「アポトーシスプロテアーゼ活性化因子-1」の版間の差分

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 この研究によって内因性のアポトーシス実行経路が明らかになった。進化的にCed-4/Apaf-1が保存されているかのさらなる検討が[[ショウジョウバエ]]を用いてなされ、[[Dark]]/[[HAC-1]]/[[Dapaf-1]]が同定された。この遺伝子は発生や放射線で誘導されるアポトーシスに必要であることが示された<ref name=Rodriguez1999><pubmed>10559939</pubmed></ref><ref name=Zhou1999><pubmed>10619022</pubmed></ref><ref name=Kanuka1999><pubmed>10619023</pubmed></ref> [6][7][8]。
 この研究によって内因性のアポトーシス実行経路が明らかになった。進化的にCed-4/Apaf-1が保存されているかのさらなる検討が[[ショウジョウバエ]]を用いてなされ、[[Dark]]/[[HAC-1]]/[[Dapaf-1]]が同定された。この遺伝子は発生や放射線で誘導されるアポトーシスに必要であることが示された<ref name=Rodriguez1999><pubmed>10559939</pubmed></ref><ref name=Zhou1999><pubmed>10619022</pubmed></ref><ref name=Kanuka1999><pubmed>10619023</pubmed></ref> [6][7][8]。


[[ファイル:Miura Apaf-1 Fig1.png|サムネイル|'''図1. Apaf-1およびそのオルソログのドメイン構造と結合分子''']]
[[ファイル:Miura Apaf-1 Fig2.png|サムネイル|'''図2. Apaf-1とシトクロムcによるアポトソーム形成'''<br>アポトソーム形成の結果、プロカスパーゼ9が活性化され、アポトーシスが起こる。]]
== 構造 ==
== 構造 ==
 [[ヒト]]Apaf-1はN末端側から[[caspase recruitment domain]] (CARD)、[[α/β nucleotide-binding domain]] (NBD) と[[helical domain 1]] (HD1)、及び[[winged helix domain]] (WHD) からなる[[nucleotide-dependent oligomerization domain]] (NOD)、それに続く[[helical domain 2]] (HD2)、そしてC末端側の[[WD40リピート]]からなる2つの[[β-propellerドメイン]]からなる('''図1''')。CARDはプロカスパーゼ9のCARDとの相互作用を介して結合し、NODはNBD-HD1界面において[[ADP]]または[[ATP]]/dATPと結合し、β-propellerドメインはシトクロムcと結合する<ref name=Riedl2007><pubmed>17377525</pubmed></ref> [9]('''図1''')。通常、Apaf-1はADPと結合した不活性な単量体として存在する。[[ミトコンドリア]]膜間腔から漏出したシトクロムcと結合し、さらにADPがATP/dATPに置き換わることで構造が変化し、7量体からなるアポトソームを形成する<ref name=Cheng2016><pubmed>27697150</pubmed></ref><ref name=Dorstyn2018><pubmed>29765111</pubmed></ref> [10][11]('''図2''')。
 [[ヒト]]Apaf-1はN末端側から[[caspase recruitment domain]] (CARD)、[[α/β nucleotide-binding domain]] (NBD) と[[helical domain 1]] (HD1)、及び[[winged helix domain]] (WHD) からなる[[nucleotide-dependent oligomerization domain]] (NOD)、それに続く[[helical domain 2]] (HD2)、そしてC末端側の[[WD40リピート]]からなる2つの[[β-propellerドメイン]]からなる('''図1''')。CARDはプロカスパーゼ9のCARDとの相互作用を介して結合し、NODはNBD-HD1界面において[[ADP]]または[[ATP]]/dATPと結合し、β-propellerドメインはシトクロムcと結合する<ref name=Riedl2007><pubmed>17377525</pubmed></ref> [9]('''図1''')。通常、Apaf-1はADPと結合した不活性な単量体として存在する。[[ミトコンドリア]]膜間腔から漏出したシトクロムcと結合し、さらにADPがATP/dATPに置き換わることで構造が変化し、7量体からなるアポトソームを形成する<ref name=Cheng2016><pubmed>27697150</pubmed></ref><ref name=Dorstyn2018><pubmed>29765111</pubmed></ref> [10][11]('''図2''')。


 ショウジョウバエのオルソログであるDark/HAC-1/Dapaf-1は同様のドメイン構造を有するが、線虫のオルソログであるCED-4では2つのβ-propellerドメインを欠いている('''図1''')。選択的スプライシングによりβ-propellerドメインを欠失したアイソフォームが[[マウス]] ([[Apaf-1S]]) 及びショウジョウバエ ([[Dapaf-1S]]) で報告されている。Dapaf-1Sアイソフォームの過剰発現はカスパーゼを活性化できる<ref name=Kanuka1999 /> [8]。
 ショウジョウバエのオルソログであるDark/HAC-1/Dapaf-1は同様のドメイン構造を有するが、線虫のオルソログであるCED-4では2つのβ-propellerドメインを欠いている('''図1''')。選択的スプライシングによりβ-propellerドメインを欠失したアイソフォームが[[マウス]] ([[Apaf-1S]]) 及びショウジョウバエ ([[Dapaf-1S]]) で報告されている。Dapaf-1Sアイソフォームの過剰発現はカスパーゼを活性化できる<ref name=Kanuka1999 /> [8]。
 
== 発現 ==
== 発現 ==
 ヒトではApaf-1は全身性に低く発現しているが、[[骨髄]]で相対的に高い発現を示す。細胞内ではApaf-1は[[細胞質]]に局在し、アポトーシス刺激においてその局在が変化することはない<ref name=Hausmann2000><pubmed>10791976</pubmed></ref> [17]。ただし、化学療法抵抗性の[[Rajiバーキットリンパ腫]]細胞株ではApaf-1が形質膜へと局在することが報告されている<ref name=Sun2005><pubmed>15692060</pubmed></ref> [18]。
 ヒトではApaf-1は全身性に低く発現しているが、[[骨髄]]で相対的に高い発現を示す。細胞内ではApaf-1は[[細胞質]]に局在し、アポトーシス刺激においてその局在が変化することはない<ref name=Hausmann2000><pubmed>10791976</pubmed></ref> [17]。ただし、化学療法抵抗性の[[Rajiバーキットリンパ腫]]細胞株ではApaf-1が形質膜へと局在することが報告されている<ref name=Sun2005><pubmed>15692060</pubmed></ref> [18]。