Mitsunari2005><pubmed>16227583</pubmed></ref> 。 | |||
== AP-3 == | == AP-3 == | ||
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=== サブユニット構造 === | === サブユニット構造 === | ||
AP-3も2つのlarge subunit (β3とδ)、1つのmedium subunit (μ3)、1つのsmall subunit (σ3)からなっている<ref name=Robinson2001><pubmed>11454451</pubmed></ref> 。βサブユニットとμサブユニットにはそれぞれ脳特異的なβ3Bとμ3Bサブユニットが存在する<ref name=Guardia2018><pubmed>29558740</pubmed></ref> 。 | AP-3も2つのlarge subunit (β3とδ)、1つのmedium subunit (μ3)、1つのsmall subunit (σ3)からなっている<ref name=Robinson2001><pubmed>11454451</pubmed></ref> 。βサブユニットとμサブユニットにはそれぞれ脳特異的なβ3Bとμ3Bサブユニットが存在する<ref name=Guardia2018><pubmed>29558740</pubmed></ref> 。 | ||
=== 発現パターンと欠損マウス === | |||
β3Bとμ3Bを含むAP-3(AP-3B)は脳特異的に発現するが、これらを含まないAP-3Aはユビキタスに存在する。ユビキタスに発現するδサブユニットが欠損した変異マウス([[mochaマウス|mocha]])は、眼や皮膚の色素が薄まり、[[wj:血小板|血小板]]や[[wj:リソソーム|リソソーム]]、[[wj:内耳|内耳]]の異常と共に神経系の異常も見られ、後述の10型[[アダプタータンパク質#Hermansky-Pudlak症候群|Hermansky-Pudlak症候群]]のモデルマウスと考えられている <ref name=Kantheti1998><pubmed>9697856</pubmed></ref> 。脳特異的なβ3Bのノックアウトマウスでは、[[シナプス]]の形態や[[GABA]]の放出に異常が見られ、[[てんかん]]発作を起こすことが知られている <ref name=Nakatsu2004><pubmed>15492041</pubmed></ref> 。 | |||
=== 疾患との関連 === | === 疾患との関連 === | ||
==== 10型Hermansky-Pudlak症候群 ==== | ==== 10型Hermansky-Pudlak症候群 ==== | ||
δサブユニットの欠損により10型[[Hermansky-Pudlak症候群]]が引き起こされることが報告されている<ref name=Ammann2016><pubmed>26744459</pubmed></ref> | δサブユニットの欠損により10型[[Hermansky-Pudlak症候群]]が引き起こされることが報告されている<ref name=Ammann2016><pubmed>26744459</pubmed></ref> 。この疾患では上述のmochaマウスと類似した様々な症状が現れるが、神経症状としては、重篤な[[神経発達遅延]]、[[小頭症]]、[[てんかん]]、[[聴覚]]異常、[[終脳]]萎縮がみられる。。 | ||
==== 2型Hermansky-Pudlak症候群 ==== | ==== 2型Hermansky-Pudlak症候群 ==== | ||
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=== サブユニット構造 === | === サブユニット構造 === | ||
AP-4も2つのlarge subunit (β4とε)、1つのmedium subunit (μ4)、1つのsmall subunit (σ4)からなっている。βサブユニットとεサブユニットにはクラスリン結合モチーフが含まれておらず、また電子顕微鏡による解析からAP-4がクラスリンに覆われていない小胞上に存在することが示されており、これらのことからクラスリン非依存性の小胞輸送に関与すると考えられている<ref name=Guardia2018><pubmed>29558740</pubmed></ref><ref name=Hirst1999><pubmed>10436028</pubmed></ref> 。 | AP-4も2つのlarge subunit (β4とε)、1つのmedium subunit (μ4)、1つのsmall subunit (σ4)からなっている。βサブユニットとεサブユニットにはクラスリン結合モチーフが含まれておらず、また電子顕微鏡による解析からAP-4がクラスリンに覆われていない小胞上に存在することが示されており、これらのことからクラスリン非依存性の小胞輸送に関与すると考えられている<ref name=Guardia2018><pubmed>29558740</pubmed></ref><ref name=Hirst1999><pubmed>10436028</pubmed></ref> 。 | ||
