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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0132108 中條 浩一]、[http://researchmap.jp/yoshihirokubo 久保 義弘]</font><br>
<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0132108 中條 浩一]、[http://researchmap.jp/yoshihirokubo 久保 義弘]</font><br>
''自然科学研究機構 生理学研究所''<br>
''自然科学研究機構 生理学研究所''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2014年12月16日 原稿完成日:2014年月日<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2014年12月16日 原稿完成日:2014年12月19日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
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 チャネル病には先天的な原因によって起こるものと、[[免疫]]疾患や薬剤誘発性等、後天的な原因によるものとに大別される。先天的とはすなわち遺伝子変異によるものであり、主に点突然変異によるアミノ酸置換やフレームシフトによるトランケーション、CAGリピートの増加などによって起こる。それらの結果として、単にイオンチャネルとしての機能が欠損するもの、すなわちイオン電流がなくなる、あるいは電流量が減少してしまうこともあれば、イオンチャネルの生物物理学的な性質が変わってしまっている場合もある。前者としては、イオンを通す[[イオン選択性フィルター]]の性質が変わることでイオンが通りにくくなってしまったり、あるいは[[細胞膜]]への輸送(トラフィッキング)への影響で、細胞膜上で機能しているイオンチャネルの量(発現量)が減ってしまったりするケースが考えられる。後者としては、例えば電位依存性のイオンチャネルの場合、その活性化の電位依存性が変化すること、あるいは不活性化するイオンチャネルにおいて不活性化の性質が変化することなどが考えられる。
 チャネル病には先天的な原因によって起こるものと、[[免疫]]疾患や薬剤誘発性等、後天的な原因によるものとに大別される。先天的とはすなわち遺伝子変異によるものであり、主に点突然変異によるアミノ酸置換やフレームシフトによるトランケーション、CAGリピートの増加などによって起こる。それらの結果として、単にイオンチャネルとしての機能が欠損するもの、すなわちイオン電流がなくなる、あるいは電流量が減少してしまうこともあれば、イオンチャネルの生物物理学的な性質が変わってしまっている場合もある。前者としては、イオンを通す[[イオン選択性フィルター]]の性質が変わることでイオンが通りにくくなってしまったり、あるいは[[細胞膜]]への輸送(トラフィッキング)への影響で、細胞膜上で機能しているイオンチャネルの量(発現量)が減ってしまったりするケースが考えられる。後者としては、例えば電位依存性のイオンチャネルの場合、その活性化の電位依存性が変化すること、あるいは不活性化するイオンチャネルにおいて不活性化の性質が変化することなどが考えられる。


 疾患の原因である変異が同定できれば、[[哺乳類]][[培養細胞]]等の発現系に変異を導入したイオンチャネルを発現させ、電気生理学的手法もしくは細胞生物学的手法により機能解析をすることで、変異によって生じたイオンチャネル機能もしくは発現量の変化と、それによる疾患の発生メカニズムを明らかにすることができる。疾患の治療につなげるためには、このようなイオンチャネル特有の機能解析に基づいた原因の理解が不可欠である。さらに近年はチャネル病の患者から作成された[[iPS細胞]]を用いた機能解析も始まっており、この流れは今後ますます加速していくと思われる<ref name=ref2><pubmed>21307850</pubmed></ref><ref><pubmed>23277474</pubmed></ref>。
 疾患の原因である変異が同定できれば、[[哺乳類]][[培養細胞]]等の発現系に変異を導入したイオンチャネルを発現させ、電気生理学的手法もしくは細胞生物学的手法により機能解析をすることで、変異によって生じたイオンチャネル機能もしくは発現量の変化と、それによる疾患の発生メカニズムを明らかにすることができる。疾患の治療につなげるためには、このようなイオンチャネル特有の機能解析に基づいた原因の理解が不可欠である。それにより、例えばチャネル活性を制御するような薬(アゴニスト、アンタゴニスト)を使用する、といった方針が立つことになる。近年はチャネル病の患者から作成された[[iPS細胞]]を用いた機能解析も始まっており、この流れは今後ますます加速していくと思われる<ref name=ref2><pubmed>21307850</pubmed></ref><ref><pubmed>23277474</pubmed></ref>。


