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<font size="+1">[http://researchmap.jp/read0113019 西澤 正豊]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/read0113019 西澤 正豊]</font><br> | ||
''新潟大学 脳研究所 ''<br> | ''新潟大学 脳研究所 ''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> | DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2016年1月30日 原稿完成日:2020年8月27日<br> | ||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0141446 漆谷 真] | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/read0141446 漆谷 真](滋賀医科大学 医学部 脳神経内科)<br> | ||
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MSA-Cでは小脳皮質、[[橋]]小脳系、および[[下オリーブ核]]に強い変性と神経細胞脱落、[[グリオーシス]]が認められる。一方、MSA-Pでは[[被殻]]、黒質の変性が高度であり、特に被殻の後外側部は神経細胞脱落が強く、褐色調の色素沈着がみられる。Shy-Drager症候群とされた剖検例では、[[脊髄]][[中間外側核]]、[[迷走神経]]背側核、[[交感神経節]]などの自律神経諸核の変性が強い。 | MSA-Cでは小脳皮質、[[橋]]小脳系、および[[下オリーブ核]]に強い変性と神経細胞脱落、[[グリオーシス]]が認められる。一方、MSA-Pでは[[被殻]]、黒質の変性が高度であり、特に被殻の後外側部は神経細胞脱落が強く、褐色調の色素沈着がみられる。Shy-Drager症候群とされた剖検例では、[[脊髄]][[中間外側核]]、[[迷走神経]]背側核、[[交感神経節]]などの自律神経諸核の変性が強い。 | ||
多系統萎縮症に共通する疾患特異的バイオマーカーとして、脳幹の[[オリゴデンドロサイト]]や神経細胞の細胞質内に特徴的な封入体([[glial cytoplasmic inclusion]]:[[GCI]]、[[neuronal cytoplasmic inclusion]]:[[NCI]])が見出され、多系統萎縮症は疾患単位として確立された。さらに、glial cytoplasmic inclusion、neuronal cytoplasmic inclusionの主な構成成分は、リン酸化された[[α-シヌクレイン]]であることが明らかにされた。α-シヌクレインは、もともとオリゴデンドロサイトには発現していない。多系統萎縮症では病的[[グリア細胞]]がα-シヌクレインを産生するという可能性よりも、神経細胞が産生したα-シヌクレインが細胞間を伝搬してグリアに取り込まれるという「[[プリオン]]様のタンパク伝搬仮説」が現在は有力である。パーキンソン病の特徴である[[レヴィー小体]]の主な構成成分もリン酸化α-シヌクレインであるが、同じシヌクレイノパチーである多系統萎縮症とパーキンソン病がどこで分岐するかは未解明である。α-シヌクレイン遺伝子の点変異は家族性パーキンソン病の原因とはなるが、多系統萎縮症の表現型は示さない。α-シヌクレイン遺伝子のduplication、あるいはtriplicationによるまれな家族性パーキンソン病では、レヴィー小体とglial cytoplasmic inclusionがともに認められることから、遺伝子量の増大はglial cytoplasmic inclusion形成の原因の一つと考えられる。 | 多系統萎縮症に共通する疾患特異的バイオマーカーとして、脳幹の[[オリゴデンドロサイト]]や神経細胞の細胞質内に特徴的な封入体([[glial cytoplasmic inclusion]]:[[GCI]]、[[neuronal cytoplasmic inclusion]]:[[NCI]])が見出され、多系統萎縮症は疾患単位として確立された。さらに、glial cytoplasmic inclusion、neuronal cytoplasmic inclusionの主な構成成分は、リン酸化された[[α-シヌクレイン]]であることが明らかにされた。α-シヌクレインは、もともとオリゴデンドロサイトには発現していない。多系統萎縮症では病的[[グリア細胞]]がα-シヌクレインを産生するという可能性よりも、神経細胞が産生したα-シヌクレインが細胞間を伝搬してグリアに取り込まれるという「[[プリオン]]様のタンパク伝搬仮説」が現在は有力である。パーキンソン病の特徴である[[レヴィー小体]]の主な構成成分もリン酸化α-シヌクレインであるが、同じシヌクレイノパチーである多系統萎縮症とパーキンソン病がどこで分岐するかは未解明である。α-シヌクレイン遺伝子の点変異は家族性パーキンソン病の原因とはなるが、多系統萎縮症の表現型は示さない。α-シヌクレイン遺伝子のduplication、あるいはtriplicationによるまれな家族性パーキンソン病では、レヴィー小体とglial cytoplasmic inclusionがともに認められることから、遺伝子量の増大はglial cytoplasmic inclusion形成の原因の一つと考えられる。 | ||
== 病態生理 == | == 病態生理 == | ||
ごくまれではあるが、多系統萎縮症には家族発症例があり、これらの解析から辻らにより[[COQ2]]([[コエンザイムQ10]]合成酵素)遺伝子に変異が同定された。変異が2つあれば発症者となり、変異が1つでは発症リスクを高めることになる。日本人のみに認められるV393A変異は多系統萎縮症の約9%に見出され(健常者では約3%)、ホモ変異例では脳内のコエンザイムQ10量が減少していた。 | |||
==関連項目== | ==関連項目== | ||
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==参考文献== | ==参考文献== | ||
<references/> | <references/> |