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Yukotanibuchi (トーク | 投稿記録) 細 (→報酬系回路) |
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<font size="+1">[http://researchmap.jp/9391383089 松本 俊彦]</font><br> | <font size="+1">[http://researchmap.jp/9391383089 松本 俊彦]</font><br> | ||
''独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究部 薬物依存研究部/自殺予防総合対策センター''<br> | ''独立行政法人国立精神・神経医療研究センター精神保健研究部 薬物依存研究部/自殺予防総合対策センター''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2014年1月8日 原稿完成日:2014年1月31日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/tadafumikato 加藤 忠史](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | ||
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== 行動嗜癖とは == | == 行動嗜癖とは == | ||
行動嗜癖とは、ある特定の行動や一連の行動プロセスがもたらす高揚感や、不安や怒りの軽減、緊張からの解放など、不快感情の軽減が一種の報酬効果となって反復化・[[習慣]]化し、心理社会的もしくは健康上の問題をもたらしていることを知りながらも、その行動をとめることができない状態を意味する。しばしばその行動に対する[[自己制御]]困難の感覚も伴っている。この自己制御困難感の強い病態では、[[強迫]]との境界は不明瞭になるが、そもそも本人がその行動を好んでおり、本人が自ら主体的にその行動を選択しているという点において、強迫とは区別される。 | |||
この行動嗜癖という臨床概念は、[[病的ギャンブリング]](pathological gambling)や[[インターネット・ゲーム障害]](internet gaming disorder)、窃盗癖(kleptomania)などの他、買い物、暴力・虐待、自傷、性的逸脱行動、[[摂食障害#過食|過食]]・嘔吐、放火、携帯電話など、多様な行動上の問題と関連しており、現状では不均質な症候群といわざるを得ない。なかには日常的で必要不可欠な社会的行為もあり、その点では、正常とのあいだに質的な差異はなく、あくまでも量的に逸脱した病態といえる。また、病態を説明する生物学的根拠がいまだ不十分なことも、行動嗜癖の位置づけを難しくさせている。物質[[依存症]]の場合、すでに精神作用物質の習慣的摂取による脳内変化や生理学的依存の存在が明らかにされており、それに依拠して依存症概念が確立された経緯がある。 | この行動嗜癖という臨床概念は、[[病的ギャンブリング]](pathological gambling)や[[インターネット・ゲーム障害]](internet gaming disorder)、窃盗癖(kleptomania)などの他、買い物、暴力・虐待、自傷、性的逸脱行動、[[摂食障害#過食|過食]]・嘔吐、放火、携帯電話など、多様な行動上の問題と関連しており、現状では不均質な症候群といわざるを得ない。なかには日常的で必要不可欠な社会的行為もあり、その点では、正常とのあいだに質的な差異はなく、あくまでも量的に逸脱した病態といえる。また、病態を説明する生物学的根拠がいまだ不十分なことも、行動嗜癖の位置づけを難しくさせている。物質[[依存症]]の場合、すでに精神作用物質の習慣的摂取による脳内変化や生理学的依存の存在が明らかにされており、それに依拠して依存症概念が確立された経緯がある。 | ||
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こうした経緯から、行動嗜癖を物質依存症と同じカテゴリーに含めることについては、いまだ専門家のあいだでも議論がある<ref name=ref1><pubmed>11691967</pubmed></ref>。実際、行動嗜癖を物質依存症と同じカテゴリーに含めるかどうかについては、1980年代前半から検討され続けられながらも、実際には、[[Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 4th edition]] ([[DSM-IV]])においては「[[衝動制御の障害]]」という疾患分類に、また、[[International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems]] ([[ICD-10]])においては「[[習慣及び衝動の障害]]」の項目に入れられていた。 | こうした経緯から、行動嗜癖を物質依存症と同じカテゴリーに含めることについては、いまだ専門家のあいだでも議論がある<ref name=ref1><pubmed>11691967</pubmed></ref>。実際、行動嗜癖を物質依存症と同じカテゴリーに含めるかどうかについては、1980年代前半から検討され続けられながらも、実際には、[[Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders 4th edition]] ([[DSM-IV]])においては「[[衝動制御の障害]]」という疾患分類に、また、[[International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems]] ([[ICD-10]])においては「[[習慣及び衝動の障害]]」の項目に入れられていた。 | ||
しかしその一方で、行動嗜癖には、その行動が存在することで本人の生活機能や社会的機能、さらには本人及び周囲に深刻な主観的苦痛をもたらすのは事実である。そしてその行動には、依存性物質に対する渇望に似た強い衝動や強迫が認められ、しばしば自己制御が困難である。また、その行動におよんだ直後には、精神的緊張からの解放感や安堵感をもたらす。これらは、まさに物質依存症と共通する特徴である。実際、物質依存症で確立された心理社会的治療や支援を援用することで、一定の治療成果を上げているという現実もある。近年では、後述するように、動物実験研究や[[神経画像的研究]]における物質依存症と共通した生物学的根拠の存在を指摘する報告が増え、特に病的ギャンブリングは生物学的知見に関する報告も多い。 | |||
こうした状況のなかで、病的ギャンブリングについては、2013年5月に発表された[[DSM-5]]において、物質依存症と同じ診断カテゴリーである、「[[物質関連と嗜癖の障害]](substance-related and addictive disorders)」に分類されることになった。また、将来、正式な精神障害の診断カテゴリーとして採用される候補として、インターネット・ゲーム障害が示唆されている。 | こうした状況のなかで、病的ギャンブリングについては、2013年5月に発表された[[DSM-5]]において、物質依存症と同じ診断カテゴリーである、「[[物質関連と嗜癖の障害]](substance-related and addictive disorders)」に分類されることになった。また、将来、正式な精神障害の診断カテゴリーとして採用される候補として、インターネット・ゲーム障害が示唆されている。 | ||
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#その行動のために、それに代わる(適応的、建設的な)楽しみを無視するようになり、当該行動に関わる時間や、当該行動からの回復(行動をやめること)に時間がかかる | #その行動のために、それに代わる(適応的、建設的な)楽しみを無視するようになり、当該行動に関わる時間や、当該行動からの回復(行動をやめること)に時間がかかる | ||
#明らかに有害な結果が生じているにもかかわらず、その行動を続ける | #明らかに有害な結果が生じているにもかかわらず、その行動を続ける | ||
== 行動嗜癖の脳内メカニズム == | == 行動嗜癖の脳内メカニズム == |