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担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](京都大学大学院医学研究科 システム神経薬理学分野)<br> | 担当編集委員:[http://researchmap.jp/2rikenbsi 林 康紀](京都大学大学院医学研究科 システム神経薬理学分野)<br> | ||
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英:long-term potentiation 独:Langzeitpotenzierung 仏: potentialisation à long terme<br> | |||
英略語:LTP | |||
{{box|text= | {{box|text= シナプスにおける情報伝達の効率は常に一定に保たれているわけではなく、むしろニューロンの活動履歴に応じて柔軟に変化することが知られている。このような神経活動依存的なシナプス伝達の持続的変容をシナプス可塑性と呼ぶが、中でもシナプス伝達効率が長期的に増強される現象を長期増強(long-term potentiation, LTP)と呼ぶ。LTPは数時間から、場合によっては数カ月間も持続することが知られており、その持続時間の長さから記憶・学習の基本過程であると考えられてきた。}} | ||
== 長期増強とは == | == 長期増強とは == | ||
シナプスの伝達効率は神経の活動履歴に応じて柔軟に変化することが知られている。このような変化をシナプス可塑性 (synaptic plasticity) と呼び、代表的なものに長期増強(long-term potentiation | シナプスの伝達効率は神経の活動履歴に応じて柔軟に変化することが知られている。このような変化をシナプス可塑性 (synaptic plasticity) と呼び、代表的なものに長期増強(long-term potentiation, LTP)や長期抑圧(long-term depression LTD)がある。一般的に、シナプス伝達効率の増強が1時間以上持続する場合をLTPと呼び、それよりも短い場合は短期増強(short-term potentiation, STP)と呼ばれることが多い。LTPは、数時間から、場合によっては数カ月も持続する現象であるが、時間経過に沿って、タンパク質合成を伴わない前期LTP(early-LTP, E-LTP)と、タンパク合成をともなう後期 LTP (Late-LTP, L-LTP)とに区分する場合もある。 | ||
LTPは様々な脳領域において観察される現象であるが、特に陳述記憶の中枢である海馬において、他の領域と比較してより容易に誘導されること、また後述するLTPの基本的特性(共同性、入力特異性、連合性)が記憶のもつ特性と類似性を持つこと、さらにLTPが長い持続性を示す現象であることから、学習や記憶形成の細胞レベルでの基礎過程であると考えられてきた。一般的に、LTPがおきる機序は、誘導(induction)、発現(expression)、維持 (maintenance)の2つのステップにわけることができるとされ、それぞれのステップを担う分子機序の解明が盛んに試みられている。 | |||
1966年の北欧での学会で、Lømoにより海馬歯状回でのシナプス伝達効率が高頻度刺激により長時間にわたって増強される現象、すなわちLTPの存在、が初めて報告された<ref name=Lømo1966>'''Lømo, T. (1966).'''<br>Frequency potentiation of excitatory synaptic activity in the dentate area of the hippocampal formation. Acta Physiol. Scand. 68 (Suppl. 277): 128</ref>(1)。これを体系的にまとめたのがBlissとLømoによる1973年の論文である<ref name=Bliss1973a><pubmed>4727084</pubmed></ref>(2)。これらの研究では、麻酔下のウサギ海馬歯状回からガラス管微小電極を用いて興奮性シナプス応答を記録し、歯状回への入力線維である貫通線維(perforant path)を高頻度で刺激することによってLTPが誘導されることが示されたが、より生理的条件に近い無麻酔のウサギにおいても同様の現象が誘導できることも同時に報告された<ref name=Bliss1973b><pubmed>4727085</pubmed></ref>(3)。