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学名:''Callithrix jacchus'' 英:common marmoset 独:Weißbüschelaffe 仏:ouistiti à toupets blancs, ouistiti commun, ouistiti sagouin | |||
{{box|text= コモンマーモセット(以下マーモセットと略す)は、ブラジル原産の霊長類である。成熟個体で体長25〜35cm、体重300- | {{box|text= コモンマーモセット(以下マーモセットと略す)は、ブラジル原産の霊長類である。成熟個体で体長25〜35cm、体重300-500gとヒトが扱いやすい大きさである。性成熟まで約1年半と短く、霊長類の中では非常に高い繁殖力を持つため、昨今実験動物として注目されている。特に、霊長類での初めての遺伝子改変動物の作製と継代(導入遺伝子の生殖系への伝達)が報告され、脳神経疾患モデルや脳機能解析などに遺伝子改変マーモセットが応用され始めている。脳は大脳皮質の拡大で生じた霊長類に特異的な機能を持ち、認知機能、社会的行動などの脳高次機能に関してヒトと類似しており、認知科学などの脳高次機能の研究や、ヒト神経疾患研究、特にパーキンソン病、脊髄損傷、多発性硬化症などの神経変性疾患などのモデルとして用いられている。}} | ||
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近年、脳科学や再生医療を中心にバイオメディカル研究でのマーモセットの使用が急増している<ref>'''伊藤豊志雄・森脇和郎'''<br>コモンマーモセットの歴史と展望-Biomedical Super Modelの期待<br>''実験医学''28(18):3029-3032(2010)</ref> <ref>'''谷岡功邦 編'''<br>マーモセットの飼育繁殖・実験手技・解剖組織<br>''アドスリー''(1996)</ref> <ref>'''谷岡功邦,野村達次 編'''<br>コモンマーモセットの特性と実験利用<br>''ソフトサイエンス社''(1989)</ref>。2009年には世界初となる霊長類での[[遺伝子改変動物]]の作製と継代(導入遺伝子の生殖系への伝達)が報告され、[[脳神経]]疾患モデルや脳機能解析などに遺伝子改変マーモセットが応用され始めている。 | 近年、脳科学や再生医療を中心にバイオメディカル研究でのマーモセットの使用が急増している<ref>'''伊藤豊志雄・森脇和郎'''<br>コモンマーモセットの歴史と展望-Biomedical Super Modelの期待<br>''実験医学''28(18):3029-3032(2010)</ref> <ref>'''谷岡功邦 編'''<br>マーモセットの飼育繁殖・実験手技・解剖組織<br>''アドスリー''(1996)</ref> <ref>'''谷岡功邦,野村達次 編'''<br>コモンマーモセットの特性と実験利用<br>''ソフトサイエンス社''(1989)</ref>。2009年には世界初となる霊長類での[[遺伝子改変動物]]の作製と継代(導入遺伝子の生殖系への伝達)が報告され、[[脳神経]]疾患モデルや脳機能解析などに遺伝子改変マーモセットが応用され始めている。 | ||
ヒトに近縁な真猿類であるマーモセットは実験結果のヒトへの外挿性が高い。代謝経路、生理学的、解剖学的特徴がヒトと類似しているため、古くから神経学、繁殖学、感染症の研究、行動学などに多く使われてきた。マーモセットは1970年前後に欧米で使用され始め、ヒトおよび[[チンパンジー]]以外では報告されなかった[[wj:A型肝炎|A型肝炎]]に対する感受性や[[wj:げっ歯類|げっ歯類]]や[[ | ヒトに近縁な真猿類であるマーモセットは実験結果のヒトへの外挿性が高い。代謝経路、生理学的、解剖学的特徴がヒトと類似しているため、古くから神経学、繁殖学、感染症の研究、行動学などに多く使われてきた。マーモセットは1970年前後に欧米で使用され始め、ヒトおよび[[チンパンジー]]以外では報告されなかった[[wj:A型肝炎|A型肝炎]]に対する感受性や[[wj:げっ歯類|げっ歯類]]や[[ウサギ]]ではみられなかった[[wj:サリドマイド剤|サリドマイド剤]]による催奇形性が注目された。 | ||
特に、脳神経科学は、現在マーモセットの利用が最も多い分野である。マーモセットの脳は[[大脳皮質]]の拡大で生じた霊長類に特異的な機能を持つ。よって[[認知]]機能、社会的行動などの脳高次機能に関してヒトと類似しており、認知科学などの脳高次機能の研究や、ヒト神経疾患研究のための[[動物モデル]]として適している。ヒトの疾患モデルとしては、特に[[パーキンソン病]]、[[脊髄損傷]]、[[多発性硬化症]]などの神経変性疾患などのモデルとして用いられている。また、前述のとおり、霊長類では唯一次世代への導入遺伝子の伝達が認められた[[トランスジェニック動物]]が作製され<ref><pubmed>19478777</pubmed></ref>、遺伝子改変技術を用いたモデル開発が行われている。 | 特に、脳神経科学は、現在マーモセットの利用が最も多い分野である。マーモセットの脳は[[大脳皮質]]の拡大で生じた霊長類に特異的な機能を持つ。よって[[認知]]機能、社会的行動などの脳高次機能に関してヒトと類似しており、認知科学などの脳高次機能の研究や、ヒト神経疾患研究のための[[動物モデル]]として適している。ヒトの疾患モデルとしては、特に[[パーキンソン病]]、[[脊髄損傷]]、[[多発性硬化症]]などの神経変性疾患などのモデルとして用いられている。また、前述のとおり、霊長類では唯一次世代への導入遺伝子の伝達が認められた[[トランスジェニック動物]]が作製され<ref><pubmed>19478777</pubmed></ref>、遺伝子改変技術を用いたモデル開発が行われている。 |