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<font size="+1">[http://researchmap.jp/masahikowatanabe 渡辺 雅彦]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/masahikowatanabe 渡辺 雅彦]</font><br> | ||
''北海道大学大学院医学研究科解剖学講座''<br> | ''北海道大学大学院医学研究科解剖学講座''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年12月6日 改訂版原稿受付日:2021年7月26日 原稿完成日:2021年8月2日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/keijitanaka 田中 啓治](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/keijitanaka 田中 啓治](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | ||
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[[ファイル:Watanabe Cortex Fig1.png|サムネイル|'''図1. 新皮質の6層構造と線維連絡''']] | [[ファイル:Watanabe Cortex Fig1.png|サムネイル|'''図1. 新皮質の6層構造と線維連絡''']] | ||
[[ファイル:Watanabe Cortex Fig2.png|サムネイル|150px|'''図2. マウス新皮質のニッスル染色像'''<br>I~ | [[ファイル:Watanabe Cortex Fig2.png|サムネイル|150px|'''図2. マウス新皮質のニッスル染色像'''<br>I~VIは各層、WMは白質を示す。]] | ||
== 層構造 == | == 層構造 == | ||
新皮質の6層構造は以下の層からなり、それぞれ特徴的な細胞構築と線維連絡を有している('''図1、2''')。 | 新皮質の6層構造は以下の層からなり、それぞれ特徴的な細胞構築と線維連絡を有している('''図1、2''')。 | ||
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== 顆粒皮質/無顆粒皮質 == | == 顆粒皮質/無顆粒皮質 == | ||
[[感覚性皮質]]では、視床からの入力層である[[内顆粒層]]が発達し[[顆粒皮質]][[granular cortex]]と呼ばれる。一方、[[一次運動野]]や[[運動前野]]などの[[運動性皮質]]ではこの層の発達が悪く、[[無顆粒皮質]][[agranular cortex]]と呼ばれる。 | |||
== 連合野 == | == 連合野 == | ||
上記の機能局在な明瞭な皮質領域を除くと、ヒトでは大脳皮質の約2/3にも相当する広い領域が残され、これらの領域を[[連合野]][association area]]という。連合野は、感覚情報の高度な統合による認知、複数の感覚の総合、感覚と運動の統合、過去の経験([[記憶]])と関連、[[随意運動]]、[[情動行動]]、[[言語機能]]、[[精神機能]]、[[作業記憶]]([[ワーキングメモリー]])などより高次な脳機能を具現化している皮質領域である。連合野の特徴は、[[髄鞘]]化が最も遅く始まり、進化するにつれて大脳皮質全体に占める比率が大きくなり、ヒトでその比率は最大となっている。 | 上記の機能局在な明瞭な皮質領域を除くと、ヒトでは大脳皮質の約2/3にも相当する広い領域が残され、これらの領域を[[連合野]][[association area]]という。連合野は、感覚情報の高度な統合による認知、複数の感覚の総合、感覚と運動の統合、過去の経験([[記憶]])と関連、[[随意運動]]、[[情動行動]]、[[言語機能]]、[[精神機能]]、[[作業記憶]]([[ワーキングメモリー]])などより高次な脳機能を具現化している皮質領域である。連合野の特徴は、[[髄鞘]]化が最も遅く始まり、進化するにつれて大脳皮質全体に占める比率が大きくなり、ヒトでその比率は最大となっている。 | ||
ヒトでは[[前頭連合野]]が発達し、その中心となる[[前頭前野]]([[前頭前皮質]])は一次運動野と一次感覚性皮質以外の全ての新皮質と相互に連絡し、[[側頭連合野]]や[[頭頂連合野]]からの情報を統合して、前頭前野は行動の企画や順序立て、結果の予測と行動抑制、状況に応じた行動の切り替えなどの遂行機能から、観念的思考、推論、判断、評価などの高次な認知機能に関わる。前頭前野の背外側部はワーキングメモリーに関わる。腹側部の[[前頭眼窩皮質]]は、[[視床背内側核]]を介して扁桃体・中隔・側頭葉極などの大脳辺縁系と連絡し、[[情動]]・[[動機づけ]]機能とそれに基づく意思決定過程に関わる。前頭前野は理性が[[本能]](大脳辺縁系)を制御して逸脱した行動を抑制している。 | ヒトでは[[前頭連合野]]が発達し、その中心となる[[前頭前野]]([[前頭前皮質]])は一次運動野と一次感覚性皮質以外の全ての新皮質と相互に連絡し、[[側頭連合野]]や[[頭頂連合野]]からの情報を統合して、前頭前野は行動の企画や順序立て、結果の予測と行動抑制、状況に応じた行動の切り替えなどの遂行機能から、観念的思考、推論、判断、評価などの高次な認知機能に関わる。前頭前野の背外側部はワーキングメモリーに関わる。腹側部の[[前頭眼窩皮質]]は、[[視床背内側核]]を介して扁桃体・中隔・側頭葉極などの大脳辺縁系と連絡し、[[情動]]・[[動機づけ]]機能とそれに基づく意思決定過程に関わる。前頭前野は理性が[[本能]](大脳辺縁系)を制御して逸脱した行動を抑制している。 | ||
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* [[大脳皮質の局所神経回路]] | * [[大脳皮質の局所神経回路]] | ||
* [[大脳皮質の発生]] | * [[大脳皮質の発生]] | ||
* [[言語中枢]] | |||
* [[優位半球・劣位半球]] | |||
== 参考文献 == | == 参考文献 == | ||
* '''渡辺雅彦 (2017).'''<br>脳神経ペディア:「解剖」と「機能」が見える・つながる事典、''羊土社'' | * '''渡辺雅彦 (2017).'''<br>脳神経ペディア:「解剖」と「機能」が見える・つながる事典、''羊土社'' | ||
* '''小林靖 (2003).'''<br>ヒトに至る脳の進化 伊藤正男監修 脳神経科学 42-52ページ、''三輪書店'' | * '''小林靖 (2003).'''<br>ヒトに至る脳の進化 伊藤正男監修 脳神経科学 42-52ページ、''三輪書店'' |