 以下、興奮性細胞である神経系、心筋、骨格筋のチャネル病を中心に代表的なチャネル病の例を挙げる。しかしながら、イオンチャネルの遺伝子数と発現部位の多様性を考えれば、下記の例以外にも多くのチャネル病が存在すると考えられ、ゲノムワイド関連解析などにより今後も続々と発見・同定されていくのではないかと思われる。最近の総説として、神経系のチャネル病については2010年6月1日号にJournal of Physiologyが、チャネル病全般については2010年7月号にPflügers Archivがそれぞれ特集号を出版しているので、そちらも参照されたい<ref><pubmed>20516349</pubmed></ref><ref><pubmed>20238123</pubmed></ref>。
 以下、興奮性細胞である神経系、心筋、骨格筋のチャネル病を中心に代表的なチャネル病の例を挙げる。しかしながら、イオンチャネルの遺伝子数と発現部位の多様性を考えれば、下記の例以外にも多くのチャネル病が存在すると考えられ、ゲノムワイド関連解析などにより今後も続々と発見・同定されていくのではないかと思われる。最近の総説として、神経系のチャネル病については2010年6月1日号にJournal of Physiologyが、チャネル病全般については2010年7月号にPflügers Archivがそれぞれ特集号を出版しているので、そちらも参照されたい<ref><pubmed>20516349</pubmed></ref><ref><pubmed>20238123</pubmed></ref>。
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=== 電位依存性ナトリウムチャネルの異常 ===
=== 電位依存性ナトリウムチャネルの異常 ===
 電位依存性ナトリウムチャネルが原因となる中枢神経系の異常としては、[[熱性けいれんプラス]] (GEFS+; generalized epilepsy with febrile seizures plus)とよばれる家族性の[[てんかん]]が知られているが、これは電位依存性ナトリウムチャネル遺伝子のうちの[[NaV1.1]] ([[SCNA1]]),[[NaV1.2]] ([[SCNA2]])、あるいはその修飾サブユニットである[[Naβ1]] ([[SCNB1]])に異常が生じることで引き起こされる<ref><pubmed>9697698</pubmed></ref><ref><pubmed>10742094</pubmed></ref>。電位依存性ナトリウムチャネルにおいては、その[[不活性化]]と呼ばれる性質が神経細胞の興奮性の制御に重要である。この疾患においては、アミノ酸変異によって不活性化の性質が不完全になっており、ナトリウムチャネルが開きやすい状態にあることが神経細胞の過興奮につながり、てんかん発作を引き起こすと考えられる。またより重度な[[乳児重症ミオクロニーてんかん]]においても、NaV1.1がその原因遺伝子であることが判明している<ref><pubmed>11359211</pubmed></ref>。この疾患においては、てんかんに加えて自閉症に似た症状や精神発達障害、運動失調なども伴う。さらに最近のゲノムワイド関連解析により、Nav1.2が自閉症に関連する遺伝子として同定されている<ref name=ref3 />。
 電位依存性ナトリウムチャネルが原因となる中枢神経系の異常としては、[[熱性けいれんプラス]] (GEFS+; generalized epilepsy with febrile seizures plus)とよばれる家族性の[[てんかん]]が知られているが、これは電位依存性ナトリウムチャネル遺伝子のうちの[[NaV1.1]] ([[SCN1A]]),[[NaV1.2]] ([[SCN2A]])、あるいはその修飾サブユニットである[[Naβ1]] ([[SCN1B]])に異常が生じることで引き起こされる<ref><pubmed>9697698</pubmed></ref><ref><pubmed>10742094</pubmed></ref>。電位依存性ナトリウムチャネルにおいては、その[[不活性化]]と呼ばれる性質が神経細胞の興奮性の制御に重要である。この疾患においては、アミノ酸変異によって不活性化の性質が不完全になっており、ナトリウムチャネルが開きやすい状態にあることが神経細胞の過興奮につながり、てんかん発作を引き起こすと考えられる。またより重度な[[乳児重症ミオクロニーてんかん]]においても、NaV1.1がその原因遺伝子であることが判明している<ref><pubmed>11359211</pubmed></ref>。この疾患においては、てんかんに加えて自閉症に似た症状や精神発達障害、運動失調なども伴う。さらに最近のゲノムワイド関連解析により、Nav1.2が自閉症に関連する遺伝子として同定されている<ref name=ref3 />。


