「クラステリン」の版間の差分

細編集の要約なし
細編集の要約なし
 
(同じ利用者による、間の3版が非表示)
24行目: 24行目:
== 構造 ==
== 構造 ==
=== 一次構造と翻訳後修飾 ===
=== 一次構造と翻訳後修飾 ===
 ヒトのクラステリン[[遺伝子]]は第8[[染色体]]短腕(8p21-p12)に位置し、9個の[[エクソン]]から構成される<ref name="ref8"><pubmed>8181474</pubmed></ref>。クラステリンは、N末端に22[[アミノ酸]]の[[シグナルペプチド]]を含む449アミノ酸の前駆体タンパク質として合成される<ref name="ref9"><pubmed>40781479</pubmed></ref>('''図1''')。
 ヒトのクラステリン[[遺伝子]]は第8[[染色体]]短腕(8p21-p12)に位置し、9個の[[エクソン]]から構成される<ref name="ref8"><pubmed>8181474</pubmed></ref>。ヒトではパラログは知られていない。クラステリンは、N末端に22[[アミノ酸]]の[[シグナルペプチド]]を含む449アミノ酸の前駆体タンパク質として合成される<ref name="ref9"><pubmed>40781479</pubmed></ref>('''図1''')。その後、以下の各段階を経て成熟する。
# [[小胞体]](ER)での修飾:シグナルペプチドが切断され、高マンノース型糖鎖が付加されるとともに、5本の分子内[[ジスルフィド結合]]が形成される([[ゴルジ体]]で切断後にα鎖とβ鎖を連結する鎖間ジスルフィド結合となる)。
# [[小胞体]](ER)での修飾:シグナルペプチドが切断され、高マンノース型糖鎖が付加されるとともに、5本の分子内[[ジスルフィド結合]]が形成される([[ゴルジ体]]で切断後にα鎖とβ鎖を連結する鎖間ジスルフィド結合となる)。
# ゴルジ体での切断:Trans-Golgiネットワークにおいて、フーリン(furin)様[[プロテアーゼ]]によりArg227とSer228の間で開裂を受け、N末端側のβ鎖(23–227残基)とC末端側のα鎖(228–449残基)(各約35–40 kDa)からなるヘテロ二量体が形成される。
# ゴルジ体での切断:Trans-Golgiネットワークにおいて、フーリン(furin)様[[プロテアーゼ]]によりArg227とSer228の間で開裂を受け、N末端側のβ鎖(23–227残基)とC末端側のα鎖(228–449残基)(各約35–40 kDa)からなるヘテロ二量体が形成される。
# 糖鎖修飾:6箇所のN型糖鎖付加部位を有し、複合型糖鎖の修飾を受ける。
# 糖鎖修飾:6箇所のN型糖鎖付加部位を有し、複合型糖鎖の修飾を受ける。
[[ファイル:Itakura clusterin Fig2.png|サムネイル|'''図2. クラステリンの立体構造'''<br>AlphaFoldによる予測図]]
[[ファイル:Itakura clusterin Fig2.png|サムネイル|'''図2. クラステリンの立体構造'''<br>AlphaFoldによる予測図]]
=== 立体構造とシャペロン活性部位 ===
=== 立体構造とシャペロン活性部位 ===
 近年、結晶構造解析およびAlphaFold2予測により、クラステリンは[[コイルドコイル]]ドメイン、ジスルフィド結合を集約したジスルフィドドメイン、およびα/βロール様ドメインの3つの不連続なドメインからなる立体構造を持つことが解明された<ref name="ref9" />('''図2''')。
 近年、結晶構造解析およびAlphaFold2予測により、クラステリンは[[コイルドコイル]]ドメイン、ジスルフィド結合を集約したジスルフィドドメイン、およびα/βロール様ドメインの3つの不連続なドメインからなる立体構造を持つことが解明された<ref name="ref9" />('''図2''')。
54行目: 55行目:
=== その他の機能 ===
=== その他の機能 ===
* [[補体]]制御作用:補体膜攻撃複合体(MAC, C5b-9)のC5b-7、C8、C9部位にクラステリンが結合することで、C9の重合を防ぎ、膜への穿孔および細胞溶解を抑制する(sMAC成分)<ref name="ref19"><pubmed>34667172</pubmed></ref>。
* [[補体]]制御作用:補体膜攻撃複合体(MAC, C5b-9)のC5b-7、C8、C9部位にクラステリンが結合することで、C9の重合を防ぎ、膜への穿孔および細胞溶解を抑制する(sMAC成分)<ref name="ref19"><pubmed>34667172</pubmed></ref>。
* 脂質輸送:HDLの一部の粒子に含まれるアポリポタンパク質の成分として、[[コレステロール]]の排出を補助し、LDLの異常な凝集を抑えるなど脂質代謝への関与が示されている。また、健常者由来のHDLに含まれるクラステリンが心血管内皮細胞の[[アポトーシス]]を抑制することや、ラットの心筋梗塞モデルへの投与によって梗塞範囲の縮小および死亡率低下が認められるなど、保護作用が報告されてる<ref name="ref20"><pubmed>39991767</pubmed></ref>。
* 脂質輸送:HDLの一部の粒子に含まれるアポリポタンパク質の成分として、[[コレステロール]]の排出を補助し、[[低密度リポタンパク質]] ([[low-density lipoprotein]], [[LDL]])の異常な凝集を抑えるなど脂質代謝への関与が示されている。また、健常者由来のHDLに含まれるクラステリンが心血管内皮細胞の[[アポトーシス]]を抑制することや、ラットの心筋梗塞モデルへの投与によって梗塞範囲の縮小および死亡率低下が認められるなど、保護作用が報告されてる<ref name="ref20"><pubmed>39991767</pubmed></ref>。
* [[細胞質]]クラステリンの役割:一部のクラステリン[[伝令RNA|mRNA]]はsecond ATGから[[翻訳]]されシグナルペプチドを欠損した場合や、小胞体から逆輸送されることで、クラステリンが細胞質および核内に局在する<ref name="ref21"><pubmed>33573881</pubmed></ref>。細胞質クラステリンは、細胞質のプロテオスタシスに働くことや、アポトーシスの抑制などに働くが、一方で偶発的産物として非機能的な副産物であるとも考えられている<ref name="ref22"><pubmed>26673020</pubmed></ref>。
* [[細胞質]]クラステリンの役割:一部のクラステリン[[伝令RNA|mRNA]]はsecond ATGから[[翻訳]]され、できたタンパク質はシグナルペプチドを欠損する。また、小胞体から逆輸送されることもある。そういった場合、クラステリンが細胞質および核内に局在することとなる<ref name="ref21"><pubmed>33573881</pubmed></ref>。細胞質クラステリンは、細胞質のプロテオスタシスに働くことや、アポトーシスの抑制などに働くが、一方で偶発的産物として非機能的な副産物であるとも考えられている<ref name="ref22"><pubmed>26673020</pubmed></ref>。


== 疾患との関わり ==
== 疾患との関わり ==