「脳の領域化」の版間の差分

提供:脳科学辞典
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<font size="+1">[http://researchmap.jp/noriakisasai 笹井 紀明]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0118148 笹井 紀明]</font><br>
''奈良先端科学技術大学院大学''<br>
''奈良先端科学技術大学院大学''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2020年7月18日 原稿完成日:2020年9月14日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2020年7月18日 原稿完成日:20XX年X月X日<br>
担当編集委員:[https://researchmap.jp/hiroshikawasaki 河崎 洋志](金沢大学 医学系 脳神経医学教室)<br>
担当編集委員:[https://researchmap.jp/ctx 花嶋 かりな](早稲田大学 教育・総合科学術院 先進理工学研究科)<br>
</div>
</div>
英:regionalization of the brain
Regionalization of the brain)


{{box|text= 脳が神経系の中枢として機能を発揮するためには、脳を構成する細胞が機能を分担し、それらがネットワークを介して相互作用することが必要である。このうち、脳神経細胞の機能分担は発生の初期から始まっており、各細胞が徐々に特定の機能を獲得するだけでなく、類似の性質を持つ細胞が集団を形成して決まった位置に形成される。このように、集団を形成した脳神経細胞(またはその前駆細胞)が脳の中で特定の位置に形成されることを「脳の領域化」という。}}
 脳領域に存在する細胞の種類は極めて多岐にわたるが、その多様化・領域化は、脳発生の初期から起こり始めている。この項では、領域化に関与する転写因子と、その発現を誘導するオーガナイザーや分泌因子を中心に、脊椎動物の脳が神経外胚葉から各細胞が分化し、組織内で領域化されるまでの過程を中心に記述する。
 なお、本項目の内容は、別項目の「前後軸」(高橋)とも一部重複する。


==脳の領域化とは==
初期胚におけるおおまかな領域の決定
[[ファイル:Sasai Regionalization Fig1.png|サムネイル|'''図1. 脳の領域化と、運命決定図。胚の背側からの模式図'''<br><ref name=Gilbert>'''Scott F. Gilbert & Michael J. F. Baressi. (2016)'''<br>Developmental Biology, Eleventh Edition<br>Sinauer Associates Inc.</ref>をもとに作成。]]
 脊椎動物では、原腸形成期に胚の背側に神経板が出現し、原腸形成期の後半からOtx2(Orthodenticle Homeobox 2)という転写因子が、頭部神経板領域(将来前脳・中脳領域に分化する部分)に発現する <ref name=Acampora1995><pubmed>7588062</pubmed></ref> 。Otx2はほかに胚盤葉上層、眼にも発現しており、それぞれに特異的なエンハンサー領域が存在する <ref name=Kurokawa2004><pubmed>15201223</pubmed></ref> 。一方、後脳には別の転写因子Gbx2が発現し <ref name=Islam2006><pubmed>17067785</pubmed></ref> 、Otx2のエンハンサー領域の一部に結合してOtx2の発現領域を制限する <ref name=Inoue2012><pubmed>22566684</pubmed></ref>
[[ファイル:Sasai Regionalization Fig2.png|サムネイル|'''図2. 前後軸、背腹軸に沿った分泌因子、転写因子の一部の発現領域'''<br>Mはmesencephalon、Rはrhombencephalon。間脳領域はpretectum (視蓋前域; p1), thalamus (視床; p2 ) prethalamus (視床下部; p3)3つの領域に分けられる。<br><ref name=Harada2016><pubmed>27273073</pubmed></ref><ref name=Martinez2013>'''Martínez, S.P., E.; Echevarria, D. (2013)'''<br>Ontogeny of the Vertebrate Nervous System<br>Neurosciences - From Molecule to Behavior: a university textbook. pp 47-61</ref><ref name=Vieira2010><pubmed>19876817</pubmed></ref><ref name><pubmed> 22654731 </pubmed></ref>などを参考にして作成。]]


