「抗精神病薬」の版間の差分

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 しかし第1世代抗精神病薬は、①[[アカシジア]] (akathisia)や遅発性[[ジスキネジア]] (tardive dyskinesia; TD)などの急性および慢性の[[錐体外路系]]副作用 (extrapyramidal side effects; EPS)を高率に生じさせたり、②乳汁分泌や性機能障害を生じる可能性のある高[[プロラクチン]](prolactin)血症を起こしたり、③[[陰性症状]](意欲低下、感情の平板化、社会的引きこもりなど)や認知機能障害(記憶力低下、注意力低下、遂行機能障害など)に対して無効あるいは増悪させたりするなどの宿命的問題点があった <ref name="ref1">'''Miyamoto S, Merrill DB, Lieberman JA, Fleischhacker WW, Marder SR''': <br>Antipsychotic Drugs, In PSYCHIATRY (Third edition) <br>'''Tasman A, Kay J, Lieberman JA, First MB, Maj M'''  eds<br>pp. 2161-2201<br>John Wiley & Sons, Ltd (Chichester):2008</ref>。  
 しかし第1世代抗精神病薬は、①[[アカシジア]] (akathisia)や遅発性[[ジスキネジア]] (tardive dyskinesia; TD)などの急性および慢性の[[錐体外路系]]副作用 (extrapyramidal side effects; EPS)を高率に生じさせたり、②乳汁分泌や性機能障害を生じる可能性のある高[[プロラクチン]](prolactin)血症を起こしたり、③[[陰性症状]](意欲低下、感情の平板化、社会的引きこもりなど)や認知機能障害(記憶力低下、注意力低下、遂行機能障害など)に対して無効あるいは増悪させたりするなどの宿命的問題点があった <ref name="ref1">'''Miyamoto S, Merrill DB, Lieberman JA, Fleischhacker WW, Marder SR''': <br>Antipsychotic Drugs, In PSYCHIATRY (Third edition) <br>'''Tasman A, Kay J, Lieberman JA, First MB, Maj M'''  eds<br>pp. 2161-2201<br>John Wiley & Sons, Ltd (Chichester):2008</ref>。  


 1958年に合成された第2世代(非定型または新規)抗精神病薬(Second-Generation Antipsychotics; 第2世代抗精神病薬)の原型である[[クロザピン]](clozapine)は、第1世代抗精神病薬の欠点をかなり克服したが、約1%の頻度で[[wikipedia:JA:無顆粒球症|無顆粒球症]]という致死的副作用が発現したため、本邦を含む多くの国で開発が中断された。しかし、クロザピンの薬理作用の研究が進むにつれて、抗D<sub>2</sub>受容体作用に比べて相対的に強い[[セロトニン]](serotonin) [[セロトニン#5-HT2受容体|5-HT<sub>2A</sub>受容体]]遮断作用が注目されるようになった。Janssenは、5-HT<sub>2A</sub>受容体遮断作用を有する[[ピパンペロン]](pipamperone)が、陰性症状に比較的有効でEPSの発現が少ない事実に気づき、1984年にセロトニンドーパミン遮断薬 (Serotonin Dopamine Antagonist; SDA)の原型といえる[[リスペリドン]](risperidone)の開発を導いた。
 1958年に合成された第2世代(非定型または新規)抗精神病薬(Second-Generation Antipsychotics)の原型である[[クロザピン]](clozapine)は、第1世代抗精神病薬の欠点をかなり克服したが、約1%の頻度で[[wikipedia:JA:無顆粒球症|無顆粒球症]]という致死的副作用が発現したため、本邦を含む多くの国で開発が中断された。しかし、クロザピンの薬理作用の研究が進むにつれて、抗D<sub>2</sub>受容体作用に比べて相対的に強い[[セロトニン]](serotonin) [[セロトニン#5-HT2受容体|5-HT<sub>2A</sub>受容体]]遮断作用が注目されるようになった。Janssenは、5-HT<sub>2A</sub>受容体遮断作用を有する[[ピパンペロン]](pipamperone)が、陰性症状に比較的有効でEPSの発現が少ない事実に気づき、1984年にセロトニンドーパミン遮断薬 (Serotonin Dopamine Antagonist; SDA)の原型といえる[[リスペリドン]](risperidone)の開発を導いた。


 さらに無顆粒球症を伴わず、クロザピン類似の薬理学的プロフィールを持つ抗精神病薬の開発が進み、1982年に[[オランザピン]](olanzapine)、1985年に[[クエチアピン]](quetiapine)が合成された。本邦でも1987年にSDAとして[[ペロスピロン]](perospirone)が開発された。
 さらに無顆粒球症を伴わず、クロザピン類似の薬理学的プロフィールを持つ抗精神病薬の開発が進み、1982年に[[オランザピン]](olanzapine)、1985年に[[クエチアピン]](quetiapine)が合成された。本邦でも1987年にSDAとして[[ペロスピロン]](perospirone)が開発された。
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 クロザピンは、1988年に米国のKaneらによって治療抵抗性統合失調症に対するクロルプロマジンとの[[wikipedia:JA:二重盲検比較試験|二重盲検比較試験]]で優位性が証明されたのを受け、1990年米国で承認された。現在厳密な副作用モニタリングのもと、世界100ヶ国以上の国々で上市されている。  
 クロザピンは、1988年に米国のKaneらによって治療抵抗性統合失調症に対するクロルプロマジンとの[[wikipedia:JA:二重盲検比較試験|二重盲検比較試験]]で優位性が証明されたのを受け、1990年米国で承認された。現在厳密な副作用モニタリングのもと、世界100ヶ国以上の国々で上市されている。  


 本邦では2006年にD<sub>2</sub>受容体[[部分作動薬]]の[[アリピプラゾール]](aripiprazole)が、2008年に[[ブロナンセリン]](blonanserin)、2009年にクロザピン、2011年にリスペリドンの主要活性代謝産物である[[パリペリドン]](paliperidone)が上市され、2012年4月現在8種類の第2世代抗精神病薬が統合失調症の薬物治療の中心となっている。特に、アリピプラゾールをはじめとするD<sub>2</sub>受容体部分作動薬は、第1世代抗精神病薬や第2世代抗精神病薬とは異なる機序でドーパミン伝達の安定化作用を有しているため、第3世代抗精神病薬 (Third-Generation Antipsychotics)と位置付ける研究者もいる。
 本邦では2006年にD<sub>2</sub>受容体[[部分作動薬]]の[[アリピプラゾール]](aripiprazole)が、2008年に[[ブロナンセリン]](blonanserin)、2009年にクロザピン、2011年にリスペリドンの主要活性代謝産物である[[パリペリドン]](paliperidone)が上市され、2012年4月現在8種類の第2世代抗精神病薬が統合失調症の薬物治療の中心となっている。特に、アリピプラゾールをはじめとするD<sub>2</sub>受容体部分作動薬は、第1世代抗精神病薬や第2世代抗精神病薬とは異なる機序でドーパミン伝達の安定化作用を有しているため、第3世代抗精神病薬 (Third-Generation Antipsychotics)と位置付ける研究者もいる。


== 対象疾患  ==
== 対象疾患  ==