「ノーダル」の版間の差分

編集の要約なし
編集の要約なし
 
(同じ利用者による、間の3版が非表示)
1行目: 1行目:
<div align="right"> 
<font size="+1">[https://researchmap.jp/read0054812 目野 主税]</font><br>
''九州大学 大学院医学研究院 発生再生医学分野''<br>
DOI:<selfdoi /> 原稿受付日:2026年4月3日 原稿完成日:2026年4月8日<br>
担当編集委員:[https://researchmap.jp/hiroshikawasaki 河崎 洋志](金沢大学 医学系 脳神経医学教室)<br>
</div>
英語名:Nodal
英語名:Nodal


8行目: 15行目:
]]
]]
== 構造 ==
== 構造 ==
 ノーダルは[[プレプロタンパク質]]として[[翻訳]]され、分泌後に[[Furin]]や[[paired basic amino acid cleaving enzyme 4]] ([[PACE4]])などの[[プロタンパク質変換酵素]]によって切断を受けることで、C末端側が活性タンパクとして機能する<ref name=Beck2002><pubmed>12447384</pubmed></ref>。C末端側には[[TGF-βファミリー]]に特徴的な[[システイン]]残基が保存されており<ref name=Zhou1993><pubmed>8429908</pubmed></ref>、これらは分子内および分子間の[[ジスルフィド結合]]を介して、[[システインノット]]構造の形成とダイマー形成に関与する ('''図1''')。一方、プロドメインは、ノーダルの活性や組織内での拡散性を制御していると考えられている<ref name=LeGood2005><pubmed>15649361</pubmed></ref>。
 [[トランスフォーミング増殖因子β]] ([[transforming growth factor-β]], [[TGF-β]])ファミリーに属する分泌タンパク質である。[[プレプロタンパク質]]として[[翻訳]]され、分泌後に[[Furin]]や[[paired basic amino acid cleaving enzyme 4]] ([[PACE4]])などの[[プロタンパク質変換酵素]]によって切断を受けることで、C末端側が活性タンパクとして機能する<ref name=Beck2002><pubmed>12447384</pubmed></ref>。C末端側には[[TGF-βファミリー]]に特徴的な[[システイン]]残基が保存されており<ref name=Zhou1993><pubmed>8429908</pubmed></ref>、これらは分子内および分子間の[[ジスルフィド結合]]を介して、[[システインノット]]構造の形成とダイマー形成に関与する ('''図1''')。一方、プロドメインは、ノーダルの活性や組織内での拡散性を制御していると考えられている<ref name=LeGood2005><pubmed>15649361</pubmed></ref>。