 脳は、発生初期には均一な[[神経前駆細胞]]の集団だが、発生の進行とともに個々の細胞が特定の性質を獲得し、[[神経細胞|脳神経細胞]]としての役割を持つようになる。この過程で、各機能を持った細胞は集団として特定の位置に形成され、各細胞が同一集団内、または集団を越えて相互作用し、脳が全体として[[中枢神経系|中枢神経]]としての機能を発揮するようになる。この課程で、特定の機能を持った細胞が集団を形成して特定の位置に形成されることを「脳の領域化」という。
2次オーガナイザー領域の形成
 脳のさらなる領域化には、以下の3つのオーガナイザー領域(シグナリングセンターとして分泌因子を産生する領域)が存在し、FGFやShh、Wntなどの分泌因子を発現し、脳の領域を決定している。(なお以下のオーガナイザー領域の日本語名は、英語名を直訳した試訳である)。


 各細胞が特定の機能を獲得したことは、多くの場合、特定の[[転写因子]](多くは[[ホメオボックス型転写因子]]:'''図1'''、'''2'''、'''表''')を発現したことにより同定できる。
2-1. Anterior Neural Ridge(ANR):前部神経端
 この領域自体は非神経性細胞からなっているが、主にFGF8を発現しており、転写因子BF-1の発現を誘導する。BF-1はANRの機能を相補する(ANRがなくてもBF-1が発現したら終脳が正常に発生する)ため、BF-1はANRによって誘導される主要な因子である <ref name=Shimamura1997><pubmed>9226442</pubmed></ref> 。


== 初期胚におけるおおまかな脳領域の決定 ==
2-2. Zona limitans intrathalamica(ZLI)
 [[脊椎動物]]では、[[wj:原腸形成期|原腸形成期]]に胚の背側に[[神経板]]が出現し、原腸形成期の後半から[[orthodenticle homeobox 2]] ([[otx2]])という転写因子が、頭部神経板領域(将来[[前脳]]・[[中脳]]領域に分化する部分)に発現する<ref name=Acampora1995><pubmed>7588062</pubmed></ref> 。Otx2はほかに[[wj:胚盤葉|胚盤葉]]上層、[[眼]]にも発現しており、それぞれの発現領域に特異的な[[エンハンサー]]領域が存在する <ref name=Kurokawa2004><pubmed>15201223</pubmed></ref> 。一方、後脳には別の転写因子[[Gbx2]]が発現し <ref name=Islam2006><pubmed>17067785</pubmed></ref> 、otx2遺伝子のエンハンサー領域の一部に結合してotx2の発現領域を制限する <ref name=Inoue2012><pubmed>22566684</pubmed></ref>
 この部分は、前脳から発生した大脳を2つの異なる性質を持つ領域に分ける領域である。大脳部分はプロソメアという区分に従って3つに分割することができるが、前部から順に、p3, p2, p1と分けられる領域のうち、p2とp3を分けるものがZLIである。ZLIが発現するのはソニック・ヘッジホッグ(Sonic Hedgehog; Shh)である<ref name=Kiecker2004><pubmed>15494730</pubmed></ref> 。ZLIの前後では、Shhに対する細胞の反応性が異なり、ZLIよりも前部ではDlx2が、後部ではIrx3、Gbx2の発現が誘導される。


== 2次オーガナイザー領域の形成 ==
2-2. Isthmic Organiser(IsO):峡部オーガナイザー
 脳のさらなる領域化には、以下の3つの特定の領域([[シグナリングセンター]]として[[分泌因子]]を産生する領域)が存在し、[[線維芽細胞増殖因子]] ([[fibroblast growth factor]]; [[FGF]])や[[ソニック・ヘッジホッグ]]([[Sonic Hedgehog]], [[Shh]])、[[Wnt]]などの分泌因子を発現し、それらが転写因子の発現を誘導することにより脳の領域を決定している。これら分泌因子を発現する領域は、神経誘導を促すオーガナイザーよりも発生学的に後に出現するために、「[[2次オーガナイザー]]」と呼ばれている(なお以下のオーガナイザー領域の日本語名は、英語名を直訳した試訳である)。
Midbrain-Hindbrain Boundary(MHB):中脳/後脳境界
 この領域からは、FGF8やWnt1などの分泌因子が分泌され、中脳や小脳に発現する転写因子を発現誘導する。MHBにおけるFGF8やWnt1の発現には転写因子Lmx1bが必要だと言われている <ref name=Guo2007><pubmed>17166916</pubmed></ref> 。FGF8はMHBの前後である中脳と後脳に発現する遺伝子を誘導する一方、Wnt1は細胞の増殖などに関与していると考えられている <ref name=Harada2016><pubmed>27273073</pubmed></ref> 。