=== 発現パターンと欠損マウス === | |||
AP-4はユビキタスにみられるアダプタータンパク質であり<ref name=Dell'Angelica1999-2><pubmed>10066790</pubmed></ref> 、β4のノックアウトマウスには軽度の運動失調が見られることが報告されている<ref name=Matsuda2008></ref>。 | |||
=== 疾患との関連 === | === 疾患との関連 === | ||
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=== サブユニット構造 === | === サブユニット構造 === | ||
AP-5も2つのlarge subunit (β5とζ)、1つのmedium subunit (μ5)、1つのsmall subunit (σ5)からなっている<ref name=Hirst2011><pubmed>22022230</pubmed></ref> 。AP-5はクラスリンには結合せず、その代わりに[[spatacsin]] ([[SPG11]])と[[spastizin]] ([[SPG15]])に結合することが知られている<ref name=Hirst2013b><pubmed>23825025</pubmed></ref> 。 | AP-5も2つのlarge subunit (β5とζ)、1つのmedium subunit (μ5)、1つのsmall subunit (σ5)からなっている<ref name=Hirst2011><pubmed>22022230</pubmed></ref> 。AP-5はクラスリンには結合せず、その代わりに[[spatacsin]] ([[SPG11]])と[[spastizin]] ([[SPG15]])に結合することが知られている<ref name=Hirst2013b><pubmed>23825025</pubmed></ref> 。 | ||
=== 発現パターンと欠損マウス === | |||
AP-5は最も新しく発見されたアダプタータンパク質であり、詳しいサブユニットの発現部位および欠損マウスの表現型については報告されていない。 | |||
=== 疾患との関連 === | === 疾患との関連 === |
2018年11月17日 (土) 16:25時点における最新版
松田 信爾
電気通信大学大学院 情報理工学研究科 基盤理工学専攻
DOI:10.14931/bsd.7734 原稿受付日:2018年6月12日 原稿完成日:2018年11月17日
担当編集委員:和田 圭司(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター)
英語名:adaptor protein complex 独:Adaptorproteinkomplexe 仏:protéine adaptatrice
英略語:AP complex
アダプタータンパク質複合体は4種類のポリペプチド鎖からなるヘテロ4量体で、2種類のlarge subunit, 1種類のmedium subunit, 1種類のsmall subunitから構成されている。このタンパク質複合体はファミリーを形成し、AP-1からAP-5の5つのメンバーが報告されている。AP-1からAP-5はいずれも、それぞれが積み荷となる膜貫通タンパク質を細胞内の特定の膜領域へと輸送する機能を持っている 。積荷タンパク質の認識はmedium subunitが積荷タンパク質の細胞内領域に存在するシグナル配列に結合することにより行われるのが一般的である。アダプタータンパク質複合体のメンバーは全て共通の高次構造をとっていると考えられている。2つのlarge subunitのC末領域は”Ear domain”を形成し、”Head domain”はlarge subunitのN末領域とmedium subunitとsmall subunitからなっている。
アダプタータンパク質複合体とは
真核細胞は細胞をつつむ細胞膜と共に、様々な細胞内膜系を有しており、それぞれの膜が特有の機能を果たしている。これらの膜機能は、細胞膜と細胞内膜系、あるいは細胞内膜系間での厳密に制御されたタンパク質輸送に大きく依存していることから、その輸送機構が盛んに研究されてきている。
これまでに膜タンパク質の輸送に中心的な役割を果たす分子として、AP-1からAP-5の5種類アダプタータンパク質複合体が報告されている(表)。これら5種類のアダプタータンパク質は、全て、2種類のlarge subunit, 1種類のmedium subunit, 1種類のsmall subunitからなるヘテロ4量体構造をとっており、図1に示すような共通の高次構造を持つと考えられている。2つのlarge subunitのC末領域は”Ear domain”を形成し、”Head domain”はlarge subunitのN末領域とmedium subunitとsmall subunitからなっている。
