「傍腫瘍性神経症候群」の版間の差分

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paraneoplastic cerebellar degeneration (PCD)
paraneoplastic cerebellar degeneration (PCD)


 亜急性に[[小脳失調]]が進行する。肺小細胞癌に伴う抗Hu抗体陽性例、[[傍腫瘍性神経症候群#ランバートイートン筋無力症候群]](LEMS)を合併し[[電位依存性カルシウムチャネル#Cav2_.28N.2C_P.2FQ.2C_R.E5.9E.8B.29|P/Q型]][[電位依存性カルシウムチャネル]](P/Q type voltage-gated calcium channel:VGCC)抗体陽性例,乳癌で[[抗Ri抗体]]陽性例などがある。女性の場合は、その半数以上が婦人科癌・乳癌を有し、[[抗Yo抗体]]が陽性である。病理像は、[[プルキンエ細胞]]の広汎な脱落を認めるものの、[[wj:炎症細胞|炎症細胞]]浸潤は極めて乏しい<ref name=ref8><pubmed>10980743</pubmed></ref><ref name=ref9><pubmed>8740233</pubmed></ref> <ref name=ref10><pubmed>19217169</pubmed></ref>。  
 亜急性に[[小脳失調]]が進行する。肺小細胞癌に伴う抗Hu抗体陽性例、[[傍腫瘍性神経症候群#ランバートイートン筋無力症候群|ランバートイートン筋無力症候群]](LEMS)を合併し[[電位依存性カルシウムチャネル#Cav2_.28N.2C_P.2FQ.2C_R.E5.9E.8B.29|P/Q型]][[電位依存性カルシウムチャネル]](P/Q type voltage-gated calcium channel:VGCC)抗体陽性例,乳癌で[[抗Ri抗体]]陽性例などがある。女性の場合は、その半数以上が婦人科癌・乳癌を有し、[[抗Yo抗体]]が陽性である。病理像は、[[プルキンエ細胞]]の広汎な脱落を認めるものの、[[wj:炎症細胞|炎症細胞]]浸潤は極めて乏しい<ref name=ref8><pubmed>10980743</pubmed></ref><ref name=ref9><pubmed>8740233</pubmed></ref> <ref name=ref10><pubmed>19217169</pubmed></ref>。


===傍腫瘍性辺縁系脳炎===
===傍腫瘍性辺縁系脳炎===
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 担癌患者の頻度を考慮すると、傍腫瘍性神経症候群の発症は極めてまれといわざるを得ない。傍腫瘍性神経症候群発症の有無で、腫瘍の組織学的特徴に差はないとされる。また、Hu抗体陽性肺小細胞癌患者の腫瘍に発現するHuタンパク質のDNAにも変異は見られていない。傍腫瘍性神経症候群発症の要因として、腫瘍組織内では、[[wj:抗原提示細胞|抗原提示細胞]]である[[wj:樹状細胞|樹状細胞]]がアポトーシスに陥った腫瘍細胞を取り込んで、class I 上にonconeural proteinを提示する可能性が考えられ、感作された傍腫瘍性神経症候群抗原特異的なT 細胞がclass Iを発現する神経組織を傷害する可能性もある。  
 担癌患者の頻度を考慮すると、傍腫瘍性神経症候群の発症は極めてまれといわざるを得ない。傍腫瘍性神経症候群発症の有無で、腫瘍の組織学的特徴に差はないとされる。また、Hu抗体陽性肺小細胞癌患者の腫瘍に発現するHuタンパク質のDNAにも変異は見られていない。傍腫瘍性神経症候群発症の要因として、腫瘍組織内では、[[wj:抗原提示細胞|抗原提示細胞]]である[[wj:樹状細胞|樹状細胞]]がアポトーシスに陥った腫瘍細胞を取り込んで、class I 上にonconeural proteinを提示する可能性が考えられ、感作された傍腫瘍性神経症候群抗原特異的なT 細胞がclass Iを発現する神経組織を傷害する可能性もある。  


 筆者らは、傍腫瘍性神経症候群が多くの担癌患者のごく一部にしか生じない理由の一つの可能性として、患者側の要因を検討した。自己免疫疾患の発症要因としては、[[wj:|免疫自己寛容]]の破綻が生じていると考えられる。末梢血中[[wj:制御性T細胞|制御性T細胞]](regulatory T cell: Treg)は末梢性免疫寛容に重要な働きをしていることから、傍腫瘍性神経症候群における免疫動態の評価のため、Treg分画の機能遺伝子の発現を定量した。傍腫瘍性神経症候群,神経症状のない癌患者および健常者の末梢血リンパ球からTreg分画を分取し、[[wj:リアルタイムRT-PCR|リアルタイムRT-PCR]]法で[[w:FOXP3|FOXP3]]を代表とするTregの機能遺伝子の[[wj:mRNA|mRNA]]の発現を定量した。傍腫瘍性神経症候群患者末梢血では、免疫制御に関わるTregの複数の機能遺伝子に発現低下がみられた。Tregの機能低下は,免疫寛容の破綻を引き起こし、自己免疫機序による組織傷害を生じうるため、傍腫瘍性神経症候群の宿主要因になりうると考えられた<ref name=ref28><pubmed>18455243</pubmed></ref>。  
 筆者らは、傍腫瘍性神経症候群が多くの担癌患者のごく一部にしか生じない理由の一つの可能性として、患者側の要因を検討した。自己免疫疾患の発症要因としては、[[wj:|免疫自己寛容]]の破綻が生じていると考えられる。末梢血中[[wj:制御性T細胞|制御性T細胞]](regulatory T cell: Treg)は末梢性免疫寛容に重要な働きをしていることから、傍腫瘍性神経症候群における免疫動態の評価のため、Treg分画の機能遺伝子の発現を定量した。傍腫瘍性神経症候群,神経症状のない癌患者および健常者の末梢血リンパ球からTreg分画を分取し、[[wj:リアルタイムRT-PCR|リアルタイムRT-PCR]]法で[[w:FOXP3|FOXP3]]を代表とするTregの機能遺伝子の[[mRNA]]の発現を定量した。傍腫瘍性神経症候群患者末梢血では、免疫制御に関わるTregの複数の機能遺伝子に発現低下がみられた。Tregの機能低下は,免疫寛容の破綻を引き起こし、自己免疫機序による組織傷害を生じうるため、傍腫瘍性神経症候群の宿主要因になりうると考えられた<ref name=ref28><pubmed>18455243</pubmed></ref>。


== 治療  ==
== 治療  ==