=== 前部神経端 ===
脳の各領域に発現する転写因子


 [[前部神経端]]([[Anterior neural ridge]], ANR)は非神経性細胞からなっているが、主に[[FGF8]]を発現しており、転写因子[[BF-1]]の発現を誘導する。BF-1はANRの機能を相補する(ANRがなくてもBF-1が発現したら終脳が正常に発生する)ため、BF-1はANRによって誘導される主要な因子である <ref name=Shimamura1997><pubmed>9226442</pubmed></ref> ('''図1'''、'''2''')。
 上述の2次オーガナイザー領域から分泌されたFGFやWntなどのシグナル因子により、転写因子が脳の特定の領域に発現し、各領域を特徴付けている。これらの転写因子のノックアウトマウスは、一部は脳領域の一部を欠損することになり、脳の発達または成長に大きな影響を及ぼすために胚性致死となる。一方、これらの転写因子は、免疫細胞、内分泌系、腎臓や精巣、肺などにも発現する。したがって、各遺伝子の単純なノックアウトでは、表現型が脳以外の領域にも見られるものがある(Irx3、Nkx2.1、Sim-2、Lmx1b、BF2など)。これらの例では、脳領域における機能を明らかにするために、脳特異的なノックアウト(条件付き遺伝子ノックアウト:コンディショナルノックアウト)が作成され、解析が進んでいる。


=== Zona limitans intrathalamica ===
(図1)脳の領域化と、運命決定図。胚の背側からの模式図。Developmental Biology(ギルバート・バレッシ著)第11巻をもとに作成。
 
(図2)前後軸、背腹軸に沿った分泌因子、転写因子の一部の発現領域。<ref name=Harada2016><pubmed>27273073</pubmed></ref> <ref name=Martínez2013><pubmed></pubmed></ref> <ref name=Vieira2010><pubmed>19876817</pubmed></ref> などを参考にして作成。
 [[Zona limitans intrathalamica]] ([[ZLI]])は、[[前脳]]から発生した[[大脳]]を2つの異なる性質を持つ領域に分ける領域である。大脳部分は[[プロソメア]]という区分に従って3つに分割することができるが、前部から順に、p3, p2, p1と分けられる領域のうち、p2とp3を分けるものがZLIである。ZLIが発現するのはソニック・ヘッジホッグである<ref name=Kiecker2004><pubmed>15494730</pubmed></ref> 。ZLIの前後では、ソニック・ヘッジホッグに対する細胞の反応性が異なり、ZLIよりも前部では[[dlx2]]が、後部では[[irx3]]、[[gbx2]]の発現が誘導される('''図1''')。
(図3)脳で領域特異的に発現する転写因子の性質・機能と、その変異がヒトにもたらす疾患。OMIM(Online Mendelian Inheritance in Man; https://www.omim.org)や NIH Genetics Home Reference(https://ghr.nlm.nih.gov)を参考に作成。
 
