「ノーダル」の版間の差分

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=== 前後軸形成 ===
=== 前後軸形成 ===
 着床したマウス胚は、エピブラストおよび隣接した胚体外外胚葉が胚盤胞腔側へ成長し、両者が臓側内胚葉に覆われた円筒胚を形成する。円筒胚の近位は[[胎盤]]を形成し、遠位には遠位臓側内胚葉 (distal visceral endoderm: DVE) が出現する。この遠位臓側内胚葉は将来の前方 (頭側) へ移動して前方臓側内胚葉 (anterior visceral endoderm: AVE) を形成し、その反対側に原条が形成されることで、胚に明確な前後非対称性が確立される<ref name=Arnold2009><pubmed>19129791</pubmed></ref>。ノーダルは、proximal epiblast enhancerやassymmetric enhancerなどによりエピブラストで発現し、そのシグナルは遠位臓側内胚葉におけるLefty1、Cerl、Dkk1の発現を誘導する<ref name=Brennan2001><pubmed>11418863</pubmed></ref>。AVEから分泌されるこれらの因子は、隣接するエピブラストにおけるノーダルポジティブフィードバックループと[[Wnt]]シグナルを抑制し、エピブラストのノーダル発現をAVEと反対側、すなわち胚後方に限局させる<ref name=Perea-Gomez2002><pubmed>12431380</pubmed></ref>。この結果、胚前方には神経外胚葉が、胚後方には原条が形成される。
 着床したマウス胚は、エピブラストおよび隣接した胚体外外胚葉が胚盤胞腔側へ成長し、両者が臓側内胚葉に覆われた円筒胚を形成する。円筒胚の近位は[[胎盤]]を形成し、遠位には遠位臓側内胚葉 (distal visceral endoderm: DVE) が出現する。この遠位臓側内胚葉は将来の前方 (頭側) へ移動して前方臓側内胚葉 (anterior visceral endoderm: AVE) を形成し、その反対側に原条が形成されることで、胚に明確な前後非対称性が確立される<ref name=Arnold2009><pubmed>19129791</pubmed></ref>。ノーダルは、proximal epiblast enhancerやasymmetric enhancerなどによりエピブラストで発現し、そのシグナルは遠位臓側内胚葉におけるLefty1、Cerl、Dkk1の発現を誘導する<ref name=Brennan2001><pubmed>11418863</pubmed></ref>。AVEから分泌されるこれらの因子は、隣接するエピブラストにおけるノーダルポジティブフィードバックループと[[Wnt]]シグナルを抑制し、エピブラストのノーダル発現をAVEと反対側、すなわち胚後方に限局させる<ref name=Perea-Gomez2002><pubmed>12431380</pubmed></ref>。この結果、胚前方には神経外胚葉が、胚後方には原条が形成される。
[[ファイル:Meno Nodal Fig3.png|サムネイル|'''図3. マウスにおける左右軸形成'''<br>胚遠位から観察したマウス初期体節期胚の模式図 (図上が前方、下が後方)。左右軸形成は①から④の順に進行する。<br>① 左右オーガナイザーであるノードの腹側に左向きの流れ  (ノーダル flow) が発生する。<br>② ノード周縁部 (クラウン細胞) では、NotchシグナルによってノーダルやCerl2などの左右軸関連遺伝子が発現するが、流れにより左側のCerl2 mRNAが分解される (褐色はCerl2 mRNAを表す)。<br>③ Cerl2は右側でノーダルを強く抑制することにより、左側でのノーダル活性が高くなる (緑色はノードにおけるノーダル活性を表す)。ノードから拡散したノーダルは、近傍の左側側板中胚葉 (lateral plate mesoderm, lpm) に自らの発現を誘導する (紺色はノーダル発現を示す)。<br>④ ノーダルはポジティブフィードバックループによって発現域を拡張するとともに、転写因子Pitx2の発現を誘導する (紺色はノーダルおよびPitx2発現を示す)。これらの左右非対称な発現は、その後の臓器の左右非対称な形態形成を制御する。]]
[[ファイル:Meno Nodal Fig3.png|サムネイル|'''図3. マウスにおける左右軸形成'''<br>胚遠位から観察したマウス初期体節期胚の模式図 (図上が前方、下が後方)。左右軸形成は①から④の順に進行する。<br>① 左右オーガナイザーであるノードの腹側に左向きの流れ  ([[ノード流]]) が発生する。<br>② ノード周縁部 (クラウン細胞) では、NotchシグナルによってノーダルやCerl2などの左右軸関連遺伝子が発現するが、流れにより左側のCerl2 mRNAが分解される (褐色はCerl2 mRNAを表す)。<br>③ Cerl2は右側でノーダルを強く抑制することにより、左側でのノーダル活性が高くなる (緑色はノードにおけるノーダル活性を表す)。ノードから拡散したノーダルは、近傍の左側側板中胚葉 (lateral plate mesoderm, lpm) に自らの発現を誘導する (紺色はノーダル発現を示す)。<br>④ ノーダルはポジティブフィードバックループによって発現域を拡張するとともに、転写因子Pitx2の発現を誘導する (紺色はノーダルおよびPitx2発現を示す)。これらの左右非対称な発現は、その後の臓器の左右非対称な形態形成を制御する。]]
=== 左右軸形成 ===
=== 左右軸形成 ===
 脊椎動物では、初期体節期にノーダルが左側側板中胚葉で発現する。ノーダルはFoxH1を介して転写因子Pitx2の発現を誘導し ('''図2''')<ref name=Shiratori2001><pubmed>11172719</pubmed></ref>、臓器の左右非対称な形態形成を制御する。脊椎動物以外でも、ノーダルを保有する動物系統では[[Pitx]]がノーダルと同側に非対称に発現することが確認されており、進化の過程でPitxはノーダルシグナルと連結することで非対称な形態形成の役割を獲得したと推察されている<ref name=Grande2014><pubmed>25690967</pubmed></ref>。例えば、ノーダル-Pitx発現の左右非対称性は、軟体動物の巻貝では貝殻の巻き方向を決定し<ref name=Grande2009><pubmed>19098895</pubmed></ref>、棘皮動物のウニでは[[プルテウス]]幼生におけるウニ原基の左右非対称な形成を制御する (右側のノーダルシグナルはウニ原基形成を抑制する) <ref name=Duboc2005><pubmed>15992548</pubmed></ref>。
 脊椎動物では、初期体節期にノーダルが左側側板中胚葉で発現する。ノーダルはFoxH1を介して転写因子Pitx2の発現を誘導し ('''図2''')<ref name=Shiratori2001><pubmed>11172719</pubmed></ref>、臓器の左右非対称な形態形成を制御する。脊椎動物以外でも、ノーダルを保有する動物系統では[[Pitx]]がノーダルと同側に非対称に発現することが確認されており、進化の過程でPitxはノーダルシグナルと連結することで非対称な形態形成の役割を獲得したと推察されている<ref name=Grande2014><pubmed>25690967</pubmed></ref>。例えば、ノーダル-Pitx発現の左右非対称性は、軟体動物の巻貝では貝殻の巻き方向を決定し<ref name=Grande2009><pubmed>19098895</pubmed></ref>、棘皮動物のウニでは[[プルテウス]]幼生におけるウニ原基の左右非対称な形成を制御する (右側のノーダルシグナルはウニ原基形成を抑制する) <ref name=Duboc2005><pubmed>15992548</pubmed></ref>。