さらに、LTPが記憶形成を十分説明しうるだけの持続時間を示すことなどから、記憶・学習との関連性が指摘され、その発生機序を明らかにする研究がその後展開されることになった。 | 1966年の北欧での学会で、Lømoにより海馬歯状回でのシナプス伝達効率が高頻度刺激により長時間にわたって増強される現象、すなわちLTPの存在、が初めて報告された<ref name=Lømo1966>'''Lømo, T. (1966).'''<br>Frequency potentiation of excitatory synaptic activity in the dentate area of the hippocampal formation. Acta Physiol. Scand. 68 (Suppl. 277): 128</ref>(1)。これを体系的にまとめたのがBlissとLømoによる1973年の論文である<ref name=Bliss1973a><pubmed>4727084</pubmed></ref>(2)。これらの研究では、麻酔下のウサギ海馬歯状回からガラス管微小電極を用いて興奮性シナプス応答を記録し、歯状回への入力線維である貫通線維(perforant path)を高頻度で刺激することによってLTPが誘導されることが示されたが、より生理的条件に近い無麻酔のウサギにおいても同様の現象が誘導できることも同時に報告された<ref name=Bliss1973b><pubmed>4727085</pubmed></ref>(3)。さらに、LTPが記憶形成を十分説明しうるだけの持続時間を示すことなどから、記憶・学習との関連性が指摘され、その発生機序を明らかにする研究がその後展開されることになった。 | ||
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[[ファイル:Kobayashi LTP Fig1.png|サムネイル|'''図1. LTP誘導機構'''<br> | [[ファイル:Kobayashi LTP Fig1.png|サムネイル|'''図1. LTP誘導機構'''<br> | ||
'''A.''' 定常状態における神経伝達:シナプス前終末から放出されたグルタミン酸(●)が、シナプス後細胞に発現しているAMPA型グルタミン酸受容体を活性化することにより、ナトリウムイオンの流入、カリウムイオンの流出が起きる。放出されたグルタミン酸は、NMDA型受容体にも結合するが、細胞外のマグネシウムイオン(<span style="color:red">●</span>)により受容体チャネルがブロックされているため、イオンの移動は起きない。<br> | '''A.''' 定常状態における神経伝達:シナプス前終末から放出されたグルタミン酸(●)が、シナプス後細胞に発現しているAMPA型グルタミン酸受容体を活性化することにより、ナトリウムイオンの流入、カリウムイオンの流出が起きる。放出されたグルタミン酸は、NMDA型受容体にも結合するが、細胞外のマグネシウムイオン(<span style="color:red">●</span>)により受容体チャネルがブロックされているため、イオンの移動は起きない。<br> | ||
'''B.''' 刺激によりシナプス後細胞が強く脱分極すると、NMDA型グルタミン酸受容体のマグネシウムブロックが外れ、ナトリウム、カリウムイオンの移動とともに、細胞内へとカルシウムイオンの流入がおきる。]] | '''B.''' 刺激によりシナプス後細胞が強く脱分極すると、NMDA型グルタミン酸受容体のマグネシウムブロックが外れ、ナトリウム、カリウムイオンの移動とともに、細胞内へとカルシウムイオンの流入がおきる。]][[ファイル:Kobayashi LTP Fig2.jpg|サムネイル|'''図2. シナプス後性LTP'''<br> | ||
'''A.''' シャッファー側枝-CA1シナプスにおけるシナプス後性LTPの例。上段はテタヌス刺激前後の興奮性シナプス後電位(excitatory postsynaptic potential: EPSP)の傾き(EPSP slope) の経時変化をプロットしている。100Hz、1秒刺激(上向き矢印)以降、持続的にシナプス応答が増大している。下段は上段プロット図中の数字で示した時間において記録されたEPSPの波形を示している。<br> | |||
'''B, C.''' LTP発現機構の模式図<br> | |||
'''B.''' シナプス後細胞に発現するAMPA型グルタミン酸受容体が増加する際には、エクソサイトーシスにより新たに細胞表面に受容体が発現する可能性(左)や、シナプス外に発現していた受容体が、側方拡散によってPSDへと移行する可能性(右)が考えられている。<br> | |||