各参考論文
===中脳/後脳境界 ===
<ref name=Bienvenu2002><pubmed>11971879</pubmed></ref> <ref name=Kitamura2002><pubmed>12379852</pubmed></ref> <ref name=Collombat2003><pubmed>14561778</pubmed></ref> <ref name=Lim2019><pubmed>30659230</pubmed></ref> <ref name=Friocourt2008><pubmed>18509041</pubmed></ref> <ref name=Qiu1995><pubmed>7590232</pubmed></ref> <ref name=de Melo2005><pubmed>15604100</pubmed></ref> <ref name=Liu2009><pubmed>18728693</pubmed></ref> <ref name=Petryniak2007><pubmed>17678855</pubmed></ref> <ref name=Yoshida1997><pubmed>9006071</pubmed></ref> <ref name=Kim2010><pubmed>20887964</pubmed></ref> <ref name=Cecchi2000><pubmed>10906797</pubmed></ref> <ref name=Gulisano1996><pubmed>8743751</pubmed></ref> <ref name=Hamasaki2004><pubmed>15294144</pubmed></ref> <ref name=Brunelli1996><pubmed>8528262</pubmed></ref> <ref name=Wurst1994><pubmed>7925010</pubmed></ref> <ref name=Rekaik2015><pubmed>26459030</pubmed></ref> <ref name=Kouwenhoven2016><pubmed>26879466</pubmed></ref> <ref name=Cheh2006><pubmed>16935268</pubmed></ref> <ref name=Benayed2005><pubmed>16252243</pubmed></ref> <ref name=Genestine2015><pubmed>26220976</pubmed></ref> <ref name=Hirata2006><pubmed>16971467</pubmed></ref>  <ref name=Wassarman1997><pubmed>9247335</pubmed></ref> <ref name=Waters2006><pubmed>16651541</pubmed></ref> <ref name=Bosse1997><pubmed>9486539</pubmed></ref> <ref name=Gaborit2012><pubmed>22992950</pubmed></ref> <ref name=Gholamalizadeh2019><pubmed>31538128</pubmed></ref> <ref name=de Araujo2020><pubmed>32035736</pubmed></ref> <ref name=Hirota2004><pubmed>15173589</pubmed></ref> <ref name=Chou2019><pubmed>29522720</pubmed></ref> <ref name=Porter1997><pubmed>9247336</pubmed></ref> <ref name=Yuan2000><pubmed>10706142</pubmed></ref> <ref name=Winslow2011><pubmed>21471965</pubmed></ref> <ref name=Sander2000><pubmed>11076772</pubmed></ref> {Winslow, 2011 #58} <ref name=Taylor2013><pubmed>24035389</pubmed></ref> <ref name=Broccoli1999><pubmed>10490025</pubmed></ref> <ref name=Vincent2014><pubmed>25293953</pubmed></ref> <ref name=Patat2013><pubmed>24167467</pubmed></ref> <ref name=Chassaing2012><pubmed>22577225</pubmed></ref> <ref name=Acampora1995><pubmed>7588062</pubmed></ref> <ref name=Torres1996><pubmed>8951055</pubmed></ref> <ref name=Patek2003><pubmed>12915483</pubmed></ref> <ref name=Tolson2014><pubmed>24773343</pubmed></ref> <ref name=Holder2000><pubmed>10587584</pubmed></ref> <ref name=Michaud2001><pubmed>11448938</pubmed></ref> <ref name=Goshu2002><pubmed>12024028</pubmed></ref> <ref name=Dahmane1995><pubmed>7568099</pubmed></ref> <ref name=Goshu2004><pubmed>14988428</pubmed></ref> <ref name=Wallis1999><pubmed>10369266</pubmed></ref> <ref name=Diacou2018><pubmed>30485816</pubmed></ref> <ref name=Lagutin2003><pubmed>12569128</pubmed></ref> <ref name=Liu2010><pubmed>20890044</pubmed></ref> <ref name=Burghardt2013><pubmed>23990680</pubmed></ref> <ref name=Asbreuk2002><pubmed>12498783</pubmed></ref> <ref name=Hatini1996><pubmed>8666231</pubmed></ref> <ref name=Xuan1995><pubmed>7605629</pubmed></ref> <ref name=Guo2007><pubmed>17166916</pubmed></ref> <ref name=Adams2000><pubmed>10751174</pubmed></ref>
 
 [[中脳/後脳境界]]([[midbrain-hindbrain boundary]], [[MHB]]または[[isthmic organiser]], [[IsO]])からは、FGF8や[[Wnt1]]などの分泌因子が分泌され、[[中脳]]や[[小脳]]に発現する転写因子を発現誘導する。MHBにおけるfgf8やwnt1の発現には転写因子[[Lmx1b]]が必要だと言われている<ref name=Guo2007><pubmed>17166916</pubmed></ref> 。FGF8はMHBの前後である中脳と後脳に発現する遺伝子を誘導する一方、Wnt1は細胞の増殖などに関与していると考えられている <ref name=Harada2016><pubmed>27273073</pubmed></ref>('''図1'''、'''2''') 。
 
== 脳の各領域に発現する転写因子 ==
 
 上述の2次オーガナイザー領域から分泌されたFGFやWntなどのシグナル因子により、転写因子が脳の特定の領域に発現し、各領域を特徴付けている('''図2''')。これらの転写因子の[[ノックアウトマウス]]は、一部は脳領域の一部を欠損することになり、脳の発達または成長に大きな影響を及ぼすために胚性致死となることが多い。一方、これらの転写因子は、免疫細胞、内分泌系、腎臓や精巣、肺などにも発現する。したがって、各遺伝子の単純なノックアウトでは、表現型が脳以外の領域にも見られるものがある(Irx3、[[Nkx2.1]]、[[Sim-2]]、[[Lmx1b]]、[[BF2]]など)。これらの例では、脳領域における機能を明らかにするために、脳特異的なノックアウト(条件付き遺伝子ノックアウト:コンディショナルノックアウト)が作成され、解析が進んでいる('''表''')。また一部の転写因子については、その変異がヒトの脳疾患や精神疾患を引き起こすと報告されている('''表''')。
 
