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<font size="+1">山田 洋、[http://researchmap.jp/kazuhikoseki 関 和彦]</font><br> | <font size="+1">山田 洋、[http://researchmap.jp/kazuhikoseki 関 和彦]</font><br> | ||
'' 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター''<br> | '' 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2013年12月25日 原稿完成日:2022年3月12日<br> | |||
担当編集委員:[ | 担当編集委員:[https://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](京都大学大学院医学研究科)<br> | ||
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英:muscle spindle 独:Muskelspindel 仏:fuseau neuromusculaire | |||
{{box|text= | {{box|text= 筋紡錘は骨格筋に内包されている[[感覚受容器]]である。紡錘状の形状をしているのがその名前の由来であるが、[[筋固有受容器]]と呼ばれる場合もある。筋紡錘の主な機能は、筋紡錘の周囲の筋(錘外筋)の長さ変化を受容し、電気信号化することである。筋長の変化はその筋が関わる関節角度の変化と密接に連関している。従って、筋紡錘からの信号は身体の各部位の相対的な位置を反映しており、このような[[深部感覚]]の責任受容器である。}} | ||
==構造 == | |||
[[ファイル:Muscle spindle model.jpg|サムネイル|'''図1. 筋紡錘の構造'''<br>骨格筋に内包される構造である。錐内筋線維(intrafusal muscle fibers)、感覚神経線維、運動神経線維からなる。<br>Wikipediaより。]] | |||
[[ファイル:Muscle Spindle LM HE stain.jpg|サムネイル|'''図2. 筋紡錘'''<br>ヘマトキシリン・エオジン染色。中央の円形のものが錐内筋線維の断面、周囲のタマネギ状のものが結合組織性カプセル。<br>Wikipediaより。]] | |||
===基本構造=== | |||
骨格筋に内包されており、直径約100μmで長さは10mmの紡錘状の形状をしている。[[wj:結合組織|結合組織]]性のカプセルで包まれた状態で存在する。[[wj:筋線維|筋線維]]と筋線維の間に存在し、筋紡錘の両端は筋の結合組織に付着している。 | |||
筋紡錘には筋の中心部に存在するものと、筋肉の端の方についているものとが存在する。前者は[[筋紡錘一次終末]]と呼ばれ、[[Ia群求心線維]]に支配される。後者は[[筋紡錘二次終末]]と呼ばれII群求心線維に支配される。この2種類の筋紡錘ともに[[γ運動神経|γ運動(動的及び静的)ニューロン]]に支配されている。 | |||
筋紡錘は3要素によって構成されている。 | |||
#錘内筋線維 | |||
#錘内筋線維非収縮性部位からの[[感覚神経]]線維 | |||
#錐内筋の収縮性部位に投射する[[運動神経]][[軸索]] | |||
== | である。錘内筋線維はさらに2種類に分類できる。[[核袋線維]]と[[核鎖線維]]である。核袋線維の中の線維はさらに[[動的線維]]・[[静的線維]]の2つに分類される。 | ||
===求心性神経=== | |||
錘内筋は二種類の感覚[[神経終末]]の支配を受ける。まず[[Ia求心神経]](直径が大きい)[[軸索]]末端は全ての錘内筋の中央部分にらせん状に絡まって、[[一次求心神経終末]]を形成している。また[[II群求心神経]]の軸索は静的核鎖線維と静的核袋線維の中央部の両端に存在し、[[二次求心神経終末]]を形成している。 | |||
===運動神経=== | |||
[[γ運動ニューロン]]も2種類に分類される。[[動的γ運動ニューロン]]は動的核袋線維を、一方[[静的γ運動ニューロン]]は静的核袋線維及び核鎖線維をそれぞれ支配する。 | |||
== | ==機能== | ||
筋紡錘は、筋肉の大部分を構成する錐外筋と並列に配置されているため、全筋の長さが変わると錐内筋の長さも変化する。従って、筋が引き伸されると筋紡錘の感覚性末端部の活動が上昇する。反対に筋が短縮すると、筋紡錘は無負荷となりその活動は減少する。 | |||
===γ運動神経の機能=== | |||
錐内筋は直径の細い[[有髄神経]]であるγ運動神経に支配されている。一方、錐外筋は太い有髄神経である[[α運動神経]]に支配されている。γ運動神経の興奮によって錐内筋の[[polar region]]が短縮する。この短縮は、結果として錐内筋中心部を両端側から引っ張ることになり、感覚終末の発火頻度の上昇や筋伸張に対する感覚終末の発火確率を上昇させる。錐内筋の収縮は筋収縮張力の増加に対しては有意な貢献をしない。 | |||
===一次求心神経終末と二次求心神経終末の機能=== | |||
筋伸張には二つの種類がある。第一に筋の長さが実際に変化している[[動的相]]、その後筋の長さが安定化する[[静的相]]である。この2つの状態において二種類の[[求心神経]]の活動は異なる。一次求心神経終末は筋紡錘の伸展の変化幅と変化率の両方の要因に依存して放電を変化させる。一方、二次求心神経終末は主に伸展の変化幅のみに対して放電を変化させる。このことから、一次求心神経終末は筋の長さとそれが変化する速度を、二次求心神経終末は筋の長さそのものを伝えていると考えられる。 | |||
一次および二次求心神経終末の持続的な発火頻度は静的筋長とよく相関する。また一次求心神経は筋伸張の速度に感受性が強いため、運動のスピードとも相関する。一次求心神経は小さなスピード変化に大変敏感に応答するので、突然の微細な筋長変化にも感度よく反応し、それによって筋長変化に対する補正反応を起こす事ができる。動的γ[[運動ニューロン]]の発火頻度の増加は、一次求心神経終末の動的感受性を上げる一方、二次求心神経終末には影響を及ぼさない。静的γ運動ニューロンの発火頻度の増加は一次及び二次求心神経終末の持続的活動レベルを上昇させる一方、一次求心神経終末の動的感受性を低下させ、それによって筋が伸張から解き放たれた際一次終末が不応状態になるのを防いでいる。この働きによって、[[中枢神経系]]は筋紡錘内の異なった求心神経終末の動的・静的感度をそれぞれ独立して制御することが可能なのである。 | |||
==関連項目== | |||
*[[体性感覚]] | |||
==参考文献== | |||
* '''本間 研一 監修 (2019).'''<br>標準生理学 第9版 医学書院(東京) | |||
* '''Barrett, Kim E., Barman, Susan M., Boitano, Scott, Brooks, Heddwen L. (2015).'''<br>Ganong's Review of Medical Physiology, McGraw-Hill |