=== 電位依存性カリウムチャネルの異常 ===
=== 電位依存性カリウムチャネルの異常 ===
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[[Image:チャネル病2.png|300px|thumb|right|'''図2. KCNQ1サブユニット上のLQT1またはJLNを起こすアミノ酸(マゼンタ)とSQT2を起こすアミノ酸(黄色)'''<br>ここでは1分子のみを表示している。構造はKCNQ1の開状態モデルを使用<ref><pubmed>17999538</pubmed></ref>。]]
[[Image:チャネル病2.png|300px|thumb|right|'''図2. KCNQ1サブユニット上のLQT1またはJLNを起こすアミノ酸(マゼンタ)とSQT2を起こすアミノ酸(黄色)'''<br>ここでは1分子のみを表示している。構造はKCNQ1の開状態モデルを使用<ref><pubmed>17999538</pubmed></ref>。]]


 心臓の収縮と弛緩は心筋細胞の活動電位によって制御されている。そしてその活動電位はやはり、各種のイオンチャネルによって制御されている。たとえば心室筋細胞の活動電位は電位依存性ナトリウムチャネル、電位依存性カルシウムチャネルおよび数種類のカリウムチャネルによって形成されている。ナトリウムチャネルあるいはカルシウムチャネルの機能亢進、あるいはカリウムチャネルの機能抑制が起こると、活動電位の延長が起こり、心電図の[[QT時間]]が延長する[[QT延長症候群]]となる(図1、表1)。これは[[不整脈]]の一種であり、[[心室細動]]を誘発するなど、最悪[[突然死]]につながる可能性もある。QT延長症候群と比べると頻度は低いが、カリウムチャネルの機能亢進によって活動電位が短縮し、心電図のQT時間が短縮する[[QT短縮症候群]]も心臓のチャネル病として知られている(表2)。
 心臓の収縮と弛緩は心筋細胞の活動電位によって制御されている。そしてその活動電位はやはり、各種のイオンチャネルによって制御されている。たとえば心室筋細胞の活動電位は電位依存性ナトリウムチャネル、電位依存性カルシウムチャネルおよび数種類のカリウムチャネルによって形成されている。ナトリウムチャネルあるいはカルシウムチャネルの機能亢進、あるいはカリウムチャネルの機能抑制が起こると、活動電位の延長が起こり、心電図の[[QT時間]]が延長する[[QT延長症候群]]となる(図1)。これは[[不整脈]]の一種であり、[[心室細動]]を誘発するなど、最悪[[突然死]]につながる可能性もある。QT延長症候群と比べると頻度は低いが、カリウムチャネルの機能亢進によって活動電位が短縮し、心電図のQT時間が短縮する[[QT短縮症候群]]も心臓のチャネル病として知られている。