{| class="wikitable"
|+表. 脳で領域特異的に発現する転写因子の性質・機能と、その変異がヒトにもたらす疾患
! 転写因子 遺伝子名 !! 転写因子としてのクラス !! 脳の発生期における発現領域 !! 変異マウスの表現型 !! ヒト疾患との関連 !! 文献
|-
! [[ARX]] ([[Aristaless-related Homeobox]])
| [[ホメオボックス型]] || 終脳(背側)、前脳(視床) || 新生仔死亡(マウスの系統による):脳細胞の増殖抑制により、前脳が矮小化。脳領域のみのコンディショナルノックアウトでは、腹側脳領域の異常拡大。||  精神遅滞、てんかん、など ||<ref name=Bienvenu2002><pubmed>11971879</pubmed></ref><ref name=Kitamura2002><pubmed>12379852</pubmed></ref><ref name=Collombat2003><pubmed>14561778</pubmed></ref><ref name=Lim2019><pubmed>30659230</pubmed></ref><ref name=Friocourt2008><pubmed>18509041</pubmed></ref>  
|-
! [[Dlx2]] ([[Distal-less homeobox 2]])
| ホメオボックス型 || 前脳(脳室帯、脳室下帯) || Dlx1/2のダブルノックアウトが新生仔死亡:終脳の神経分化が抑制され、グリア細胞が増加。[[網膜]]の[[神経節細胞]]層が[[アポトーシス]]を起こす。|| Dlx2遺伝子(2番染色体上)を含む領域が[[自閉症]]の発症と相関が高いことが示唆されている ||<ref name=Qiu1995><pubmed>7590232</pubmed></ref><ref name=deMelo2005><pubmed>15604100</pubmed></ref><ref name=Liu2009><pubmed>18728693</pubmed></ref><ref name=Petryniak2007><pubmed>17678855</pubmed></ref>  
|-
! [[Emx1]] ([[Empty Spiracles Homeobox 1]])
| ホメオボックス型 || 前脳 || 生存可能:[[脳梁]]([[corpus callosum]])欠損 || [[カルマン症候群]]([[Kallmann syndrome]]:[[嗅覚]]低下と性腺機能低下)への関与が示唆されている||<ref name=Yoshida1997><pubmed>9006071</pubmed></ref><ref name=Kim2010><pubmed>20887964</pubmed></ref><ref name=Cecchi2000><pubmed>10906797</pubmed></ref><ref name=Gulisano1996><pubmed>8743751</pubmed></ref>  
|-
! [[Emx2]] ([[Empty Spiracles Homeobox 2]])
| ホメオボックス型 || 前脳 || 皮質領域の矮小化 || [[裂脳症]]([[schizencephaly]]) ||<ref name=Hamasaki2004><pubmed>15294144</pubmed></ref><ref name=Brunelli1996><pubmed>8528262</pubmed></ref><ref name=Cecchi2000><pubmed>10906797</pubmed></ref><ref name=Gulisano1996><pubmed>8743751</pubmed></ref>
|-
! [[En-1]] ([[Engrailed homeobox-1]])
| ホメオボックス型 || 中脳と小脳(R1) || 胚性致死:[[視蓋]]と小脳の発生不全 || [[パーキンソン病]] ||<ref name=Wurst1994><pubmed>7925010</pubmed></ref><ref name=Rekaik2015><pubmed>26459030</pubmed></ref><ref name=Kouwenhoven2016><pubmed>26879466</pubmed></ref>  
|-
! [[En-2]] ([[Engrailed homeobox-2]])
| ホメオボックス型 || 中脳、小脳 || 生存可能:神経行動学的、神経化学的異常 || [[自閉症スペクトラム障害]]に関与すると示唆されている
||<ref name=Cheh2006><pubmed>16935268</pubmed></ref><ref name=Benayed2005><pubmed>16252243</pubmed></ref><ref name=Genestine2015><pubmed>26220976</pubmed></ref>  