== オルソログ ==
== オルソログ ==
 ''Nodal''は後生動物に高度に保存されており、[[刺胞動物]]、[[螺旋卵割動物]] ([[軟体動物]]、[[環形動物]]など) および[[後口動物]] ([[脊索動物]]、[[半索動物]]や[[棘皮動物]]など) の多くの系統で存在が確認されている<ref name=Grande2014><pubmed>25690967</pubmed></ref><ref name=Namigai2014><pubmed>24510729</pubmed></ref><ref name=Watanabe2014><pubmed>25156256</pubmed></ref>。一方、脱皮動物 ([[節足動物]]や[[線形動物]]など) では、共通先祖で''Nodal''が失われたと推察されている<ref name=Grande2014><pubmed>25690967</pubmed></ref>。[[脊椎動物]]の[[モデル生物]]では、ゼブラフィッシュやアフリカツメガエルにおいて、種固有の全ゲノム重複を経て''Nodal''関連遺伝子が多重化している。
 ''Nodal''は後生動物に高度に保存されており、[[刺胞動物]]、[[螺旋卵割動物]] ([[軟体動物]]、[[環形動物]]など) および[[後口動物]] ([[脊索動物]]、[[半索動物]]や[[棘皮動物]]など) の多くの系統で存在が確認されている<ref name=Grande2014><pubmed>25690967</pubmed></ref><ref name=Namigai2014><pubmed>24510729</pubmed></ref><ref name=Watanabe2014><pubmed>25156256</pubmed></ref>。一方、脱皮動物 ([[節足動物]]や[[線形動物]]など) では、共通先祖で''Nodal''が失われたと推察されている<ref name=Grande2014><pubmed>25690967</pubmed></ref>。[[脊椎動物]]の[[モデル生物]]では、ゼブラフィッシュやアフリカツメガエルにおいて、種固有の全ゲノム重複を経て''Nodal''関連遺伝子が多重化している。
[[ファイル:Meno Nodal Fig2.png|サムネイル|'''図2. ノーダルシグナル'''<br> ノーダルシグナルの主要な構成因子を示す模式図。ノーダルはCrypticなどのEGF-CFCファミリーに依存してアクチビン受容体に結合する。リン酸化Smad2/3は核に移行し、FoxH1などと協調して標的遺伝子 (ノーダル, Lefty2, Pitx2など) の発現を誘導する。これらの遺伝子に描かれた青色楕円は、FoxH1が結合するエンハンサーASEを表している。ノーダルはポジティブフィードバックループとLeftyを介したネガティブフィードバックループを構成する。]]
[[ファイル:Meno Nodal Fig2.png|200px|サムネイル|'''図2. ノーダルシグナル'''<br> ノーダルシグナルの主要な構成因子を示す模式図。ノーダルはCrypticなどのEGF-CFCファミリーに依存してアクチビン受容体に結合する。リン酸化Smad2/3は核に移行し、FoxH1などと協調して標的遺伝子 (''Nodal'', ''Lefty2'', ''Pitx2''など) の発現を誘導する。これらの遺伝子に描かれた青色楕円は、FoxH1が結合するエンハンサーASEを表している。ノーダルはポジティブフィードバックループとLeftyを介したネガティブフィードバックループを構成する。]]
 
== ノーダルシグナルとその制御 ==
== ノーダルシグナルとその制御 ==
 ノーダルは[[アクチビン]]受容体 (タイプIIとして[[ActRIIA]]/[[ActRIIB|B]]、タイプIとして[[ALK4]]/[[ALK7|7]]) と複合体を形成するが、この複合体形成には[[GPIアンカー]]型膜タンパク質である[[EGF]]-[[CFCファミリー]] (Cripto, Cryptic, [[FRL1]], [[Oep]]など) を必要とする<ref name=Shen2007><pubmed>17287255</pubmed></ref>。ノーダルの結合によって活性化されたタイプI受容体は[[Smad2]]/[[Smad3|3]]をリン酸化し、これらは[[Smad4]]と複合体を形成して核内に移行する。この複合体は[[FoxH1]]や[[Eomes]]などの[[転写因子]]と協調して標的遺伝子の発現を制御する。また、ノーダルはFoxH1を介した[[ポジティブフィードバックループ]]を形成しており、自らの発現を誘導する ('''図2''')<ref name=Norris2002><pubmed>12091315</pubmed></ref><ref name=Saijoh2000><pubmed>10678167</pubmed></ref><ref name=Yamamoto2003><pubmed>12642485</pubmed></ref>。
 ノーダルは[[アクチビン]]受容体 (タイプIIとして[[ActRIIA]]/[[ActRIIB|B]]、タイプIとして[[ALK4]]/[[ALK7|7]]) と複合体を形成するが、この複合体形成には[[GPIアンカー]]型膜タンパク質である[[EGF]]-[[CFCファミリー]] (Cripto, Cryptic, [[FRL1]], [[Oep]]など) を必要とする<ref name=Shen2007><pubmed>17287255</pubmed></ref>。ノーダルの結合によって活性化されたタイプI受容体は[[Smad2]]/[[Smad3|3]]をリン酸化し、これらは[[Smad4]]と複合体を形成して核内に移行する。この複合体は[[FoxH1]]や[[Eomes]]などの[[転写因子]]と協調して標的遺伝子の発現を制御する。また、ノーダルはFoxH1を介した[[ポジティブフィードバックループ]]を形成しており、自らの発現を誘導する ('''図2''')<ref name=Norris2002><pubmed>12091315</pubmed></ref><ref name=Saijoh2000><pubmed>10678167</pubmed></ref><ref name=Yamamoto2003><pubmed>12642485</pubmed></ref>。