「ヒストンメチル基転移酵素」の版間の差分

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====タンパク質アルギニンメチル基転移酵素ファミリー====
====タンパク質アルギニンメチル基転移酵素ファミリー====
 Prmt1が神経系疾患に関与していることが報告されている。[[fused in sarcoma]] ([[FUS]])遺伝子の変異は[[筋萎縮性側索硬化症]] ([[amyotrophic lateral sclerosis]], [[ALS)]]の原因の1つであり、[[前頭側頭型認知症]] ([[frontotemporal dementia]], [[FTD]])にも関与するが、Prmt1をノックアウトするとこれらの疾患に関連するFUS変異体による[[細胞毒性]]が増強される<ref name=Vance2009><pubmed>19251628</pubmed></ref><ref name=Tradewell2012><pubmed>21965298</pubmed></ref><ref name=Yamaguchi2012><pubmed>23152885</pubmed></ref>。この結果から、Prmt1がFUSのメチル化を介して、細胞内での凝集体形成や細胞毒性の抑制に寄与することが示唆されている。
 Prmt1が神経系疾患に関与していることが報告されている。[[fused in sarcoma]] ([[FUS]])遺伝子の変異は[[筋萎縮性側索硬化症]] ([[amyotrophic lateral sclerosis]], [[ALS]])の原因の1つであり、[[前頭側頭型認知症]] ([[frontotemporal dementia]], [[FTD]])にも関与するが、Prmt1をノックアウトするとこれらの疾患に関連するFUS変異体による[[細胞毒性]]が増強される<ref name=Vance2009><pubmed>19251628</pubmed></ref><ref name=Tradewell2012><pubmed>21965298</pubmed></ref><ref name=Yamaguchi2012><pubmed>23152885</pubmed></ref>。この結果から、Prmt1がFUSのメチル化を介して、細胞内での凝集体形成や細胞毒性の抑制に寄与することが示唆されている。


 さらにPrmt1 は、アポトーシス促進性の[[BCL-2 antagonist of cell death]]([[BAD]])タンパク質をメチル化することにより[[Akt]]からのリン酸化を阻害し、その結果アポトーシスを亢進させることが示されている<ref name=Sakamaki2011><pubmed>21444773</pubmed></ref>。最近の報告によると、[[Btg1]]ノックアウト[[髄芽腫]]モデルマウスでは、Prmt1の発現が増加し、このPrmt1-BAD軸を介して腫瘍のアポトーシスを亢進することで、腫瘍の発生を抑制している。<ref name=Ceccarelli2020><pubmed>32231994</pubmed></ref>。一方で[[神経膠腫]]細胞株においてPrmt1をノックダウンすると、細胞周期が停止し、アポトーシスに至った<ref name=Wang2012><pubmed>22917032</pubmed></ref>。これらの結果は、Prmt1が様々な種類の腫瘍細胞において異なる機能を果たす可能性を示唆している。
 さらにPrmt1 は、アポトーシス促進性の[[BCL-2 antagonist of cell death]]([[BAD]])タンパク質をメチル化することにより[[Akt]]からのリン酸化を阻害し、その結果アポトーシスを亢進させることが示されている<ref name=Sakamaki2011><pubmed>21444773</pubmed></ref>。最近の報告によると、[[Btg1]]ノックアウト[[髄芽腫]]モデルマウスでは、Prmt1の発現が増加し、このPrmt1-BAD軸を介して腫瘍のアポトーシスを亢進することで、腫瘍の発生を抑制している。<ref name=Ceccarelli2020><pubmed>32231994</pubmed></ref>。一方で[[神経膠腫]]細胞株においてPrmt1をノックダウンすると、細胞周期が停止し、アポトーシスに至った<ref name=Wang2012><pubmed>22917032</pubmed></ref>。これらの結果は、Prmt1が様々な種類の腫瘍細胞において異なる機能を果たす可能性を示唆している。