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==== 純粋失読 ==== | ==== 純粋失読 ==== | ||
[[純粋失読]](pure alexiaもしくはalexia without agraphia)は離断症候群の概念の成立の鍵になった重要な症状である。失語症とは異なり音声言語の障害は認められない。患者は文字を読むことができないが、書字は概ね保たれる。自分で書いた文字も後になると読めない。しかし、文字を指でなぞると読めることがある(schreibendes Lesen)。日本人では多くの場合、漢字も仮名も読めなくなる。最も多い病巣は左後大脳動脈の閉塞による左後頭葉の視覚野と脳梁膨大の複合病巣である。右脳の視覚野と、読み書きの中枢である左脳の[[角回]](angular gyrus)の離断によって生じる症状として説明されることが多い。左脳が健在なら、右脳の視覚野や脳梁が損傷されても左脳の視覚野から左角回への入力が可能であるため読みの障害は生じない。左手で文字をなぞった場合は残っている脳梁の前半部から運動情報が左脳へ伝えられるために音読が可能になる。また、脳梁膨大部を含まなくても左角回皮質直下や、[[側脳室]]後角の下外側の損傷によっても左半球内の離断による純粋失読が生じる場合がある。日本人の症例では漢字と仮名の音読成績の違いに関心がもたれている。特に左側頭葉後下部の損傷で漢字の読み書きに強い障害が生じことが示されており、漢字と仮名で読みの経路が異なる可能性が示唆されている<ref name=山鳥1985 /><ref name=河村1990>'''河村満 (1990).'''<br>純粋失読・純粋失書・失読失書の病態. 神経心理学, 6(1), 16-24.[ | [[純粋失読]](pure alexiaもしくはalexia without agraphia)は離断症候群の概念の成立の鍵になった重要な症状である。失語症とは異なり音声言語の障害は認められない。患者は文字を読むことができないが、書字は概ね保たれる。自分で書いた文字も後になると読めない。しかし、文字を指でなぞると読めることがある(schreibendes Lesen)。日本人では多くの場合、漢字も仮名も読めなくなる。最も多い病巣は左後大脳動脈の閉塞による左後頭葉の視覚野と脳梁膨大の複合病巣である。右脳の視覚野と、読み書きの中枢である左脳の[[角回]](angular gyrus)の離断によって生じる症状として説明されることが多い。左脳が健在なら、右脳の視覚野や脳梁が損傷されても左脳の視覚野から左角回への入力が可能であるため読みの障害は生じない。左手で文字をなぞった場合は残っている脳梁の前半部から運動情報が左脳へ伝えられるために音読が可能になる。また、脳梁膨大部を含まなくても左角回皮質直下や、[[側脳室]]後角の下外側の損傷によっても左半球内の離断による純粋失読が生じる場合がある。日本人の症例では漢字と仮名の音読成績の違いに関心がもたれている。特に左側頭葉後下部の損傷で漢字の読み書きに強い障害が生じことが示されており、漢字と仮名で読みの経路が異なる可能性が示唆されている<ref name=山鳥1985 /><ref name=河村1990>'''河村満 (1990).'''<br>純粋失読・純粋失書・失読失書の病態. 神経心理学, 6(1), 16-24.[https://cir.nii.ac.jp/crid/1570009750651805952 [DOI<nowiki>]</nowiki>] </ref>。 | ||
==== 左手の触覚性・運動性失読 ==== | ==== 左手の触覚性・運動性失読 ==== |