「嗅覚受容体」の版間の差分

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 嗅覚受容体は、匂い物質がもつ化学情報を電気信号に変換し、神経細胞の興奮をもたらし、脳に伝達する役目をもつ。
 嗅覚受容体は、匂い物質がもつ化学情報を電気信号に変換し、神経細胞の興奮をもたらし、脳に伝達する役目をもつ。


 リガンドである匂い分子が結合すると、受容体と共役している[[3量体Gタンパク質]]の[[αサブユニット]]、[[Gα<sub>olf</sub>]]が[[Gβ|β]]、[[Gγ|γ]]サブユットと解離し、[[GDP]]型から[[GTP]]型への変換を受け、活性化される。活性化Gα<sub>olf</sub>が[[アデニル酸シクラーゼ]]の活性化を引き起こし、細胞内cAMP濃度の上昇をもたらすと[[環状ヌクレオチド作動性チャネル]]([[cyclic nucleotide-gated channel]], [[CNG]])が開口し、Na<sup>+</sup>イオン、[[カルシウム|Ca<sup>2+</sup>イオン]]の流入による[[細胞膜]]の[[脱分極]]がおきる。細胞内Ca<sup>2+</sup>イオン濃度の上昇は、Ca<sup>2+</sup>作動性Cl<sup>-</sup>チャネル, transmembrane protein16B (TMEM16B, 別名 anoctamin 2, calcium-activated chloride channel, ANO2)の活性化をもたらし、[[塩化物イオン|Cl<sup>-</sup>イオン]]が細胞外へ流出することでより大きな脱分極が起きる。これにより、神経細胞の[[活動電位]]が生じる。シグナルを終結させる機構として、CNGのcAMPによるチャネルの開口がCa<sup>2+</sup>濃度依存的な[[フィードバック制御]]をうけること、細胞内濃度が上昇したCa<sup>2+</sup>は、Na+/Ca<sup>2+</sup>交換体である[[Na+/Ca2+-exchanger isoform 4|Na<sup>+</sup>/Ca<sup>2+</sup>-exchanger isoform 4]] (NCKX4)によって細胞外へ排出されることが明らかになっている。
 リガンドである匂い分子が結合すると、受容体と共役している[[3量体Gタンパク質]]の[[αサブユニット]]、[[Gαolf|Gα<sub>olf</sub>]]が[[Gβ|β]]、[[Gγ|γ]]サブユットと解離し、[[GDP]]型から[[GTP]]型への変換を受け、活性化される。活性化Gα<sub>olf</sub>が[[アデニル酸シクラーゼ]]の活性化を引き起こし、細胞内cAMP濃度の上昇をもたらすと[[環状ヌクレオチド作動性チャネル]]([[cyclic nucleotide-gated channel]], [[CNG]])が開口し、Na<sup>+</sup>イオン、[[カルシウム|Ca<sup>2+</sup>イオン]]の流入による[[細胞膜]]の[[脱分極]]がおきる。細胞内Ca<sup>2+</sup>イオン濃度の上昇は、Ca<sup>2+</sup>作動性Cl<sup>-</sup>チャネル, transmembrane protein16B (TMEM16B, 別名 anoctamin 2, calcium-activated chloride channel, ANO2)の活性化をもたらし、[[塩化物イオン|Cl<sup>-</sup>イオン]]が細胞外へ流出することでより大きな脱分極が起きる。これにより、神経細胞の[[活動電位]]が生じる。シグナルを終結させる機構として、CNGのcAMPによるチャネルの開口がCa<sup>2+</sup>濃度依存的な[[フィードバック制御]]をうけること、細胞内濃度が上昇したCa<sup>2+</sup>は、Na+/Ca<sup>2+</sup>交換体である[[Na+/Ca2+-exchanger isoform 4|Na<sup>+</sup>/Ca<sup>2+</sup>-exchanger isoform 4]] (NCKX4)によって細胞外へ排出されることが明らかになっている。


 嗅覚受容体とリガンドである匂い分子との対応関係は、一部の例外を除いては、「多対多」の関係にある。すなわち、一つの受容体は、複数の匂い分子に応答し、一つの匂い分子は複数の受容体応答を生み出すため、異なる匂いは、応答受容体の組み合わせパターンの違いによって識別される。この仕組みは“[[combinatorial coding]]”と呼ばれ<ref name=Malnic1999><pubmed>10089886</pubmed></ref>、受容体数をはるかに超える膨大な種類の匂いの嗅ぎ分けを可能にする。
 嗅覚受容体とリガンドである匂い分子との対応関係は、一部の例外を除いては、「多対多」の関係にある。すなわち、一つの受容体は、複数の匂い分子に応答し、一つの匂い分子は複数の受容体応答を生み出すため、異なる匂いは、応答受容体の組み合わせパターンの違いによって識別される。この仕組みは“[[combinatorial coding]]”と呼ばれ<ref name=Malnic1999><pubmed>10089886</pubmed></ref>、受容体数をはるかに超える膨大な種類の匂いの嗅ぎ分けを可能にする。