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東京大学大学院薬学系研究科 遺伝学教室 千原崇裕、三浦 正幸
 
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''東京大学大学院薬学系研究科 遺伝学教室''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2015年5月7日 原稿完成日:2015年6月16日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0080380 上口 裕之](国立研究法人理化学研究所脳科学総合研究センター)<br>
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英語名:northern blot, northern blotting
英語名:northern blot, northern blotting


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 ノザンブロットとは、分子生物学研究においてRNAの量やサイズを検出する手法である。ノザンブロッティングともいう。類似した手法として、[[DNA]]を検出する[[サザンブロット]]、タンパク質を検出するウエスタンブロットがある。
== ノザンブロットとは ==
 ノザンブロットとは、分子生物学研究においてRNAの量やサイズを検出する手法である<ref>'''Alberts, B., Johnson, A., Lewis, J. Raff, M., Roberts, K., Walter, P.''' <br>Molecular Biology of the Cell, 5th ed.  <br>Garland Science, Taylor & Francis Group, NY, pp 538–539, 2008</ref><ref><pubmed > 9299493 </pubmed></ref><ref>'''Trayhurn, P.'''<br>Northern Blotting.<br>''Pro. Nutrition Soc''. 1996, 55:583–589</ref>。ノザンブロッティングともいう。類似した手法として、[[DNA]]を検出する[[サザンブロット]]、タンパク質を検出する[[ウェスタンブロット]]がある。最近は、より定量的にmRNA量を測定できる定量PCR法 (quantitative-PCR, real-time-PCR) や、多数のmRNA量を網羅的に検出することのできるマイクロアレイ法が汎用されている。


 ノザンブロットを行うには、まず細胞、組織から[[wj:リボ核酸|total RNA]]を抽出する必要がある<ref>'''Alberts, B., Johnson, A., Lewis, J. Raff, M., Roberts, K., Walter, P.''' <br>Molecular Biology of the Cell, 5th ed.  <br>Garland Science, Taylor & Francis Group, NY, pp 538–539, 2008</ref><ref><pubmed > 9299493 </pubmed></ref><ref>'''Trayhurn, P.'''<br>Northern Blotting.<br>''Pro. Nutrition Soc''. 1996, 55:583–589</ref>。[[wj:oligo (dT)カラム|oligo (dT)カラム]]等を用いてtotal RNAの中からpoly(A)tailを持った[[wj:伝令RNA|mRNA]]を精製してもよい<ref><pubmed> 8245974 </pubmed></ref><ref><pubmed> 1709098 </pubmed></ref>。抽出したRNAは、[[wj:アガロースゲル電気泳動|アガロースゲル]]を用いた電気泳動でRNAサイズ依存的に分離する。次に、ゲル上に展開したRNAを拡散もしくは吸引によってメンブレンへ転写(ブロット)する。RNAを含む[[核酸]]は負の電荷を持つため、ここで用いるメンブレンには正電荷を持つナイロンメンブレンやニトロセルロースメンブレンを用いる。次に、検出したいRNA配列に相補的な核酸(DNA, RNA, オリゴヌクレオチド)を標識しプローブとして用いる(核酸プローブ)。標識には放射性同位体<sup>32</sup>Pを用いることが多いが、最近は[[wj:ジゴキシゲニン|ジゴキシゲニン]] (DIG)や[[wj:ビオチン|ビオチン]]を用いた標識法 (non-RI法)も利用されている。核酸プローブをメンブレン上に転写されたRNAにハイブリダイズさせることで、目的のRNAの量、およびサイズを検出する。核酸プローブの標識に放射性同位体<sup>32</sup>Pを用いた場合はX線フィルムで、ジゴキシゲニンやビオチンを用いた場合は[[wj:抗体|抗体]]を用いてメンブレンにハイブリダイズした核酸プローブの量と位置を検出する。
==手順==
=== 核酸の抽出 ===
 ノザンブロットを行うには、まず細胞、組織から[[wj:リボ核酸|total RNA]]を抽出する必要がある。[[wj:oligo (dT)カラム|oligo (dT)カラム]]等を用いてtotal RNAの中からpoly(A)tailを持った[[mRNA]]を精製してもよい<ref><pubmed> 8245974 </pubmed></ref><ref><pubmed> 1709098 </pubmed></ref>
 