|-
! [[FEZ]]/[[FEZF1]]/[[Znf312b]] ([[Forebrain Embryonic Zinc-finger 1]])
| [[C2H2-type zincフィンガー]]
| 嗅球、前脳、[[外套層]] || FEZF2とのダブルノックアウトにより、視床、大脳の発生が停止
| カルマン症候群(Kallmann syndrome):嗅覚低下と性腺機能低下
| <ref name=Hirata2006><pubmed>16971467</pubmed></ref>   
|-
! [[FoxD1]]/[[BF2]] ([[Brain Factor-2]])
| [[Winged-Helix型]] || 前脳 || 新生仔死亡:腎臓の間葉系間質細胞の発生に必要||胚発生期では、[[視床下部]]前部の神経前駆細胞の分化が抑制される||<ref name=Hatini1996><pubmed>8666231</pubmed></ref><ref name=Newman2018><pubmed> 29679559</pubmed></ref>
|-
! [[FoxG1]]/[[BF-1]] ([[Brain Factor-1]])
| Winged-Helix型 || 終脳 || 新生仔死亡:終脳の矮小化 || Rett症候群 ||<ref name=Xuan1995><pubmed>7605629</pubmed></ref> 
|-
! [[Gbx2]] ([[Gastrulation Brain Homeobox 2]])
| ホメオボックス型 || 中脳、後脳(R1-R3) || R3領域が矮小化 || 大腸癌(Colon Small Cell Carcinoma)、[[Optiz-G/BBB Syndrome]](オピッツ症候群:脳、顔面、心臓、生殖器などの正中部形成不全) ||<ref name=Wassarman1997><pubmed>9247335</pubmed></ref><ref name=Waters2006><pubmed>16651541</pubmed></ref>  
|-
! [[Irx3]] ([[Iroquois homeobox 3]])
| ホメオボックス型 || 中脳、[[視蓋]]前域、[[視床]] || [[Irx5]]とのダブルノックアウトで心臓の一部(流出部)の形成異常が見られている || 肥満への関与が示唆されている ||<ref name=Bosse1997><pubmed>9486539</pubmed></ref><ref name=Gaborit2012><pubmed>22992950</pubmed></ref><ref name=Gholamalizadeh2019><pubmed>31538128</pubmed></ref><ref name=deAraujo2020><pubmed>32035736</pubmed></ref>  
|-
! [[Lhx2]] ([[LIM/homeobox transcription factor 2]])
| [[LIMホメオボックス型]] || 前脳 || 眼・前脳の発生、[[嗅神経細胞]]の分化異常 || (報告なし) ||<ref name=Hirota2004><pubmed>15173589</pubmed></ref><ref name=Chou2019><pubmed>29522720</pubmed></ref><ref name=Porter1997><pubmed>9247336</pubmed></ref>  
|-
! [[Lmx1b]]
| LIMホメオボックス型 || 中脳、視蓋前域、視床 || [[Isthmic Organiser]]の形成が阻害される。分化した[[糸球体上皮細胞]](podocyte)の消滅|| [[ネイル・パテラ症候群]]([[爪膝蓋骨症候群]]:爪の変形や腎臓障害など) ||<ref name=Burghardt2013><pubmed>23990680</pubmed></ref><ref name=Asbreuk2002><pubmed>12498783</pubmed></ref><ref name=Adams2000><pubmed>10751174</pubmed></ref><ref name=Guo2007><pubmed>17166916</pubmed></ref>  
|-
! [[Nkx2.1]]
| ホメオボックス型 || 視床下部 || 新生仔死亡:呼吸器官と肺の形成異常。視床下部における[[メラノコルチン]]産生([[Pomc]]陽性)細胞の減少"
| 肺腺癌の重篤化に関わっている ||<ref name=Yuan2000><pubmed>10706142</pubmed></ref><ref name=Winslow2011><pubmed>21471965</pubmed></ref><ref><pubmed>30886014</pubmed></ref>
