「ストレス」の版間の差分

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<font size="+1">[http://researchmap.jp/shusaku 内田 周作]、[http://researchmap.jp/read0207055 渡邉 義文]</font><br>
''山口大学 大学院 医学系研究科''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年5月9日 原稿完成日:2012年6月6日<br>
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br>
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英語名: stress 独:Belastung  仏:stress  
英語名: stress 独:Belastung  仏:stress  


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 ストレスとは、元来、環境の変動に対する生体の適応的な反応のことを示す。ストレスの原因は[[wikipedia:ja:ストレッサー|ストレッサー]]と呼ばれ、生体はストレッサーに応じて種々の反応(ストレス反応)を引き起こす。なお、日常語では、ストレッサーのことをストレスと言うことも多い。ストレスには生体にとって有益な快ストレスと不利益な不快ストレスの2種類がある。[[wikipedia:ja:ヒト|ヒト]]が通常の生活を送るためには、これらのストレスが適度なバランスを保って生体の[[wikipedia:ja:恒常性|恒常性]]を維持する必要がある。しかし近年のストレス社会を背景に、過度なストレス負荷によって脳機能のバランスが失われてしまう場合がある。ストレスレベルがある[[閾値]]を超えてしまうと、それが原因で脳や身体に障害が発生する。このストレスによる心身の疲弊のことを[[wikipedia:allostatic load|アロスタティック負荷]]と呼ぶ。
 ストレスとは、元来、環境の変動に対する生体の適応的な反応のことを示す。ストレスの原因は[[wikipedia:ja:ストレッサー|ストレッサー]]と呼ばれ、生体はストレッサーに応じて種々の反応(ストレス反応)を引き起こす。なお、日常語では、ストレッサーのことをストレスと言うことも多い。ストレスには生体にとって有益な快ストレスと不利益な不快ストレスの2種類がある。[[wikipedia:ja:ヒト|ヒト]]が通常の生活を送るためには、これらのストレスが適度なバランスを保って生体の[[wikipedia:ja:恒常性|恒常性]]を維持する必要がある。しかし近年のストレス社会を背景に、過度なストレス負荷によって脳機能のバランスが失われてしまう場合がある。ストレスレベルがある[[閾値]]を超えてしまうと、それが原因で脳や身体に障害が発生する。このストレスによる心身の疲弊のことを[[wikipedia:allostatic load|アロスタティック負荷]]と呼ぶ。
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==ストレス神経系==
==ストレス神経系==
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===視床下部===
===視床下部===


 視床下部は脳底部に位置し、[[自律神経]]機能の制御を担う中枢で、[[交感神経]]・[[副交感神経]]機能および[[内分泌]]機能を調節している。また、視床下部は[[摂食行動]]・[[性行動]]・[[睡眠]]などの[[本能行動]]の中枢、および不安や怒りといった情動行動制御の中枢と考えられている。さらに視床下部はストレス反応の中枢であり、特に視床下部[[室傍核]]ではストレスに応答して種々の[[神経ペプチド]]・ホルモン群が産生・分泌され、生体のストレス反応に対して重要な役割を担っている。
 視床下部は脳底部に位置し、[[自律神経]]機能の制御を担う中枢で、[[交感神経]]・[[副交感神経]]機能および[[内分泌]]機能を調節している。また、視床下部は[[摂食行動]]・[[性行動]]・[[睡眠]]などの[[本能行動]]の中枢、および不安や怒りといった情動行動制御の中枢と考えられている。さらに視床下部はストレス反応の中枢であり、特に[[視床下部室傍核]]ではストレスに応答して種々の[[神経ペプチド]]・ホルモン群が産生・分泌され、生体のストレス反応に対して重要な役割を担っている。


==視床下部-下垂体-副腎系==
==視床下部-下垂体-副腎系==
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<references/>
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(執筆者:内田周作、渡辺義文 担当編集委員:加藤忠史)