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<font size="+1">澤村 晴志朗、[http://researchmap.jp/nakaoakito 中尾 章人]、[http://researchmap.jp/ymori 森 泰生]</font><br> | <font size="+1">澤村 晴志朗、[http://researchmap.jp/nakaoakito 中尾 章人]、[http://researchmap.jp/ymori 森 泰生]</font><br> | ||
''京都大学 工学系研究科 (研究院)''<br> | ''京都大学 工学系研究科 (研究院)''<br> | ||
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2012年7月31日 原稿完成日:2013年8月12日<br> | |||
担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](独立行政法人理化学研究所 脳科学総合研究センター)<br> | ||
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==== Ca<sub>v</sub>2 (N, P/Q, R型) ==== | ==== Ca<sub>v</sub>2 (N, P/Q, R型) ==== | ||
非L型 (Ca<sub>v</sub>2) には[[N型電位依存性カルシウムチャネル|N]]、[[P/Q型電位依存性カルシウムチャネル|P/Q]]、[[R型電位依存性カルシウムチャネル|R型]] | 非L型 (Ca<sub>v</sub>2) には[[N型電位依存性カルシウムチャネル|N]]、[[P/Q型電位依存性カルシウムチャネル|P/Q]]、[[R型電位依存性カルシウムチャネル|R型]]が含まれる。 | ||
'''N型''' (Ca<sub>v</sub>2.2) には、L型ではない (<u>N</u>on-L) 、[[神経細胞]]に発現する (<u>N</u>euronal) という意味がある<ref name="ref6"><pubmed>2410796</pubmed></ref>。ペプチド性の[[wj:イモ貝|イモ貝]]毒[[ω-コノトキシン GVIA]]により選択的に阻害される<ref><pubmed>2438698</pubmed></ref>。 | |||
'''P型'''(Ca<sub>v</sub>2.1)は[[小脳]][[プルキンエ細胞|プルキンエ (<u>P</u>urkinje) 細胞]]においてDHPとω-コノトキシン GVIAの両方に非感受性のCa<sup>2+</sup>電流として同定された<ref><pubmed> 2545128</pubmed></ref>。クモ毒[[ω-アガトキシンIVA]]によって選択的に阻害される<ref><pubmed>1321648</pubmed></ref>。 | |||
'''Q型'''は、同じ遺伝子 (Ca<sub>v</sub>2.1) の[[wj:スプライスバリアント|スプライスバリアント]]であると考えられており<ref name="ref11" />、小脳顆粒細胞において初めて電流が同定された。Q型はP型よりω-アガトキシンIVAに対する親和性が低い<ref><pubmed>7722641</pubmed></ref>。 | |||
'''R型''' (Ca<sub>v</sub>2.3) は小脳顆粒細胞においてDHP、ω-コノトキシン GVIA、ω-アガトキシンIVAによって阻害されない残りの成分 (<u>R</u>esidual) という意味で名づけられ<ref name=ref11><pubmed>10321243</pubmed></ref>、[[wj:タランチュラ|タランチュラ]]毒素[[SNX-482]]によって選択的に阻害される<ref><pubmed> 9799496</pubmed></ref>。これら非L型のVDCCは広く神経系に発現している<ref name="ref3" />。 | |||
==== Ca<sub>v</sub>3 (T型) ==== | ==== Ca<sub>v</sub>3 (T型) ==== | ||
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α<sub>2</sub>δ、βおよびγサブユニットは、チャネル本体であるα<sub>1</sub>サブユニットの発現調節、機能調節や細胞内局在に重要であり、複数の遺伝子によってコードされている<ref name="ref13"><pubmed>3037387</pubmed></ref>。 | α<sub>2</sub>δ、βおよびγサブユニットは、チャネル本体であるα<sub>1</sub>サブユニットの発現調節、機能調節や細胞内局在に重要であり、複数の遺伝子によってコードされている<ref name="ref13"><pubmed>3037387</pubmed></ref>。 | ||
