「精神疾患の診断・統計マニュアル (DSM)」の版間の差分

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==DSM-Ⅳ==
==DSM-Ⅳ==
 DSM-Ⅳは、DSM-Ⅲのシステムを基本的に踏襲した。保守的な改訂に留まった理由は、大きな改訂により、研究や臨床の実践の継続性に支障を来すことを考慮したためだった<ref name=First2010><pubmed>21070696</pubmed></ref>12)。改定にあたり、3段階からなる実証的根拠の包括的レビューがなされた。すなわち、1) 出版された文献の系統的レビュー、2) それまでに収集されたデータの再分析、3) 問題点を絞った広範な実地試行である<ref name=Association.American Psychiatric Association. Diagnostic and statistical manual of mental disorders (4th ed.). American Psychiatric Association, 1994</pubmed></ref>13)。この厳密な過程を経て、診断名数がDSM-Ⅲの265から374へと増加した。これはDSM-Ⅲの診断名がさらに細分化されたためである。より精緻な分類が可能となったが、一方で、重複診断の多さ(カテゴリー間の重複)などを理由に、カテゴリカルな疾患分類の限界を指摘する意見も見られ始めた。カテゴリカルな分類の限界については次章で述べる。
 DSM-Ⅳは、DSM-Ⅲのシステムを基本的に踏襲した。保守的な改訂に留まった理由は、大きな改訂により、研究や臨床の実践の継続性に支障を来すことを考慮したためだった<ref name=First2010><pubmed>21070696</pubmed></ref>12)。改定にあたり、3段階からなる実証的根拠の包括的レビューがなされた。すなわち、1) 出版された文献の系統的レビュー、2) それまでに収集されたデータの再分析、3) 問題点を絞った広範な実地試行である<ref name=Association1994>'''American Psychiatric Association (1994).'''<br>Diagnostic and statistical manual of mental disorders (4th ed.). American Psychiatric Association</pubmed></ref>13)。この厳密な過程を経て、診断名数がDSM-Ⅲの265から374へと増加した。これはDSM-Ⅲの診断名がさらに細分化されたためである。より精緻な分類が可能となったが、一方で、重複診断の多さ(カテゴリー間の重複)などを理由に、カテゴリカルな疾患分類の限界を指摘する意見も見られ始めた。カテゴリカルな分類の限界については次章で述べる。


 2000年には、DSM-Ⅳのテキスト改訂版であるDSM-Ⅳ-TRが出版され、DSM-Ⅳにおける誤りの修正、新たな研究結果に基づく情報の刷新、テキストの追加による教育的価値のさらなる向上などがなされた。
 2000年には、DSM-Ⅳのテキスト改訂版であるDSM-Ⅳ-TRが出版され、DSM-Ⅳにおける誤りの修正、新たな研究結果に基づく情報の刷新、テキストの追加による教育的価値のさらなる向上などがなされた。