「パニック症」の版間の差分

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=== 疫学 ===  
=== 疫学 ===  
====発症率====
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 有名な[[wikipedia:National Comorbidity Survey|National Comorbidity Survey]](NCS)による疫学調査では、3.5%という結果であったが<ref name="ref2"><pubmed>8109651</pubmed></ref>、これは若干高い数値で、その後の世界各国で行われた調査では1.5~2.5%の間にあるようだが、決して珍しい病気ではない。年間罹患率は一般的に0.5~1%であると報告されている<ref><pubmed>3050062</pubmed></ref>。しかし、心疾患外来患者の16% 、あるいは過呼吸発作を訴えた患者の35%でPDの診断基準を満たすとの報告があり<ref><pubmed>8215805</pubmed></ref>、一般臨床現場での有病率は、思ったよりも高い。また、PDの診断基準は満たさないものの、PAの繰り返しを持つ者は全人口の3.5%、生涯に1度でもPAを経験したことのある者は9~10%程度と見積もられており、潜在的な患者数も、かなり多いものと考えられている<ref><pubmed>2185501</pubmed></ref>。性比については、女性は男性よりも一貫して高く、2倍以上であると報告されている<ref name="ref2"><pubmed>8109651</pubmed></ref>。好発年齢は、15歳~45歳の若年層で、年齢分布としては、青年期後期の15~24歳と45~54歳に二峰性のピークを認め、高齢者の発症は稀である<ref name="ref6"><pubmed>8166303</pubmed></ref>。ただし、このピークには性差があり、男性では25歳~30歳頃、女性では35歳前後と若干男性の方が若年発症の傾向があるとされている<ref name="ref6"><pubmed>8166303</pubmed></ref>。  
 有名な[[wikipedia:National Comorbidity Survey|National Comorbidity Survey]](NCS)による疫学調査では、3.5%という結果であったが<ref name="ref2"><pubmed>8109651</pubmed></ref>、これは若干高い数値で、その後の世界各国で行われた調査では1.5~2.5%の間にあるようだが、決して珍しい病気ではない。年間罹患率は一般的に0.5~1%であると報告されている<ref><pubmed>3050062</pubmed></ref>。しかし、心疾患外来患者の16% 、あるいは[[wikipedia:ja:過呼吸発作|過呼吸発作]]を訴えた患者の35%でPDの診断基準を満たすとの報告があり<ref><pubmed>8215805</pubmed></ref>、一般臨床現場での有病率は、思ったよりも高い。また、PDの診断基準は満たさないものの、PAの繰り返しを持つ者は全人口の3.5%、生涯に1度でもPAを経験したことのある者は9~10%程度と見積もられており、潜在的な患者数も、かなり多いものと考えられている<ref><pubmed>2185501</pubmed></ref>。性比については、女性は男性よりも一貫して高く、2倍以上であると報告されている<ref name="ref2"><pubmed>8109651</pubmed></ref>。好発年齢は、15歳~45歳の若年層で、年齢分布としては、青年期後期の15~24歳と45~54歳に二峰性のピークを認め、高齢者の発症は稀である<ref name="ref6"><pubmed>8166303</pubmed></ref>。ただし、このピークには性差があり、男性では25歳~30歳頃、女性では35歳前後と若干男性の方が若年発症の傾向があるとされている<ref name="ref6"><pubmed>8166303</pubmed></ref>。  


 次に、PDの[[wikipedia:JA:家系研究|家系研究]]や[[wikipedia:JA:双生児研究|双生児研究]]についてである。Croweらは1983年にPD患者の第一度親族における発症率が24.7%であるのに比べ、一般対照群では2.2%で、患者家族では発症のリスクが有意に高いことを指摘した<ref><pubmed>6625855</pubmed></ref>。また、米国やベルギー、オーストラリア等で行われた大規模調査において、患者群の第一親等では正常対照群と比較し8倍の危険率との報告がなされている<ref name="ref8">'''Knowles JA, Weisseman MM'''<br>Panic disorder and agoraphobia.<br>''In Review of Psychiatry:'' vol.14.pp383-404, American PsychiatricPress,Washington,DC,1995.</ref>。Goldsteinらによる発症年齢における研究では、20歳以前の発症では家族性が強く17倍のリスクがあるのに対し、20歳以後の発症では6倍のリスクであったという<ref><pubmed>9075468</pubmed></ref>。さらに双生児研究では、一卵性双生児の一致率24%に対して二卵性双生児では11%<ref><pubmed>8332656</pubmed></ref>、双生児研究による遺伝率は、[[全般性不安障害]](Generalized anxiety disorder:GAD)では32%であったのに対し、PDでは43%と高かったとの報告もあり<ref><pubmed>15699295</pubmed></ref>、PDの発症には何らかの遺伝子要因が関与していることが示唆されている。
====遺伝子要因====
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 次に、PDの[[wikipedia:JA:家系研究|家系研究]]や[[wikipedia:JA:双生児研究|双生児研究]]についてである。Croweらは1983年にPD患者の第一度親族における発症率が24.7%であるのに比べ、一般対照群では2.2%で、患者家族では発症のリスクが有意に高いことを指摘した<ref><pubmed>6625855</pubmed></ref>。また、米国やベルギー、オーストラリア等で行われた大規模調査において、患者群の第一親等では正常対照群と比較し8倍の危険率との報告がなされている<ref name="ref8">'''Knowles JA, Weisseman MM'''<br>Panic disorder and agoraphobia.<br>''In Review of Psychiatry:'' vol.14.pp383-404, American Psychiatric Press, Washington,DC,1995.</ref>。Goldsteinらによる発症年齢における研究では、20歳以前の発症では家族性が強く17倍のリスクがあるのに対し、20歳以後の発症では6倍のリスクであったという<ref><pubmed>9075468</pubmed></ref>。さらに双生児研究では、一卵性双生児の一致率24%に対して二卵性双生児では11%<ref><pubmed>8332656</pubmed></ref>、双生児研究による遺伝率は、[[全般性不安障害]](generalized anxiety disorder:GAD)では32%であったのに対し、PDでは43%と高かったとの報告もあり<ref><pubmed>15699295</pubmed></ref>、PDの発症には何らかの遺伝子要因が関与していることが示唆されている。


=== 病名の変遷 ===  
=== 病名の変遷 ===