「成長円錐」の版間の差分

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=== 接着分子  ===
=== 接着分子  ===


成長円錐の形質膜には[[免疫グロブリン]](immunogloblin)ファミリー、[[カドヘリン]](cadherin)ファミリー、[[インテグリン]](integrin)ファミリーなどの接着分子が発現しており、[[細胞外基質]]、または隣接する細胞との接着を媒介している。多くの場合、細胞外領域での接着分子の[[リガンド]]結合および細胞表面での接着分子のクラスタリングは細胞内領域における接着分子とアクチン繊維間の結合を誘導する。例えば、インテグリン細胞外領域における[[フィブロネクチン]](fibronectin)との結合は、インテグリン細胞内領域と細胞骨格の結合を引き起こす<ref><pubmed> 8837776</pubmed></ref>。このような接着分子-アクチン繊維間の結合は、接着分子の接着性を増強するとともに、アクチン繊維の後方移動により発生した牽引力を細胞外周囲環境に伝達し、その結果として成長円錐が前方に推進されると考えられている。
成長円錐の形質膜には[[免疫グロブリン]](immunogloblin)ファミリー、[[カドヘリン]](cadherin)ファミリー、[[インテグリン]](integrin)ファミリーなどの接着分子が発現しており、[[細胞外基質]]、または隣接する細胞との接着を媒介している。多くの場合、細胞外領域での接着分子の[[リガンド]]結合および細胞表面での接着分子のクラスタリングは細胞内領域における接着分子とアクチン繊維間の結合を誘導する。このような接着分子-アクチン繊維間の結合は、接着分子の接着性を増強するとともに、アクチン繊維の後方移動により発生した牽引力を細胞外周囲環境に伝達し、その結果として成長円錐が前方に推進されると考えられている。


=== クラッチ分子  ===
=== クラッチ分子  ===


成長円錐の前方移動の仕組みを自動車の走行に例えると、エンジンの役割を果たすのがアクチン繊維の動態(重合・脱重合・後方移動)であり、タイヤの役割を果たすのが周辺環境と接着している接着分子である。このエンジンとタイヤをつなぐ役割を果たすものがクラッチ分子と呼ばれ、アクチン繊維の動態を、接着分子を介した成長円錐の推進力へと変換する役割を持っている。成長円錐内においてクラッチ分子の実態および制御機構は不明な点が多いが、アクチン繊維とL1間のクラッチ分子として[[シューティン]](shootin)が同定され<ref><pubmed> 18519736</pubmed></ref>、アンキリンや[[カテニン]](catenin)といった[[リンカー分子]]<ref><pubmed> 14657231</pubmed></ref>。、エズリン(ezrin)<ref><pubmed> 22219290</pubmed></ref>。などもクラッチ分子として機能すると考えられている。
成長円錐の前方移動の仕組みを自動車の走行に例えると、エンジンの役割を果たすのがアクチン繊維の動態(重合・脱重合・後方移動)であり、タイヤの役割を果たすのが周辺環境と接着している接着分子である。このエンジンとタイヤをつなぐ役割を果たすものがクラッチ分子と呼ばれ、アクチン繊維の動態を、接着分子を介した成長円錐の推進力へと変換する役割を担っている。成長円錐内においてクラッチ分子の実態および制御機構は不明な点が多いが、アクチン繊維とL1間のクラッチ分子として[[シューティン]](shootin)が同定され<ref><pubmed> 18519736</pubmed></ref>、アンキリンや[[カテニン]](catenin)といった[[リンカー分子]]<ref><pubmed> 14657231</pubmed></ref>、エズリン(ezrin)<ref><pubmed> 22219290</pubmed></ref>などもクラッチ分子として機能すると考えられている。


=== 接着分子のリサイクリング  ===
=== 接着分子のリサイクリング  ===


アクチン繊維と結合した接着分子は、アクチンの後方移動に伴って成長円錐中心部へと運ばれてしまう。成長円錐ではその前方移動を恒常的に維持するため、後方へ移動した接着分子を周辺環境から脱着し、再び成長円錐先端部へと輸送し再利用する機構が存在すると考えられている。例えば、アクチン繊維の後方移動により中心部に到達したL1は、[[クラスリン]]依存的[[エンドサイトーシス]]によって膜小胞に取り込まれた後、微小管のガイドによって細胞質内を成長円錐先端部まで輸送され、形質膜に再挿入される<ref><pubmed> 10804209</pubmed></ref><ref><pubmed> 11717353</pubmed></ref>。このような細胞接着分子のリサイクリングは
アクチン繊維と結合した接着分子は、アクチンの後方移動に伴って成長円錐中心部へと運ばれてしまう。成長円錐ではその前方移動を恒常的に維持するため、後方へ移動した接着分子を周辺環境から脱着し、再び成長円錐先端部へと輸送し再利用する機構が存在すると考えられている。例えば、アクチン繊維の後方移動により中心部に到達したL1は、[[クラスリン]]依存的[[エンドサイトーシス]]によって膜小胞に取り込まれた後、微小管のガイドによって細胞質内を成長円錐先端部まで輸送され、形質膜に再挿入される<ref><pubmed> 10804209</pubmed></ref><ref><pubmed> 11717353</pubmed></ref>
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このように接着分子は、①成長円錐先端部での基質との接着→②アクチン繊維の後方移動に伴う成長円錐中心部への移動→③基質からの脱着と成長円錐内への取り込み→④先端部への輸送→⑤先端部への再挿入、という過程でリサイクルされると考えられている。
 


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