「FM1-43」の版間の差分

642 バイト追加 、 2021年11月18日 (木)
編集の要約なし
編集の要約なし
編集の要約なし
 
(3人の利用者による、間の6版が非表示)
1行目: 1行目:
<div align="right"> 
<font size="+1">[https://researchmap.jp/norikotakahashi 高橋 倫子]、[http://researchmap.jp/haruokasai 河西 春郎]</font><br>
''東京大学 大学院医学系研究科''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年1月31日 原稿完成日:2013年8月12日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/michisukeyuzaki 柚崎 通介](慶應義塾大学 医学部生理学)<br>
</div>
{{Chembox
{{Chembox
| ImageFile = FM1-43.png
| ImageFile = FM1-43.png
23行目: 30行目:
}}  
}}  


{{box|text=
 FM 色素は[[wikipedia:ja:脂質二重層|脂質二重膜]]を可逆的に染める蛍光色素で、[[シナプス前終末]]の機能や[[wikipedia:ja:分泌|分泌]]現象の計測に活用されている。  
 FM 色素は[[wikipedia:ja:脂質二重層|脂質二重膜]]を可逆的に染める蛍光色素で、[[シナプス前終末]]の機能や[[wikipedia:ja:分泌|分泌]]現象の計測に活用されている。  
}}


== FM1-43とは  ==
== FM1-43とは  ==
55行目: 64行目:
== 応用例  ==
== 応用例  ==
=== シナプス前終末における小胞プールの大きさと開口放出確率の測定  ===
=== シナプス前終末における小胞プールの大きさと開口放出確率の測定  ===
[[Image:Takahashinoriko fig 3.jpg|thumb|250px|'''図3. 開口放出に伴う FM 蛍光の変化'''<br>膜融合時、細胞外色素の有無により蛍光変化の様式が異なる。]]  
[[Image:Takahashinoriko fig 3.jpg|thumb|250px|'''図3. 開口放出に伴う FM 蛍光の変化'''<br>膜融合時、細胞外色素の有無により蛍光変化の様式が異なる。]]  
 
[[ファイル:Takahashinoriko fig 4.jpg|thumb|250px|'''図4. シナプス前終末における小胞プール'''<br>即時放出可能プール、再循環プール、静止プールの存在が生理学的な手法や電子顕微鏡による検討などで示唆されている。]]
 シナプスを刺激した時にミリ秒で起きる伝達物質放出は、[[活性帯]] ([[active zone]])にドックした小胞が開口放出すると仮想されている。この仮想的な小胞群を[[即時放出可能プール]] ([[readily releasable pool]], [[RRP]])という。[[シナプス小胞]]は開口放出後 30-60秒で細胞内部に[[エンドサイトーシス]]で取り込まれる(図 3左)。更に、シナプス終末内でシナプス小胞に再生されて[[即時放出可能プール]]に再び至る。この課程を[[リサイクリング]]と呼び、その小胞の集合体が[[再循環プール]]([[Recycling pool]])である。即時放出可能プールと再循環プールを総合して、[[全放出可能プールあるいは全リサイクリングプール]] ([[total recycling pool]], [[TRP]])という呼称が使われる(図 4)。
 シナプスを刺激した時にミリ秒で起きる伝達物質放出は、[[活性帯]] ([[active zone]])にドックした小胞が開口放出すると仮想されている。この仮想的な小胞群を[[即時放出可能プール]] ([[readily releasable pool]], [[RRP]])という。[[シナプス小胞]]は開口放出後 30-60秒で細胞内部に[[エンドサイトーシス]]で取り込まれる(図 3左)。更に、シナプス終末内でシナプス小胞に再生されて[[即時放出可能プール]]に再び至る。この課程を[[リサイクリング]]と呼び、その小胞の集合体が[[再循環プール]]([[Recycling pool]])である。即時放出可能プールと再循環プールを総合して、[[全放出可能プールあるいは全リサイクリングプール]] ([[total recycling pool]], [[TRP]])という呼称が使われる(図 4)。


98行目: 106行目:


<references />
<references />
(執筆者:高橋倫子、河西春郎 担当編集委員:柚崎通介)