=== 電気泳動 ===
 抽出したRNAは、[[wj:アガロースゲル電気泳動|アガロースゲル]]を用いた電気泳動でRNAサイズ依存的に分離する。
=== ブロット ===
 ゲル上に展開したRNAを拡散もしくは吸引によってメンブレンへ転写(ブロット)する。RNAを含む[[核酸]]は負の電荷を持つため、ここで用いるメンブレンには正電荷を持つナイロンメンブレンやニトロセルロースメンブレンを用いる。
=== ハイブリダイゼーション ===
 核酸プローブをメンブレン上に転写されたRNAにハイブリダイズさせることで、目的のRNAの量、およびサイズを検出する。検出したいRNA配列に相補的な核酸(DNA, RNA, オリゴヌクレオチド)を標識しプローブとして用いる(核酸プローブ)。標識には放射性同位体<sup>32</sup>Pを用いることが多いが、最近は[[wj:ジゴキシゲニン|ジゴキシゲニン]] (DIG)や[[wj:ビオチン|ビオチン]]を用いた標識法 (non-RI法)も利用されている。
=== 検出 ===
 核酸プローブの標識に放射性同位体<sup>32</sup>Pを用いた場合はX線フィルムで、ジゴキシゲニンやビオチンを用いた場合は[[wj:抗体|抗体]]を用いてメンブレンにハイブリダイズした核酸プローブの量と位置を検出する。


==関連項目==
==関連項目==
* [[マイクロアレイ]]
* [[マイクロアレイ]]
* [[In situハイブリダイゼーション法]]
* [[サザンブロット]]
* [[サザンブロット]]
* [[ウエスタンブロット]]
* [[ウエスタンブロット]]
== 参考文献 ==
== 参考文献 ==
<references />
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2021年12月15日 (水) 20:27時点における最新版

千原 崇裕三浦 正幸
東京大学大学院薬学系研究科 遺伝学教室
DOI:10.14931/bsd.5862 原稿受付日:2015年5月7日 原稿完成日:2015年6月16日
担当編集委員:上口 裕之(国立研究法人理化学研究所脳科学総合研究センター)

英語名:northern blot, northern blotting

 ノザンブロットとは、分子生物学研究においてRNAの量やサイズを検出する手法である。

図1.ノザンブロット法によるRNA検出の概略図

ノザンブロットとは

 ノザンブロットとは、分子生物学研究においてRNAの量やサイズを検出する手法である[1][2][3]。ノザンブロッティングともいう。類似した手法として、DNAを検出するサザンブロット、タンパク質を検出するウェスタンブロットがある。最近は、より定量的にmRNA量を測定できる定量PCR法 (quantitative-PCR, real-time-PCR) や、多数のmRNA量を網羅的に検出することのできるマイクロアレイ法が汎用されている。

手順

核酸の抽出

 ノザンブロットを行うには、まず細胞、組織からtotal RNAを抽出する必要がある。oligo (dT)カラム等を用いてtotal RNAの中からpoly(A)tailを持ったmRNAを精製してもよい[4][5]

電気泳動

 抽出したRNAは、アガロースゲルを用いた電気泳動でRNAサイズ依存的に分離する。

ブロット

 ゲル上に展開したRNAを拡散もしくは吸引によってメンブレンへ転写(ブロット)する。RNAを含む核酸は負の電荷を持つため、ここで用いるメンブレンには正電荷を持つナイロンメンブレンやニトロセルロースメンブレンを用いる。

ハイブリダイゼーション

 核酸プローブをメンブレン上に転写されたRNAにハイブリダイズさせることで、目的のRNAの量、およびサイズを検出する。検出したいRNA配列に相補的な核酸(DNA, RNA, オリゴヌクレオチド)を標識しプローブとして用いる(核酸プローブ)。標識には放射性同位体32Pを用いることが多いが、最近はジゴキシゲニン (DIG)やビオチンを用いた標識法 (non-RI法)も利用されている。

検出

 核酸プローブの標識に放射性同位体32Pを用いた場合はX線フィルムで、ジゴキシゲニンやビオチンを用いた場合は抗体を用いてメンブレンにハイブリダイズした核酸プローブの量と位置を検出する。

関連項目

参考文献

  1. Alberts, B., Johnson, A., Lewis, J. Raff, M., Roberts, K., Walter, P.
    Molecular Biology of the Cell, 5th ed.
    Garland Science, Taylor & Francis Group, NY, pp 538–539, 2008
  2. Kevil, C.G., Walsh, L., Laroux, F.S., Kalogeris, T., Grisham, M.B., & Alexander, J.S. (1997).
    An improved, rapid Northern protocol. Biochemical and biophysical research communications, 238(2), 277-9. [PubMed:9299493] [WorldCat] [DOI]
  3. Trayhurn, P.
    Northern Blotting.
    Pro. Nutrition Soc. 1996, 55:583–589
  4. Durand, G.M., & Zukin, R.S. (1993).
    Developmental regulation of mRNAs encoding rat brain kainate/AMPA receptors: a northern analysis study. Journal of neurochemistry, 61(6), 2239-46. [PubMed:8245974] [WorldCat] [DOI]
  5. Mori, H., Takeda-Yoshikawa, Y., Hara-Nishimura, I., & Nishimura, M. (1991).
    Pumpkin malate synthase. Cloning and sequencing of the cDNA and northern blot analysis. European journal of biochemistry, 197(2), 331-6. [PubMed:1709098] [WorldCat] [DOI]