「周期性四肢麻痺」の版間の差分

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 Cav1.1のαサブユニットをコードする''CACNA1S''遺伝子のヘテロ接合性変異による1型と、Nav1.4のαサブユニットをコードする''SCN4A''遺伝子のヘテロ接合性変異による2型とがある。両者の低カリウム性周期性四肢麻痺変異をもつチャネル機能・構造上の共通点として、いずれも[[チャネルの電位感受性ドメイン]](voltage sensing domain: VSD)内にあるセグメント4のアルギニンがほかのアミノ酸に変異することが注目されてきた('''図1、2''')。このセグメント4にあるアルギニンは、3アミノ酸ごとに並び、チャネルの電位感受性の中心的役割を担う。
 Cav1.1のαサブユニットをコードする''CACNA1S''遺伝子のヘテロ接合性変異による1型と、Nav1.4のαサブユニットをコードする''SCN4A''遺伝子のヘテロ接合性変異による2型とがある。両者の低カリウム性周期性四肢麻痺変異をもつチャネル機能・構造上の共通点として、いずれも[[チャネルの電位感受性ドメイン]](voltage sensing domain: VSD)内にあるセグメント4のアルギニンがほかのアミノ酸に変異することが注目されてきた('''図1、2''')。このセグメント4にあるアルギニンは、3アミノ酸ごとに並び、チャネルの電位感受性の中心的役割を担う。


 細胞物理学的手法を用いた実験により、低カリウム性周期性四肢麻痺変異をもつチャネルは、gating pore電流と呼ばれる電位依存性漏洩電流をもつことが証明され、低カリウム性周期性四肢麻痺の病態メカニズムの中心と考えられている<ref name=Sokolov2007><pubmed>17330043</pubmed></ref><ref name=Struyk2008><pubmed>18824591</pubmed></ref>。しかしながら、低カリウム性周期性四肢麻痺にみられる脱分極性麻痺を引き起こすにはgating pore電流自体が小さすぎることなどが指摘され、gating pore電流の発生から麻痺に至るメカニズムは未だ仮説段階である<ref name=Cannon2010><pubmed>20156847</pubmed></ref>。さらに、典型的低カリウム性周期性四肢麻痺を示す症例においてgating pore電流を欠く症例の報告<ref name=Kubota2020><pubmed>33005891</pubmed></ref>や、''CACNA1S''遺伝子と''SCN4A''遺伝子以外にも、[[リアノジンレセプター1型]]をコードする''[[RYR1]]''遺伝子内のヘテロ接合性変異<ref name=Matthews2018><pubmed>29298851</pubmed></ref>、[[Na+-K+-ATPase isoform2|Na<sup>+</sup>-K<sup>+</sup>-ATPase isoform2]]をコードする''[[ATP1A2]]''遺伝子内のヘテロ接合性変異<ref name=SampedroCastaneda2018><pubmed>30423015</pubmed></ref>、ミトコンドリアDNA内の''[[MT-ATP6]]/[[MT-ATP8|8]]''遺伝子のホモ接合性変異<ref name=Aure2013><pubmed>24153443</pubmed></ref>など、低カリウム性周期性四肢麻痺は複数の病態が混在している可能性が示唆されている。また、原因遺伝子に異常を認めず、内科的疾患の合併も認めない孤発性周期性四肢麻痺(SPP)においては、近年、アジアを中心として疾患感受性一塩基多型の報告があり、何らかの遺伝学的背景が発症に関わっていることが示唆される<ref name=Nakaza2020><pubmed>32234253</pubmed></ref>。
 細胞物理学的手法を用いた実験により、低カリウム性周期性四肢麻痺変異をもつチャネルは、gating pore電流と呼ばれる電位依存性漏洩電流をもつことが証明され、低カリウム性周期性四肢麻痺の病態メカニズムの中心と考えられている<ref name=Sokolov2007><pubmed>17330043</pubmed></ref><ref name=Struyk2008><pubmed>18824591</pubmed></ref>。しかしながら、低カリウム性周期性四肢麻痺にみられる脱分極性麻痺を引き起こすにはgating pore電流自体が小さすぎることなどが指摘され、gating pore電流の発生から麻痺に至るメカニズムは未だ仮説段階である<ref name=Cannon2010><pubmed>20156847</pubmed></ref>。さらに、典型的低カリウム性周期性四肢麻痺を示す症例においてgating pore電流を欠く症例の報告<ref name=Kubota2020><pubmed>33005891</pubmed></ref>や、''CACNA1S''遺伝子と''SCN4A''遺伝子以外にも、[[リアノジン受容体1型]]をコードする''[[RYR1]]''遺伝子内のヘテロ接合性変異<ref name=Matthews2018><pubmed>29298851</pubmed></ref>、[[Na+-K+-ATPase isoform2|Na<sup>+</sup>-K<sup>+</sup>-ATPase isoform2]]をコードする''[[ATP1A2]]''遺伝子内のヘテロ接合性変異<ref name=SampedroCastaneda2018><pubmed>30423015</pubmed></ref>、ミトコンドリアDNA内の''[[MT-ATP6]]/[[MT-ATP8|8]]''遺伝子のホモ接合性変異<ref name=Aure2013><pubmed>24153443</pubmed></ref>など、低カリウム性周期性四肢麻痺は複数の病態が混在している可能性が示唆されている。また、原因遺伝子に異常を認めず、内科的疾患の合併も認めない孤発性周期性四肢麻痺(SPP)においては、近年、アジアを中心として疾患感受性一塩基多型の報告があり、何らかの遺伝学的背景が発症に関わっていることが示唆される<ref name=Nakaza2020><pubmed>32234253</pubmed></ref>。


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