'''C.''' AMPA型受容体がリン酸化を受け、単一チャネルのコンダクタンスが増大(右)することで、シナプス応答が増大するとする説も唱えられている。]] | |||
== 機序 == | == 機序 == | ||
LTPの機序に関しては海馬シャッファー側枝-CA1シナプスに代表されるシナプス後性のヘブ型シナプスに関して研究が進んでいる。大きく分けて、誘導、発現、維持の3つ機序に分けて考えられる。嗅内野貫通線維-海馬歯状回や大脳皮質興奮性神経細胞でも似た機序によりLTPが起こると考えられる。 | LTPの機序に関しては海馬シャッファー側枝-CA1シナプスに代表されるシナプス後性のヘブ型シナプスに関して研究が進んでいる。大きく分けて、誘導、発現、維持の3つ機序に分けて考えられる。嗅内野貫通線維-海馬歯状回や大脳皮質興奮性神経細胞でも似た機序によりLTPが起こると考えられる。 | ||
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====発現 ==== | ====発現 ==== | ||
誘導後に起こるシナプスの変化を発現 (expression) | 誘導後に起こるシナプスの変化を発現 (expression) と呼ぶ。シナプス伝達効率の持続的な増強を支える基盤機構であるため、その変化がシナプスのどこで起きているのかが早くから関心を集め、盛んに研究が行われた。 | ||
=====部位をめぐる論争:シナプス前性か?シナプス後性か?===== | |||
量子解析(quantal analysis)を用いた研究において、変動係数(coefficient of variation: CV)の変化、およびシナプス応答欠損(synaptic failure)の減少が確認されたことから、LTPはシナプス前終末からの神経伝達物質放出確率(release probability: Pr)の増加に起因するとの説が、当初有力であった<ref name=Bekkers1990><pubmed>2167454</pubmed></ref><ref name=Malinow1990><pubmed>2164158</pubmed></ref>(15、16)。確かにこれらの実験結果は複数の異なる研究グループによって再現性が確かめられてはいたものの、一方でLTPが主にAMPA型グルタミン酸受容体を介したシナプス応答に選択的に認められる現象であることや<ref name=Kullmann1994><pubmed>7910467</pubmed></ref><ref name=Muller1988><pubmed>2904701</pubmed></ref>(17、18)、LTP中に実際にグルタミン酸放出が亢進しているという実験結果が得られなかったこと<ref name=Manabe1993><pubmed>7904300</pubmed></ref><ref name=Diamond1998><pubmed>9728923</pubmed></ref><ref name=Luscher1998><pubmed>9728924</pubmed></ref>(19、20、21)などとは矛盾しており、グルタミン酸放出の増加ではLTPを十分に説明することができないとする考えも多くあった。 | 量子解析(quantal analysis)を用いた研究において、変動係数(coefficient of variation: CV)の変化、およびシナプス応答欠損(synaptic failure)の減少が確認されたことから、LTPはシナプス前終末からの神経伝達物質放出確率(release probability: Pr)の増加に起因するとの説が、当初有力であった<ref name=Bekkers1990><pubmed>2167454</pubmed></ref><ref name=Malinow1990><pubmed>2164158</pubmed></ref>(15、16)。確かにこれらの実験結果は複数の異なる研究グループによって再現性が確かめられてはいたものの、一方でLTPが主にAMPA型グルタミン酸受容体を介したシナプス応答に選択的に認められる現象であることや<ref name=Kullmann1994><pubmed>7910467</pubmed></ref><ref name=Muller1988><pubmed>2904701</pubmed></ref>(17、18)、LTP中に実際にグルタミン酸放出が亢進しているという実験結果が得られなかったこと<ref name=Manabe1993><pubmed>7904300</pubmed></ref><ref name=Diamond1998><pubmed>9728923</pubmed></ref><ref name=Luscher1998><pubmed>9728924</pubmed></ref>(19、20、21)などとは矛盾しており、グルタミン酸放出の増加ではLTPを十分に説明することができないとする考えも多くあった。 | ||