|-
! [[Nkx6.1]]
| ホメオボックス型 || 中脳底板 || [[膵臓]]のベータ細胞が減少 || Nkx6.1の強制発現ががん細胞の浸潤を防ぐ効果があると報告されている ||<ref name=Sander2000><pubmed>11076772</pubmed></ref><ref name=Taylor2013><pubmed>24035389</pubmed></ref>  
|-
! [[Otx2]] ([[Orthodenticle homeobox 2]])
| ホメオボックス型 || 前脳、中脳 || 胚性致死:前脳、中脳欠損 || 小眼球、網膜変性、複合[[下垂体ホルモン欠損症]] ||<ref name=Broccoli1999><pubmed>10490025</pubmed></ref><ref name=Vincent2014><pubmed>25293953</pubmed></ref><ref name=Patat2013><pubmed>24167467</pubmed></ref><ref name=Chassaing2012><pubmed>22577225</pubmed></ref><ref name=Acampora1995><pubmed>7588062</pubmed></ref>  
|-
! [[Pax2]] ([[Paired box gene 2]])
| [[paired box]] || 中脳、小脳領域、発生途上の眼、耳 || 耳の形成異常、視神経投射異常 ||腎細胞においてPax2の恒常的な発現が糸球体硬化(glomerulosclerosis)を引き起こす"||<ref name=Torres1996><pubmed>8951055</pubmed></ref><ref name=Patek2003><pubmed>12915483</pubmed></ref>  
|-
! [[Sim-1]] ([[Single-minded homolog 1]])
| [[bHLH-PASドメイン]] || 視床下部 || 新生仔死亡:[[視索上核]](supraoptic)と[[視床下部室傍核]](paraventricular)の形成不全 || 食欲過剰による肥満 ||<ref name=Tolson2014><pubmed>24773343</pubmed></ref><ref name=Holder2000><pubmed>10587584</pubmed></ref><ref name=Michaud2001><pubmed>11448938</pubmed></ref>  
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! [[Sim-2]] ([[Single-minded homolog 2]])
| bHLH-PASドメイン || 視床下部前部 || 新生仔死亡:肺機能不全 || Sim2遺伝子の増幅により[[ダウン症]]が引き起こされると示唆されている ||<ref name=Goshu2002><pubmed>12024028</pubmed></ref><ref name=Dahmane1995><pubmed>7568099</pubmed></ref><ref name=Goshu2004><pubmed>14988428</pubmed></ref>  
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! [[Six3]] ([[Sine Oculis Homeobox 3]])
| ホメオボックス型 || 発生初期には神経板、眼球、眼杯、中期以降は眼、耳、中脳、視蓋前側、ZLI(zona limitans intrathalamica)、[[視床外腹側核]](rostral ventral thalamus) || 眼を含む前脳の前部を欠損 || 2型[[全前脳胞症]](Holoprosencephaly) ||<ref name=Wallis1999><pubmed>10369266</pubmed></ref><ref name=Diacou2018><pubmed>30485816</pubmed></ref><ref name=Lagutin2003><pubmed>12569128</pubmed></ref><ref name=Liu2010><pubmed>20890044</pubmed></ref>  
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[https://www.omim.org OMIM(Online Mendelian Inheritance in Man)]や[https://ghr.nlm.nih.gov NIH Genetics Home Reference]を参考に作成。
 
