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<font size="+1">[http://researchmap.jp/viola_body 村田 哲]、[http://researchmap.jp/keimochizuki 望月 圭]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/viola_body 村田 哲]、[http://researchmap.jp/keimochizuki 望月 圭]</font><br> | ||
''近畿大学医学部生理学講座''<br> | ''近畿大学医学部生理学講座''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2019年6月3日 原稿完成日:2019年7月17日 一部改訂:2021年9月21日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/keijitanaka 田中啓治](理化学研究所 脳神経科学研究センター 認知機能表現研究チーム) | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/keijitanaka 田中啓治](理化学研究所 脳神経科学研究センター 認知機能表現研究チーム) | ||
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名:reaching, reaching movement, arm reaching | 名:reaching, reaching movement, arm reaching | ||
{{box|text= | {{box|text= 手先を目標の位置にもっていく運動である。この運動を実現のためには、運動の意図、目標の定位、効果器の選択、手先の位置から目標に向かう軌道の計画、運動指令の生成、空間座標から関節・筋座標への変換、誤差の修正、学習・適応などの問題を解く必要がある。計算論的に運動指令の生成や制御は、フィードバック誤差学習モデルや最適フィードバック制御モデルが考えられている。脳内では、背側視覚経路の頭頂葉で処理された空間位置情報を基にして、到達運動が制御される。主に上頭頂小葉や背側運動前野のネットワークが感覚運動変換に関わっている。近年、これらの領域が把持運動と到達運動の協調制御に関わるともいわれている。また、臨床症状の知見は、中心視到達運動と周辺視到達運動がそれぞれ異なる領域が関わるという。上記のネットワークに加えて、一次体性感覚野、一次運動野、高次運動野、小脳を含むネットワークにおいて、運動指令の生成や感覚フィードバック制御、学習が行われる。}} | ||
[[image:到達運動Akiramurata_fig_1.png|thumb|400px|'''図1. 到達運動に関わる大脳皮質神経回路(サル)'''<br>PS:[[主溝]]、AS:[[上弓状溝]]、AI:[[下弓状溝]]、CS:[[中心溝]]、IPS:[[頭頂間溝]]、PO:[[頭頂後頭溝]]、LF:[[外側溝]]、LS:[[月状溝]]、STS:[[上側頭溝]]<br>頭頂間溝と月状溝、上側頭溝は、広げて内側面を見えるようにしてある。赤字が到達運動に主に関わる領域、赤線は上縦束-I (SLF-I) 青線がSLF-III。<ref name=ref49>'''Murata, A. and H. Ishida'''<br>Representation of bodily self in the multimodal parieto-premotor network<br>in Representation and Brain, S. Funahashi, Editor. 2007, Springer. p. 151-176.</ref>より許諾転載。]] | [[image:到達運動Akiramurata_fig_1.png|thumb|400px|'''図1. 到達運動に関わる大脳皮質神経回路(サル)'''<br>PS:[[主溝]]、AS:[[上弓状溝]]、AI:[[下弓状溝]]、CS:[[中心溝]]、IPS:[[頭頂間溝]]、PO:[[頭頂後頭溝]]、LF:[[外側溝]]、LS:[[月状溝]]、STS:[[上側頭溝]]<br>頭頂間溝と月状溝、上側頭溝は、広げて内側面を見えるようにしてある。赤字が到達運動に主に関わる領域、赤線は上縦束-I (SLF-I) 青線がSLF-III。<ref name=ref49>'''Murata, A. and H. Ishida'''<br>Representation of bodily self in the multimodal parieto-premotor network<br>in Representation and Brain, S. Funahashi, Editor. 2007, Springer. p. 151-176.</ref>より許諾転載。]] | ||
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===小脳=== | ===小脳=== | ||
小脳は、運動の[[マーの小脳理論|教師あり学習]]に重要な役割をする。小脳の外側部は、大脳皮質の[[一次運動野]]、[[運動前野]]などの[[高次運動野]]、[[頭頂葉]]、[[前頭前野]]などから入力を受けており、[[随意運動]]制御に重要な役割を担っている。到達運動のプリズム適応は、小脳に障害があると起こらない。Kitazawa らは、到達運動をした結果生じた目標との誤差の情報が、[[登上線維]]による[[プルキンエ細胞]]に発生する[[小脳|複雑スパイク]]に表現されていることを明らかにした<ref name=ref43><pubmed>9548253</pubmed></ref>。つまり、運動の結果のエラーが登上線維によって小脳皮質に入力されることを示した。先に述べた、運動前野あるいは一次運動野におけるエラーの情報が、プルキンエ細胞に入力されている可能性がある。<br>一方、[[小脳|平行線維]]による[[小脳|単純スパイク]]は運動制御の信号が表現されている。小脳には、[[内部モデル]]が存在するといわれており、眼球運動においては小脳の単純スパイクが、[[内部モデル|逆モデル]]としての小脳の役割を反映していると考えられている<ref name=ref10></ref>が、上肢運動においては、大脳皮質で計画された運動指令が、小脳の[[内部モデル|順モデル]]に入力されるという考えもある<ref name=ref44><pubmed>26704591</pubmed></ref><ref name= | 小脳は、運動の[[マーの小脳理論|教師あり学習]]に重要な役割をする。小脳の外側部は、大脳皮質の[[一次運動野]]、[[運動前野]]などの[[高次運動野]]、[[頭頂葉]]、[[前頭前野]]などから入力を受けており、[[随意運動]]制御に重要な役割を担っている。到達運動のプリズム適応は、小脳に障害があると起こらない。Kitazawa らは、到達運動をした結果生じた目標との誤差の情報が、[[登上線維]]による[[プルキンエ細胞]]に発生する[[小脳|複雑スパイク]]に表現されていることを明らかにした<ref name=ref43><pubmed>9548253</pubmed></ref>。つまり、運動の結果のエラーが登上線維によって小脳皮質に入力されることを示した。先に述べた、運動前野あるいは一次運動野におけるエラーの情報が、プルキンエ細胞に入力されている可能性がある。<br>一方、[[小脳|平行線維]]による[[小脳|単純スパイク]]は運動制御の信号が表現されている。小脳には、[[内部モデル]]が存在するといわれており、眼球運動においては小脳の単純スパイクが、[[内部モデル|逆モデル]]としての小脳の役割を反映していると考えられている<ref name=ref10></ref>が、上肢運動においては、大脳皮質で計画された運動指令が、小脳の[[内部モデル|順モデル]]に入力されるという考えもある<ref name=ref44><pubmed>26704591</pubmed></ref><ref name=ref51><pubmed>30627965</pubmed></ref>。 | ||
===大脳基底核=== | ===大脳基底核=== | ||
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*[[随意運動と不随意運動]] | *[[随意運動と不随意運動]] | ||
*[[体性感覚]] | *[[体性感覚]] | ||
*[[マーの小脳理論]] | * [[マーの小脳理論]] | ||
* [[手と眼の協調運動]] | |||
==謝辞== | ==謝辞== |