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シナプスへと集積するAMPA型受容体は、細胞内のプールからエクソサイトーシスによって活動依存的にシナプスへと発現する(図2B, 左)という説のほか<ref name=Kennedy2011><pubmed>21382547</pubmed></ref><ref name=Makino2009><pubmed>19914186</pubmed></ref><ref name=Patterson2010><pubmed>20733080</pubmed></ref>(31、32、33)、シナプス外(extrasynaptic site)に発現しているAMPA型受容体が側方拡散(lateral diffusion)によってシナプスへと移行するという説(図2B, 右)などが唱えられている<ref name=Choquet2003><pubmed>12671642</pubmed></ref><ref name=Opazo2012><pubmed>22051694</pubmed></ref>(34、35)。 | シナプスへと集積するAMPA型受容体は、細胞内のプールからエクソサイトーシスによって活動依存的にシナプスへと発現する(図2B, 左)という説のほか<ref name=Kennedy2011><pubmed>21382547</pubmed></ref><ref name=Makino2009><pubmed>19914186</pubmed></ref><ref name=Patterson2010><pubmed>20733080</pubmed></ref>(31、32、33)、シナプス外(extrasynaptic site)に発現しているAMPA型受容体が側方拡散(lateral diffusion)によってシナプスへと移行するという説(図2B, 右)などが唱えられている<ref name=Choquet2003><pubmed>12671642</pubmed></ref><ref name=Opazo2012><pubmed>22051694</pubmed></ref>(34、35)。 | ||
[[ファイル:Kobayashi LTP Fig3.jpg|サムネイル|'''図3. シナプス前性LTPの例(海馬苔状線維-CA3シナプスにおけるLTP)'''<br> | [[ファイル:Kobayashi LTP Fig3.jpg|サムネイル|'''図3. シナプス前性LTPの例(海馬苔状線維-CA3シナプスにおけるLTP)'''<br> | ||
マウス海馬スライス標本の歯状回の細胞層にタングステン双極電極を刺入して顆粒細胞を電気刺激することにより苔状線維を発火させ、細胞外電位記録法によりCA3領域の透明層に刺入したガラス管記録電極で興奮性シナプス後電位(excitatory postsynaptic potential: EPSP)を記録している。0.1Hzでベースラインの反応を記録したあと、図中の上向き矢印の時点で100Hzの高頻度刺激を1秒間与え、その後、0.1Hzに戻してさらに1時間以上EPSPを記録しているが、シナプス応答が約2倍に増大し、持続している。高頻度刺激を与える際にNMDA受容体のアンタゴニストである<small>D</small>-APVを灌流投与した(グラフ中の黒いバー)条件下でLTPが誘導されていることから、苔状線維シナプスでのLTP誘導にはシナプス後細胞の活動が不要であることを示している。]] | マウス海馬スライス標本の歯状回の細胞層にタングステン双極電極を刺入して顆粒細胞を電気刺激することにより苔状線維を発火させ、細胞外電位記録法によりCA3領域の透明層に刺入したガラス管記録電極で興奮性シナプス後電位(excitatory postsynaptic potential: EPSP)を記録している。0.1Hzでベースラインの反応を記録したあと、図中の上向き矢印の時点で100Hzの高頻度刺激を1秒間与え、その後、0.1Hzに戻してさらに1時間以上EPSPを記録しているが、シナプス応答が約2倍に増大し、持続している。高頻度刺激を与える際にNMDA受容体のアンタゴニストである<small>D</small>-APVを灌流投与した(グラフ中の黒いバー)条件下でLTPが誘導されていることから、苔状線維シナプスでのLTP誘導にはシナプス後細胞の活動が不要であることを示している。]] | ||
