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脳回の空間的分布は、動物種ごとにある一定のパターンが存在するが、個体差もあり完全には一致しないことも多い<ref name=Welker1990></ref> 。異なる個体の間で、脳回のパターンの相関性が最も高いのは一卵性双生児の間である<ref name=Lohmann1999><pubmed>10554998</pubmed></ref> 。従って、脳回のパターンは遺伝的要因と発生過程における何らかの別の要因によって規定されると考えられている。 | 脳回の空間的分布は、動物種ごとにある一定のパターンが存在するが、個体差もあり完全には一致しないことも多い<ref name=Welker1990></ref> 。異なる個体の間で、脳回のパターンの相関性が最も高いのは一卵性双生児の間である<ref name=Lohmann1999><pubmed>10554998</pubmed></ref> 。従って、脳回のパターンは遺伝的要因と発生過程における何らかの別の要因によって規定されると考えられている。 | ||
<u>(編集部コメント:主な、脳溝、脳回については図などで名称をあげた上で、ご解説いただけないでしょうか。)</u> | |||
== 形成プロセス == | == 形成プロセス == |
2020年8月13日 (木) 13:14時点における版
河崎 洋志
金沢大学 医学系 脳神経医学教室
DOI:10.14931/bsd.9278 原稿受付日:2020年7月25日 原稿完成日:20XX年X月X日
担当編集委員:花嶋 かりな(早稲田大学 教育・総合科学術院 先進理工学研究科)
英:gyrus and sulcus (複数形:gyri and sulci) 独:Gyrus und Sulcus 仏:gyrus/circonvolution cérébrale et sulcus/sillon
哺乳類の大脳半球の表面には『しわ』すなわち凹凸が存在するが、その『しわ』の隆起部分を脳回といい、脳回の横にある陥凹部分を脳溝という。(編集部コメント:抄録は1段落程度でお願いいたします。)
構造的特徴
哺乳類の大脳半球の表面には『しわ』すなわち凹凸が存在するが(図1)、その『しわ』の隆起部分を脳回といい、また脳回の横にある陥凹部分を脳溝という(図2)。脳回を持つ脳をgyrencephalic、持たない脳をlissencephalicと表現する。脳回は一般的に、ヒト、サル、ウシ、ゾウ、クジラなどの大きな大脳を持つ動物種には見られるのに対して、ラットやマウスなどの大脳が小さい動物種は脳回を持たないことが多い[1] 。
大脳半球は、6層構造を持ち神経細胞が密集している灰白質と、主に神経線維やミエリンからなる白質で構成される。脳回を持つ大脳では灰白質の6つの層はすべて弯曲している。一方、白質は灰白質との境界でのみ弯曲に対応し、白質の側脳室側は平滑であり弯曲は見られないという特徴がある。
脳回の空間的分布は、動物種ごとにある一定のパターンが存在するが、個体差もあり完全には一致しないことも多い[1] 。異なる個体の間で、脳回のパターンの相関性が最も高いのは一卵性双生児の間である[2] 。従って、脳回のパターンは遺伝的要因と発生過程における何らかの別の要因によって規定されると考えられている。
(編集部コメント:主な、脳溝、脳回については図などで名称をあげた上で、ご解説いただけないでしょうか。)
形成プロセス
(編集部コメント:形成プロセスと形成機構があるのは妙なような気がします。)
発生過程において、まず早期に深い溝である一次脳溝が作られ、その後に二次脳溝、三次脳溝の順に作られていく。ヒトよりも単純な脳回のパターンを有する動物では一次脳溝のみが発達しており、異なる動物個体間でも一次脳溝の位置は保存され一定である傾向がある[1] 。二次脳溝の位置は必ずしも一定ではなく、高次な脳溝の位置はさらに多様に見えることから遺伝的な影響は限定的であると考えられる。従って、大脳皮質の一次脳溝のパターンは遺伝的要因により規定されているが、高次になれば遺伝的要因の関与は少ないと考えられる。
脳回異常疾患
正常よりも多数の脳回がある大脳の状態は多小脳回症(polymicrogyria)、また大脳表面の隆起がなくなり平らな状態は滑脳症(lissencephaly)と言われ(図3)、いずれも重篤な脳機能障害を呈する[3] 。また自閉症や統合失調症でも脳回異常が報告されている。
形成機構
脳回の形成機構として様々な仮説が提唱されている。限られた容積の頭蓋のなかで大脳皮質が拡大したために物理的な圧が生じて脳回ができたとの仮説、外側脳室下帯と呼ばれる神経前駆細胞層が脳回形成に重要であるとの仮説、近隣の大脳皮質領域間の線維連絡が生み出す張力が脳回を作り出すとの仮説、大脳の表面と深部との比率の差が脳回形成につながるとの仮説などである[4][5][6][7] 。
これまでに滑脳症の原因遺伝子の解析から、脳回形成機構の一端が明らかになっている。1型滑脳症の原因遺伝子は複数判明しており、微小管結合タンパク質DCX, 細胞外分泌因子リーリン、リン酸化酵素CDK5などがその代表である。これらの遺伝子機能の解析から、神経細胞の移動が脳回形成に必須であると考えられている。このように脳回異常疾患の原因として報告されている遺伝子などは脳回形成に関わる可能性が高いと考えられており、フェレットなどの大脳に脳回を持つ動物を用いた実験的検証が進められている[5][8] 。実際にナトリウムチャネルSCN3A、転写因子Tbr2、Cdk5、線維芽細胞増殖因子(FGF)シグナル、ソニックヘッジホッグ(sonic hedgehog)シグナルなどが脳回形成に関わると報告されている[9][10][11][12] 。
参考文献
- ↑ 1.0 1.1 1.2 Welker W. (1990).
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In: Jones EG, Peters A, editors. Cereb Cortex. 8B. Boston, MA: Springer; pp. 3-136. - ↑
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フェレットを用いた大脳の脳回形成の分子機構解析
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