===電位依存性ナトリウムチャネルの異常===
===電位依存性ナトリウムチャネルの異常===
 ナトリウムチャネルが原因のQT延長症候群は3型 (LQT3)であり、[[NaV1.5]] ([[SCN5A]])がその原因遺伝子である。LQT3ではナトリウム電流の不活性化が不完全になり、持続性の電流が多くなることで脱分極の状態を長くする。一方、同じNaV1.5が原因である[[ブルガダ症候群]]では、逆にNaV1.5の機能が低下する変異が原因である。活動電位が短縮し、心内膜から心外膜にわたって再分極の状態がばらつくことで、心室細動を起こしやすい状態になっていると考えられる。
 QT延長症候群には原因遺伝子の違いにより、これまで13種類の亜型(LQT1~LQT13)が報告されている(表1)。そのうちナトリウムチャネルが原因のQT延長症候群は3型 (LQT3)であり、[[NaV1.5]] ([[SCN5A]])がその原因遺伝子である。LQT3ではナトリウム電流の不活性化が不完全になり、持続性の電流が多くなることで脱分極の状態を長くする。一方、同じNaV1.5が原因である[[ブルガダ症候群]]では、逆にNaV1.5の機能が低下する変異が原因である。活動電位が短縮し、心内膜から心外膜にわたって再分極の状態がばらつくことで、心室細動を起こしやすい状態になっていると考えられる。


 その他ナトリウムチャネル関連タンパク質として、ナトリウムチャネルを細胞膜の特定の場所にアンカーする[[アンキリンB]] (LQT4の原因遺伝子)、ナトリウムチャネルの[[ナトリウムチャネル#βサブユニット|βサブユニット]] [[ナトリウムチャネル#βサブユニット|SCN4B]] (LQT10の原因遺伝子)がQT延長症候群の原因遺伝子として同定されている。
 その他ナトリウムチャネル関連タンパク質として、ナトリウムチャネルを細胞膜の特定の場所にアンカーする[[アンキリンB]] (LQT4)、ナトリウムチャネルの[[ナトリウムチャネル#βサブユニット|βサブユニット]] [[ナトリウムチャネル#βサブユニット|SCN4B]] (LQT10)がQT延長症候群の原因遺伝子として同定されている。


===電位依存性カルシウムチャネルの異常===
===電位依存性カルシウムチャネルの異常===
 カルシウムチャネルが原因のQT延長症候群は[[L型カルシウムチャネル]]の一種である[[CaV1.2]] ([[CACNA1C]])の機能亢進が原因のLQT8である。CaV1.2のG406R変異は電位依存性不活性化を著しく弱くし、そのためカルシウム電流が亢進する。この場合、QT延長のみならず[[合指]]等の形成不全、[[免疫不全]]、[[自閉症]]などさまざまな症状を呈し、[[Timothy症候群]]と名付けられている<ref name=ref2 /><ref><pubmed>15454078</pubmed></ref>。このことは、CaV1.2カルシウムチャネルが、心臓のみならず、体中のさまざまな部位、そして発生過程も含めたさまざまなステージで重要な働きを担っていることを示している。
 カルシウムチャネルが原因のQT延長症候群は[[L型カルシウムチャネル]]の一種である[[CaV1.2]] ([[CACNA1C]])の機能亢進が原因であり、亜型としては8型 (LQT8)に相当する。CaV1.2のG406R変異は電位依存性不活性化を著しく弱くし、そのためカルシウム電流が亢進する。この場合、QT延長のみならず[[合指]]等の形成不全、[[免疫不全]]、[[自閉症]]などさまざまな症状を呈し、[[Timothy症候群]]と名付けられている<ref name=ref2 /><ref><pubmed>15454078</pubmed></ref>。このことは、CaV1.2カルシウムチャネルが、心臓のみならず、体中のさまざまな部位、そして発生過程も含めたさまざまなステージで重要な働きを担っていることを示している。