5種類のアダプタータンパク質はいずれも、それぞれが積み荷となる膜貫通タンパク質を細胞内の特定の膜領域から別の膜領域へと輸送する機能を持っている[2][3](図2)。
アダプタータンパク質が司る膜輸送にはクラスリン依存性のものと非依存性のものがあり、AP-1およびAP-2は主にβサブユニットを介してクラスリンに結合し、膜タンパク質のクラスリン依存的な輸送を司る。これに対して、AP-3, AP-4, AP-5はクラスリン非依存的に膜タンパク質の輸送を行うと考えられている。
いずれのアダプタータンパク質の場合も、積荷タンパク質の認識はmedium subunitが積荷タンパク質の細胞内領域に存在するシグナル配列に結合することにより行われるのが一般的である。
複合体 | Large subunit 1 | Large subunit 2 | Medium subunit | Small subunit |
---|---|---|---|---|
AP-1 | γ1,2 | β1 | μ1A,B | σ1A-C |
AP-2 | α | β2 | μ2 | σ2 |
AP-3 | δ | β3A,B | μ3A,B | σ3 |
AP-4 | ε | β4 | μ4 | σ4 |
AP-5 | ζ | β5 | μ5 | σ5 |
AP-1
機能
AP-1はエンドソームとトランスゴルジネットワークとの間で膜タンパク質の輸送を行うアダプタータンパク質複合体である[4] 。
神経細胞や上皮細胞といった極性をもつ細胞においては、ある種の膜タンパク質を樹状突起や側基底膜へと輸送することも知られている[5][6][7][8] 。
AP-1はクラスリンを細胞内膜上に集積させると共に積荷タンパク質を認識することで積荷タンパク質を含んだクラスリン被覆小胞を形成し、積荷タンパク質を輸送する。AP-1の細胞内膜への集積は低分子量Gタンパク質であるARFに依存している。ARFによってホスファチジルイノシトール4リン酸が細胞内膜上に合成されることによりAP-1がリクルートされると考えられている[9][10] 。また、AP-1がホスファチジルイノシトール4リン酸と結合することも報告されている[10] 。
こうして細胞内膜上にリクルートされたAP-1は積荷タンパク質のYXXΦ配列や[DE]XXXL[LI]配列、あるいはこれら以外の非典型的な配列を認識して結合する[11][12] 。同時にAP-1はクラスリンに対する結合能も有することから細胞内膜系に存在する積荷タンパク質をクラスリン被覆小胞へと運びこむことができる[13] 。
サブユニット構造
AP-1は2つのlarge subunit (β1とγ)、1つのmedium subunit (μ1)、1つのsmall subunit (σ1)からなる[3] 。
主なクラスリン結合部位はβ1サブユニットに存在する[14] が、γサブユニットもクラスリン結合に関与していることが報告されている[15] 。積荷タンパク質との結合は主にμサブユニットによって行われている。γサブユニットにはγ1とγ2の2つのisoformが、μ1サブユニットにはμ1Aとμ1Bの2つ、σ1サブユニットにはσ1A~σ1Cの3つのisoformが存在する[6][16][17] 。
発現パターンおよび欠損マウス
μ1Aはユビキタスに発現しているが、μ1Bの発現は上皮細胞特異的であることが報告されている[18] 。つまり、μ1Aを含むAP-1(AP-1A)はユビキタスに発現しており、μ1Bを含むAP-1(AP-1B)は上皮細胞特異的に発現している。
ゼブラフィッシュでは、μ1Bは受精直後の2細胞期には多く発現するものの、その後一時的に大きく減少し、受精後24時間から再び発現し始めることも報告されている[19] 。またσ1サブユニットはどれもユビキタスに発現しているが、σ1Aとσ1Bの発現は脳で最も強いことが知られている[20] 。
σ1Bの欠損マウスでは運動失調並びに空間記憶の異常が生じることも報告されている。μ1Aおよびγ1の欠損マウスは胎生致死である[21][22] 。μ1Bの欠損マウスでは一部の側基底膜に存在するサイトカイン受容体が頂端膜へと輸送されることで、上皮細胞の抗菌性タンパク質の発現の減少やIgAの分泌異常が引き起こされ、腸管免疫が異常をきたし、慢性大腸炎をしめす。[23]
疾患との関連
MEDNIK症候群
σ1Aの欠損によりMEDNIK (mental retardation, enteropathy, deafness, neuropathy, ichthyosis, and keratodermia) 症候群が引き起こされることが報告されている[24] 。健常者由来の繊維芽細胞では、銅イオンポンプATP7Aは基底状態ではゴルジ体に、高濃度の銅イオン存在下では細胞膜に輸送されるのに対し、患者由来の繊維芽細胞では基底状態でも細胞膜に多くATP7Aが検出されることが報告されている [25] 。その為、この疾患は銅ポンプであるATP7AおよびそのホモログであるATP7Bの細胞内輸送の異常のために引き起こされると考えられている。
