「空間知覚」の版間の差分

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 上記のように背側視覚経路は、空間知覚に深く関わるとされているが、古くからヒトにおけるその損傷で、空間知覚に関する様々な神経症状が知られている。
 上記のように背側視覚経路は、空間知覚に深く関わるとされているが、古くからヒトにおけるその損傷で、空間知覚に関する様々な神経症状が知られている。


===半側空間無視===
===[[半側空間無視]]===
 右の[[頭頂葉]]ないし[[運動前野]]の障害で起こる。患者からみた左の空間を無視する症状で、たとえば、模写をさせるとモデルとなった絵の右半分しか描かないとか、あるいは目の前のトレーにのった食事を左半分無視して食べ残してしまう。この症状は、自己の身体にもおよび顔の右半分しか化粧をしないとか、あるいは自己の左半身を無視してしまう症状が現れる。
 右の[[頭頂葉]]ないし[[運動前野]]の障害で起こる。患者からみた左の空間を無視する症状で、たとえば、模写をさせるとモデルとなった絵の右半分しか描かないとか、あるいは目の前のトレーにのった食事を左半分無視して食べ残してしまう。この症状は、自己の身体にもおよび顔の右半分しか化粧をしないとか、あるいは自己の左半身を無視してしまう症状が現れる。


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 よく知っているはずの場所で道に迷う症状で、[[街並失認]]と[[道順障害]]が知られている<ref name=ref28>'''河村 満'''<br>空間識・シリーズ教育講座 地理認知障害 街並失認と道順障害<br>''Equilibrium Research'', 2003. 62(4): p. 275-283.</ref>。街並失認は、旧知の家や街の風景の同定が出来なくなり、右の海馬傍回が責任病巣とされている。また、道順障害は、風景は街並を見てどこにいるかはわかるが、道順が想起できない。右の[[脳梁膨大部]]の後ろの方の障害によって起こる。
 よく知っているはずの場所で道に迷う症状で、[[街並失認]]と[[道順障害]]が知られている<ref name=ref28>'''河村 満'''<br>空間識・シリーズ教育講座 地理認知障害 街並失認と道順障害<br>''Equilibrium Research'', 2003. 62(4): p. 275-283.</ref>。街並失認は、旧知の家や街の風景の同定が出来なくなり、右の海馬傍回が責任病巣とされている。また、道順障害は、風景は街並を見てどこにいるかはわかるが、道順が想起できない。右の[[脳梁膨大部]]の後ろの方の障害によって起こる。


===到達運動障害===
===[[到達運動]]障害===
 到達運動に関しては、物体の空間的定位情報が正しく運動系へ伝えられる必要がある。[[Balint症候群]]に含まれる[[視覚失調]](optiche Ataxie)は、注視線上にとらえた物体に手をのばすことができない。両側の頭頂葉によるものと考えられている。一方、周辺視野にある物体に到達運動ができないものを[[視覚性運動失調]](ataxie optique)とよび、眼球位置や頭の位置、腕の位置などの網膜外の情報による座標変換の障害と考えられている<ref name=ref29>'''山鳥 重'''<br>神経心理学入門、1985: ''医学書院''</ref>。
 [[到達運動]]に関しては、物体の空間的定位情報が正しく運動系へ伝えられる必要がある。[[Balint症候群]]に含まれる[[視覚失調]](optiche Ataxie)は、注視線上にとらえた物体に手をのばすことができない。両側の頭頂葉によるものと考えられている。一方、周辺視野にある物体に到達運動ができないものを[[視覚性運動失調]](ataxie optique)とよび、眼球位置や頭の位置、腕の位置などの網膜外の情報による座標変換の障害と考えられている<ref name=ref29>'''山鳥 重'''<br>神経心理学入門、1985: ''医学書院''</ref>。


===手操作運動障害===
===手操作運動障害===
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