==== 維持 ==== | ==== 維持 ==== | ||
シナプス伝達効率の持続的な増強の背景にある、何らかの継続的な生化学的変化のことを維持(maintenance)と呼ぶ。誘導や発現と比較すると、維持の分子機構は現在も不明な点が多い。 | シナプス伝達効率の持続的な増強の背景にある、何らかの継続的な生化学的変化のことを維持(maintenance)と呼ぶ。誘導や発現と比較すると、維持の分子機構は現在も不明な点が多い。 | ||
CaMKIIはカルシウム・カルモデュリンによる活性化を受けると、286番目のトレオニン残基(T286)が自己リン酸化され、持続活性型になるという性質をもつ。このことから、刺激による一過性のカルシウムイオン上昇を継続的な生化学的変化へと変換するキー分子としてLTPの維持においても重要な役割を果たしていると考えられてきた。しかし最近のFörster共鳴エネルギー移動(FRET)センサーを用いた、単一樹状突起スパインにおけるCaMKIIの活性化時間の評価によれば、CaMKIIの活性化は刺激後1分間程度と、従来想定されていたよりもはるかに短いことが報告されており<ref name=Lee2009><pubmed>19295602</pubmed></ref><ref name=Chang2017><pubmed>28521133</pubmed></ref><ref name=Saneyoshi2019><pubmed>31078368</pubmed></ref>、維持の分子機構に関しては今後さらなる研究が必要である。 | |||
=== シナプス前性LTP === | === シナプス前性LTP === | ||
シナプス前終末からの神経伝達物質の放出が長期間にわたり増加する現象を指す。原理的には、ひとつのシナプス小胞内に含まれる神経伝達物質の量が増えることでもLTPが発現し得るが、ほとんどの場合は、シナプス小胞からの神経伝達物質の放出確率が長期的に増加することにより発現する。 | シナプス前終末からの神経伝達物質の放出が長期間にわたり増加する現象を指す。原理的には、ひとつのシナプス小胞内に含まれる神経伝達物質の量が増えることでもLTPが発現し得るが、ほとんどの場合は、シナプス小胞からの神経伝達物質の放出確率が長期的に増加することにより発現する。 | ||
シナプス前性LTPの代表は、海馬CA3領域苔状線維 (mossy fiber) シナプスでのLTPである<ref name=Nicoll2005><pubmed>16261180</pubmed></ref><ref name=Zalutsky1990><pubmed>2114039</pubmed></ref>(27、46)。CA3錐体細胞への入力線維である苔状線維に100Hz程度の高頻度刺激を与えると、その直後にはシナプス応答が10倍程度に増大し(図3A、矢印)、それ以降は急速に漸減するが、約30分程度で、もとのレベルの2倍~数倍程度増強された状態で安定する。この際、シナプス後細胞の活動は必要なく、シナプス前終末の活動だけで誘導されることから、いわゆるヘブ型(Hebbian LTP)と区別し、非ヘブ型LTP(non-Hebbian | シナプス前性LTPの代表は、海馬CA3領域苔状線維 (mossy fiber) シナプスでのLTPである<ref name=Nicoll2005><pubmed>16261180</pubmed></ref><ref name=Zalutsky1990><pubmed>2114039</pubmed></ref>(27、46)。CA3錐体細胞への入力線維である苔状線維に100Hz程度の高頻度刺激を与えると、その直後にはシナプス応答が10倍程度に増大し(図3A、矢印)、それ以降は急速に漸減するが、約30分程度で、もとのレベルの2倍~数倍程度増強された状態で安定する。この際、シナプス後細胞の活動は必要なく、シナプス前終末の活動だけで誘導されることから、いわゆるヘブ型(Hebbian LTP)と区別し、非ヘブ型LTP(non-Hebbian LTP)と呼ばれる。長期的な放出確率の増大にシナプス前終末内のcAMPが関与していると考えられている<ref name=Weisskopf1994><pubmed>7916482</pubmed></ref>(47)。それに引き続く細胞内生化学過程についてはAキナーゼが関与するとの報告がある<ref name=Shahoha2022><pubmed>35444523</pubmed></ref> (48)。 | ||
== 参考文献 == | == 参考文献 == |