Pettigrew症候群
σ1Bの欠損によりX連鎖精神遅滞であるPettigrew症候群[26] に関連しているといわれている。
汎発性膿疱性乾癬
σ1Cの欠損は汎発性膿疱性乾癬[16] に関連しているといわれている。
AP-2
機能
AP-2はクラスリン依存性エンドサイトーシスを司り、細胞膜からエンドソームへの膜タンパク質の輸送を行うアダプタータンパク質である[4] 。
AP-2はAP-1と同様にクラスリン結合部位を有しており、クラスリンを細胞膜上に集積させる。同時に、積荷タンパク質を認識することによって、AP-2は積荷タンパク質をクラスリン被覆小胞によってエンドサイトーシスさせる。
AP-2はホスファチジルイノシトール-4,5-2リン酸(PIP2)により細胞膜上にリクルートされる[27] 。細胞膜上にリクルートされたAP-2は、AP-1と同様に積荷タンパク質の輸送シグナルに結合する。
AP-2と積荷タンパク質の結合はリン酸化によって調節されることが知られている。例えばCTLA-4やL1といった膜タンパク質に含まれるYXXΦ配列のチロシン残基がリン酸化されるとAP-2と結合できなくなる[28][29] 。
さらにAMPA型グルタミン酸受容体(AMPA受容体)の副サブユニットであるTARP (Transmembane AMPA receptor Regulatory Protein)とAP-2との結合がリン酸化によって制御されていることも報告されている[30] 。TARPとAP-2とのリン酸化に依存した結合によりシナプス後部におけるAMPA受容体のエンドサイトーシスが調整されており、シナプス可塑性の1つである長期抑圧(LTD)の分子基盤となっていると考えられている。
シナプス前部におけるシナプス小胞のエンドサイトーシスにもAP-2は重要な役割を果たしている。シナプス小胞がシナプス前部の細胞膜と融合するエキソサイトーシスにより神経伝達物質は放出されるが、その後シナプス小胞上に存在するタンパク質はクラスリン依存性エンドサイトーシスによって再び細胞膜から回収される[31][32] 。
サブユニット構造
AP-2も2つのlarge subunit (β2とα)、1つのmedium subunit (μ2)、1つのsmall subunit (σ2)からなる[3] 。
YXXΦ配列とμ2サブユニットとの結合の構造的基盤が明らかにされており[33] 、それによるとμ2サブユニットの2つの疎水性ポケットの一方にチロシンが、もう一方にΦが結合することが示されている。YXXΦ配列はAP-1の輸送シグナル配列と同じであるが、XやΦの位置に存在するアミノ酸によってどちらのアダプタータンパク質に結合しやすいかが決まると考えられている[34] 。
発現パターンと欠損マウス
AP-2はユビキタスに発現しており、μ2サブユニットの欠損マウスは胎生致死であることが報告されている[35] 。
AP-3
機能
AP-3はエンドソームからリソソームヘの輸送を制御するアダプタータンパク質複合体である[4] 。
In vitroではクラスリンに結合することが報告されている[36] が、この結合と実際の小胞輸送との関連性は明らかではなく[37] 、むしろAP-3はVPS41とも結合し、これが小胞輸送に重要であるとの報告がなされている[38] 。
AP-3はホスファチジルイノシトール3リン酸に対する結合能を有しており[39] 、これによりエンドソームに集積すると考えられる。AP-3が認識する積荷タンパク質の輸送シグナルはAP-1およびAP-2の認識配列と同様のアミノ酸配列である[11] 。神経細胞のシナプス後部においては、AP-3はAP-2と同様にAMPA受容体の副サブユニットであるTARPとリン酸化依存的に結合しAMPA受容体-TARP複合体をリソソームヘと輸送することで、長期抑圧の誘導に必須の役割を果たしていると考えられている[30] 。
またシナプス前部において、シナプス小胞前駆体からのシナプス小胞の形成に寄与[40] すると共に、神経ペプチドの有芯小胞への輸送[41] 、さらに線虫では軸索へのタンパク質輸送も司っていることが報告されている[42] 。
サブユニット構造
AP-3も2つのlarge subunit (β3とδ)、1つのmedium subunit (μ3)、1つのsmall subunit (σ3)からなっている[3] 。βサブユニットとμサブユニットにはそれぞれ脳特異的なβ3Bとμ3Bサブユニットが存在する[2] 。
発現パターンと欠損マウス
β3Bとμ3Bを含むAP-3(AP-3B)は脳特異的に発現するが、これらを含まないAP-3Aはユビキタスに存在する。ユビキタスに発現するδサブユニットが欠損した変異マウス(mocha)は、眼や皮膚の色素が薄まり、血小板やリソソーム、内耳の異常と共に神経系の異常も見られ、後述の10型Hermansky-Pudlak症候群のモデルマウスと考えられている [43] 。脳特異的なβ3Bのノックアウトマウスでは、シナプスの形態やGABAの放出に異常が見られ、てんかん発作を起こすことが知られている [40] 。