== 関連項目 ==
* [[前後軸]]
* [[オーガナイザー]]
==参考文献==
<references />

2020年7月18日 (土) 23:16時点における版

笹井 紀明
奈良先端科学技術大学院大学
DOI:10.14931/bsd.9270 原稿受付日:2020年7月18日 原稿完成日:20XX年X月X日
担当編集委員:花嶋 かりな(早稲田大学 教育・総合科学術院 先進理工学研究科)

Regionalization of the brain)

 脳領域に存在する細胞の種類は極めて多岐にわたるが、その多様化・領域化は、脳発生の初期から起こり始めている。この項では、領域化に関与する転写因子と、その発現を誘導するオーガナイザーや分泌因子を中心に、脊椎動物の脳が神経外胚葉から各細胞が分化し、組織内で領域化されるまでの過程を中心に記述する。  なお、本項目の内容は、別項目の「前後軸」(高橋)とも一部重複する。

初期胚におけるおおまかな領域の決定  脊椎動物では、原腸形成期に胚の背側に神経板が出現し、原腸形成期の後半からOtx2(Orthodenticle Homeobox 2)という転写因子が、頭部神経板領域(将来前脳・中脳領域に分化する部分)に発現する [1] 。Otx2はほかに胚盤葉上層、眼にも発現しており、それぞれに特異的なエンハンサー領域が存在する [2] 。一方、後脳には別の転写因子Gbx2が発現し [3] 、Otx2のエンハンサー領域の一部に結合してOtx2の発現領域を制限する [4]

2次オーガナイザー領域の形成  脳のさらなる領域化には、以下の3つのオーガナイザー領域(シグナリングセンターとして分泌因子を産生する領域)が存在し、FGFやShh、Wntなどの分泌因子を発現し、脳の領域を決定している。(なお以下のオーガナイザー領域の日本語名は、英語名を直訳した試訳である)。

2-1. Anterior Neural Ridge(ANR):前部神経端  この領域自体は非神経性細胞からなっているが、主にFGF8を発現しており、転写因子BF-1の発現を誘導する。BF-1はANRの機能を相補する(ANRがなくてもBF-1が発現したら終脳が正常に発生する)ため、BF-1はANRによって誘導される主要な因子である [5]

2-2. Zona limitans intrathalamica(ZLI)  この部分は、前脳から発生した大脳を2つの異なる性質を持つ領域に分ける領域である。大脳部分はプロソメアという区分に従って3つに分割することができるが、前部から順に、p3, p2, p1と分けられる領域のうち、p2とp3を分けるものがZLIである。ZLIが発現するのはソニック・ヘッジホッグ(Sonic Hedgehog; Shh)である[6] 。ZLIの前後では、Shhに対する細胞の反応性が異なり、ZLIよりも前部ではDlx2が、後部ではIrx3、Gbx2の発現が誘導される。

2-2. Isthmic Organiser(IsO):峡部オーガナイザー Midbrain-Hindbrain Boundary(MHB):中脳/後脳境界  この領域からは、FGF8やWnt1などの分泌因子が分泌され、中脳や小脳に発現する転写因子を発現誘導する。MHBにおけるFGF8やWnt1の発現には転写因子Lmx1bが必要だと言われている [7] 。FGF8はMHBの前後である中脳と後脳に発現する遺伝子を誘導する一方、Wnt1は細胞の増殖などに関与していると考えられている [8]

脳の各領域に発現する転写因子

 上述の2次オーガナイザー領域から分泌されたFGFやWntなどのシグナル因子により、転写因子が脳の特定の領域に発現し、各領域を特徴付けている。これらの転写因子のノックアウトマウスは、一部は脳領域の一部を欠損することになり、脳の発達または成長に大きな影響を及ぼすために胚性致死となる。一方、これらの転写因子は、免疫細胞、内分泌系、腎臓や精巣、肺などにも発現する。したがって、各遺伝子の単純なノックアウトでは、表現型が脳以外の領域にも見られるものがある(Irx3、Nkx2.1、Sim-2、Lmx1b、BF2など)。これらの例では、脳領域における機能を明らかにするために、脳特異的なノックアウト(条件付き遺伝子ノックアウト:コンディショナルノックアウト)が作成され、解析が進んでいる。

(図1)脳の領域化と、運命決定図。胚の背側からの模式図。Developmental Biology(ギルバート・バレッシ著)第11巻をもとに作成。 (図2)前後軸、背腹軸に沿った分泌因子、転写因子の一部の発現領域。[8] [9] [10] などを参考にして作成。 (図3)脳で領域特異的に発現する転写因子の性質・機能と、その変異がヒトにもたらす疾患。OMIM(Online Mendelian Inheritance in Man; https://www.omim.org)や NIH Genetics Home Reference(https://ghr.nlm.nih.gov)を参考に作成。 各参考論文 [11] [12] [13] [14] [15] [16] 引用エラー: 無効な <ref> タグです。数が多すぎるなどの理由で名前が無効です [17] [18] [19] [20] [21] [22] [23] [24] [25] [26] [27] [28] [29] [30] [31] [32] [33] [34] [35] [36] 引用エラー: 無効な <ref> タグです。数が多すぎるなどの理由で名前が無効です [37] [38] [39] [40] [41] [42] {Winslow, 2011 #58} [43] [44] [45] [46] [47] [1] [48] [49] [50] [51] [52] [53] [54] [55] [56] [57] [58] [59] [60] [61] [62] [63] [7] [64]

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