「樹状突起スパイン」の版間の差分

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 樹状突起では、距離の近いシナプスへの入力が電位依存性チャネルなどの影響を受け、膜電位が非線形的な増幅を受けて、いわゆる樹状突起スパイク(dendritic spike)を発生することが知られている<ref name=Losonczy2006><pubmed>16630839</pubmed></ref><ref name=Polsky2009><pubmed>19776275</pubmed></ref> 。距離の近いスパイン同士が類似の機能を持っていることは、樹状突起が、このような非線形的な膜電位の増幅を利用した計算を行っている可能性を示唆している<ref name=Mel2017><pubmed>28453975</pubmed></ref><ref name=Poirazi2003><pubmed>12670427</pubmed></ref> 。
 樹状突起では、距離の近いシナプスへの入力が電位依存性チャネルなどの影響を受け、膜電位が非線形的な増幅を受けて、いわゆる樹状突起スパイク(dendritic spike)を発生することが知られている<ref name=Losonczy2006><pubmed>16630839</pubmed></ref><ref name=Polsky2009><pubmed>19776275</pubmed></ref> 。距離の近いスパイン同士が類似の機能を持っていることは、樹状突起が、このような非線形的な膜電位の増幅を利用した計算を行っている可能性を示唆している<ref name=Mel2017><pubmed>28453975</pubmed></ref><ref name=Poirazi2003><pubmed>12670427</pubmed></ref> 。


 実際に、上肢による運動学習の際にマウス大脳皮質運動野の5層錐体細胞の樹状突起に新規生成されたスパインは先行して新生したスパインの近傍に生じる傾向があったという<ref name=Fu2012><pubmed>22343892</pubmed></ref><ref name=Lu2017><pubmed>27637453</pubmed></ref> 。また、運動学習によって新規生成された樹状突起スパインが睡眠時に消去されやすいことも別のグループから報告されている<ref name=Li2017><pubmed>28092659</pubmed></ref> 。学習によって、スパインは冗長的に生成され、比較的不安定な状態にあり、その後の学習や睡眠で適したものを選択して神経回路を最適化するのかもしれない。記憶・学習に関係する神経回路に組み込まれるためには、スパイン体積増大によって消去を免れる処置がその過程に関与するか否か、今後調べられていくと思われる<ref name=Hayashi-Takagi2015><pubmed>26352471</pubmed></ref><ref name=Roberts2010><pubmed>20164928</pubmed></ref> 。
 実際に、上肢による運動学習の際にマウス大脳皮質運動野の5層錐体細胞の樹状突起に新規生成されたスパインは先行して新生したスパインの近傍に生じる傾向があったという<ref name=Fu2012><pubmed>22343892</pubmed></ref><ref name=Lu2017><pubmed>27637453</pubmed></ref> 。また、運動学習によって新規生成された樹状突起スパインが睡眠時に消去されやすいことも別のグループから報告されている<ref name=Li2017><pubmed>28092659</pubmed></ref> 。学習によって、スパインは冗長的に生成され、比較的不安定な状態にあり、その後の学習や睡眠で適したものを選択して神経回路を最適化するのかもしれない。スパイン体積変化が記憶・学習過程にどのように関係するのか、あるいは、周囲のスパインとの相互作用はどのような分子メカニズムで行われるのかなどが、今後調べられていくと思われる<ref name=Hayashi-Takagi2015><pubmed>26352471</pubmed></ref><ref name=Roberts2010><pubmed>20164928</pubmed></ref> 。


== 樹状突起スパインと精神・神経疾患、発達障害 ==
== 樹状突起スパインと精神・神経疾患、発達障害 ==