===電位依存性カリウムチャネルの異常===
===電位依存性カリウムチャネルの異常===
 前述のとおり、心臓では複数種類のカリウムチャネルが心臓の興奮性制御に寄与しており、QT延長症候群にも複数種類のカリウムチャネルが原因遺伝子として報告されている。先天性QT延長症候群の中でもっとも高い頻度で報告されているのは、[[KCNQ1]]チャネルが原因のLQT1と、[[KCNH2]] ([[hERG]])チャネルが原因のLQT2である<ref><pubmed>7736582</pubmed></ref><ref><pubmed>7889573</pubmed></ref><ref><pubmed>8528244</pubmed></ref><ref><pubmed>8900282</pubmed></ref><ref><pubmed>8900283</pubmed></ref>。どちらも[[電位依存性カリウムチャネル|電位依存性カリウムチャネルαサブユニット]]をコードしており、両者でLQTとして遺伝子診断される患者全体の80%程度を占めている。それぞれのイオンチャネルからはこれまでに数十を超える変異部位が見つかっており、ほとんどどの部位に問題が生じても、疾患を生じうることがわかる(図2)。
 前述のとおり、心臓では複数種類のカリウムチャネルが心臓の興奮性制御に寄与しており、QT延長症候群にも複数種類のカリウムチャネルが原因遺伝子として報告されている。先天性QT延長症候群の中でもっとも高い頻度で報告されている亜型は、[[KCNQ1]]チャネルが原因のLQT1と、[[KCNH2]] ([[hERG]])チャネルが原因のLQT2である<ref><pubmed>7736582</pubmed></ref><ref><pubmed>7889573</pubmed></ref><ref><pubmed>8528244</pubmed></ref><ref><pubmed>8900282</pubmed></ref><ref><pubmed>8900283</pubmed></ref>。どちらも[[電位依存性カリウムチャネル|電位依存性カリウムチャネルαサブユニット]]をコードしており、両者でLQTとして遺伝子診断される患者全体の80%程度を占めている。それぞれのイオンチャネルからはこれまでに数十を超える変異部位が見つかっており、ほとんどどの部位に問題が生じても、疾患を生じうることがわかる(図2)。


 これらカリウムチャネルのβサブユニットである[[KCNE1]] (LQT5)、[[KCNE2]] (LQT6)、KCNQ1結合タンパク質である[[AKAP-9]] (LQT11)もQT延長症候群原因遺伝子である。これらLQTは[[常染色体優性遺伝]]であり、[[Romano-Ward症候群]]とも分類される。
 これらカリウムチャネルのβサブユニットである[[KCNE1]] (LQT5)、[[KCNE2]] (LQT6)、KCNQ1結合タンパク質である[[AKAP-9]] (LQT11)もQT延長症候群原因遺伝子である。これらLQTは[[常染色体優性遺伝]]であり、[[Romano-Ward症候群]]とも分類される。
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 [[内向き整流性カリウムチャネル]][[Kir2.1]] ([[KCNJ2]])もQT延長症候群の原因遺伝子(LQT7)であるが、さらに[[周期性四肢麻痺]]、形態異常などを併発し、[[Andersen症候群]]と呼ばれる。Timothy症候群と同様、Kir2.1チャネルが、できあがった機能に必要なだけではなく、発生過程・形態形成においても重要な役割を果たしていることを示している。
 [[内向き整流性カリウムチャネル]][[Kir2.1]] ([[KCNJ2]])もQT延長症候群の原因遺伝子(LQT7)であるが、さらに[[周期性四肢麻痺]]、形態異常などを併発し、[[Andersen症候群]]と呼ばれる。Timothy症候群と同様、Kir2.1チャネルが、できあがった機能に必要なだけではなく、発生過程・形態形成においても重要な役割を果たしていることを示している。


 hERGチャネル (SQT1)、KCNQ1チャネル (SQT2)、Kir2.1チャネル (SQT3)については、それぞれ変異による機能亢進でQT短縮症候群を起こすことも知られている(表2)。上述の通り、活動電位が短縮し、心電図のQT時間が短縮する不整脈の一種である。
 QT短縮症候群は、上述の通り活動電位が短縮し、心電図のQT時間が短縮する不整脈の一種である。QT短縮症候群にも原因遺伝子の違いにより、いくつか亜型(SQT1~SQT3)があることが知られている(表2)。それぞれ変異による機能亢進によってQT短縮症候群を起こすことが知られている。


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