疾患との関連
10型Hermansky-Pudlak症候群
δサブユニットの欠損により10型Hermansky-Pudlak症候群が引き起こされることが報告されている[44] 。この疾患では上述のmochaマウスと類似した様々な症状が現れるが、神経症状としては、重篤な神経発達遅延、小頭症、てんかん、聴覚異常、終脳萎縮がみられる。。
2型Hermansky-Pudlak症候群
β3Aサブユニットの欠損により2型Hermansky-Pudlak症候群が引き起こされる[45] 。この疾患での神経発達遅延は軽微である。
早期発症型てんかん性脳症
脳特異的なβ3Bの欠損では早期発症型てんかん性脳症(EOEE)が発症し、重篤な神経発達遅延、知的障害、てんかん、視神経萎縮症などの症状が現れる[46] 。
AP-4
機能
AP-4はクラスリン非依存的に積荷タンパク質をトランスゴルジネットワークから輸送するアダプタータンパク質である[2] 。
上皮細胞や神経細胞といった極性をもった細胞においてAP-4はこの極性に従った膜タンパク質の輸送に関与することが知られている。上皮細胞においては低密度リポタンパク質受容体(LDLR)やカチオン依存性マンノース6リン酸受容体を側基底膜へと輸送[47] し、神経細胞ではδ2グルタミン酸受容体(GluD2)やAMPA型グルタミン酸受容体―TARP複合体を樹状突起特異的に輸送することが報告されている[48] 。AP-4欠損マウスではAMPA受容体―TARP複合体は樹状突起だけでなく軸索にも輸送され、軸索ではオートファゴソーム様の構造体に取り込まれることが知られている。一方、同じ樹状突起特異的に存在するタンパク質であってもNMDA型グルタミン酸受容体、あるいは代謝型グルタミン酸受容体1はAP-4非依存的に樹状突起へと輸送されることも明らかになっている。
さらに、AP-4はアミロイド前駆体タンパク質(APP)の細胞質領域に結合し、トランスゴルジネットワークからエンドソームへと輸送すること[49] 、ATG9Aをトランスゴルジネットワークからエンドソームあるいはオートファゴソーム前駆構造へと輸送することも報告されている[50] 。
サブユニット構造
AP-4も2つのlarge subunit (β4とε)、1つのmedium subunit (μ4)、1つのsmall subunit (σ4)からなっている。βサブユニットとεサブユニットにはクラスリン結合モチーフが含まれておらず、また電子顕微鏡による解析からAP-4がクラスリンに覆われていない小胞上に存在することが示されており、これらのことからクラスリン非依存性の小胞輸送に関与すると考えられている[2][51] 。
発現パターンと欠損マウス
AP-4はユビキタスにみられるアダプタータンパク質であり[52] 、β4のノックアウトマウスには軽度の運動失調が見られることが報告されている[48]。
疾患との関連
AP-4欠損症候群
AP-4の4つのサブユニットのいずれが欠損しても神経発達障害が引き起こされ、AP-4欠損症候群と呼ばれ、常染色体劣性遺伝を示す[53][54][55][56] 。乳児期に筋緊張低下がおこり、その後四肢麻痺や筋緊張亢進、そして歩行不能となる。また重篤な知的障害が引き起こされ、言語発達障害あるいは顕著な遅れが見られる。さらにこれまで脳性麻痺と診断されてきた110名の患者のσ4遺伝子に変異があることが報告されている[57] 。
脳神経疾患以外の症状としてはAP-4ε遺伝子にナンセンス変異をもつ一卵性双生児がBCGワクチンの接種によりリンパ節炎を発症した[58] 。このことからAP-4は免疫系にも重要な役割を果たしている可能性が考えられる。
AP-5
機能
AP-5は最も新しく発見されたアダプタータンパク質複合体であり、後期エンドソームおよびリソソームに存在している[59] 。クラスリン非依存的に積荷タンパク質を輸送するアダプタータンパク質であり[2] 、カチオン非依存性マンノース6リン酸受容体(CI-MPR)、ゴルジタンパク質であるGOLIM4, GOLM1を後期エンドソームからゴルジ体へと輸送する機能を持つ[60] 。
サブユニット構造
AP-5も2つのlarge subunit (β5とζ)、1つのmedium subunit (μ5)、1つのsmall subunit (σ5)からなっている[1] 。AP-5はクラスリンには結合せず、その代わりにspatacsin (SPG11)とspastizin (SPG15)に結合することが知られている[61] 。
発現パターンと欠損マウス
AP-5は最も新しく発見されたアダプタータンパク質であり、詳しいサブユニットの発現部位および欠損マウスの表現型については報告されていない。
疾患との関連
AP-5ζサブユニットの欠損およびSPG11とSPG15の欠損の患者は脳梁が薄く、白質病変を有し、神経障害、パーキンソン症、認知障害を示すことが報告されている[62][63] 。
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