大きな細胞外領域を有するα<sub>2</sub>δサブユニットは、単一の遺伝子にコードされるα<sub>2</sub>およびδが[[wikipedia:ja:ジスルフィド結合|ジスルフィド結合]]によって結ばれた二量体で、4種類のアイソフォームが知られる (α<sub>2</sub>δ1-4)。α<sub>2</sub>δサブユニットは、α<sub>1</sub>サブユニットの形質膜への輸送に働いている<ref name="ref14"><pubmed>17403543</pubmed></ref> | ==== α<sub>2</sub>δサブユニット ==== | ||
大きな細胞外領域を有するα<sub>2</sub>δサブユニットは、単一の遺伝子にコードされるα<sub>2</sub>およびδが[[wikipedia:ja:ジスルフィド結合|ジスルフィド結合]]によって結ばれた二量体で、4種類のアイソフォームが知られる (α<sub>2</sub>δ1-4)。α<sub>2</sub>δサブユニットは、α<sub>1</sub>サブユニットの形質膜への輸送に働いている<ref name="ref14"><pubmed>17403543</pubmed></ref>。 | |||
==== βサブユニット ==== | |||
α<sub>1</sub>サブユニットのリピートIとIIをつなぐ細胞内リンカーに結合するβサブユニットは、4種類のアイソフォームが知られている (β1-4)。このβサブユニットは、α<sub>1</sub>サブユニットの形質膜における機能的な発現に重要であり<ref name="ref15"><pubmed>1849233</pubmed></ref>、VDCCの活性化や不活性化を促進する<ref name="ref16"><pubmed>20959621</pubmed></ref>。各アイソフォームには複数のスプライスバリアントが存在し、発現分布やチャネル機能の調節に違いがある<ref name="ref16" />。 | |||
==== γサブユニット ==== | |||
γサブユニットは4回膜貫通のタンパク質であり、VDCCと相互作用することで不活性化曲線をシフトさせる<ref name="ref17"><pubmed>17652770</pubmed></ref>。γサブユニットには8種類のアイソフォームが存在し (γ1~8)、その中のいくつかのアイソフォームは、[[AMPA型グルタミン酸受容体]] (2-amino-3-[3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazolyl]propionic acid receptor) の輸送や機能調節を担う主要なタンパク質[[TARPs]] (Transmembrane AMPA receptor regulatory proteins) とも呼ばれている<ref name="ref17" />。 | |||
== 機能 == | == 機能 == | ||
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Ca<sub>v</sub>1.2遺伝子 (''CACNA1C'') は、心臓の[[wikipedia:ja:QT時間|QT延長]]や、[[wikipedia:ja:合指|合指]]、[[自閉症]]といった症状を示す[[Timothy症候群]]の原因遺伝子である<ref name="ref4" /><ref name="ref33"><pubmed>15000527</pubmed></ref>。 | Ca<sub>v</sub>1.2遺伝子 (''CACNA1C'') は、心臓の[[wikipedia:ja:QT時間|QT延長]]や、[[wikipedia:ja:合指|合指]]、[[自閉症]]といった症状を示す[[Timothy症候群]]の原因遺伝子である<ref name="ref4" /><ref name="ref33"><pubmed>15000527</pubmed></ref>。 | ||
Ca<sub>v</sub>2.1遺伝子 (''CACNA1A'') | Ca<sub>v</sub>2.1遺伝子 (''CACNA1A'') は、運動失調を呈する[[脊髄小脳失調症]]6型、[[家族性偏頭痛]]1型、発作性[[小脳失調]]を呈する[[反復発作性失調症]]2型などの原因遺伝子である。また、運動失調や[[てんかん]]症状を呈する変異マウスtottering、leaner、rolling Nagoyaの原因遺伝子でもある<ref name="ref31" />。 | ||
Ca<sub>v</sub>3.1遺伝子 (''CACNA1G'') は、[[若年ミオクロニーてんかん]]の原因遺伝子である。 | Ca<sub>v</sub>3.1遺伝子 (''CACNA1G'') は、[[若年ミオクロニーてんかん]]の原因遺伝子である。 | ||
Ca<sub>v</sub>3.2遺伝子 (''CACNA1H'') は、[[小児欠神てんかん]]や[[突発性全般てんかん]]、また自閉症スペクトラム障害との関連が示唆されている<ref name="ref34"><pubmed> 19071165</pubmed></ref>。 | Ca<sub>v</sub>3.2遺伝子 (''CACNA1H'') は、[[小児欠神てんかん]]や[[突発性全般てんかん]]、また自閉症スペクトラム障害との関連が示唆されている<ref name="ref34"><pubmed> 19071165</pubmed></ref>。 | ||
== その他のCa<sup>2+</sup>チャネル == | == その他のCa<sup>2+</sup>チャネル == |