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==培養可能な発生段階と培養期間== | ==培養可能な発生段階と培養期間== | ||
全胚培養に用いられる胚の発生段階は、器官形成初期(膣栓確認日を0日として、ラットなら胎齡8日目、マウスなら6日目)から、器官形成後期(ラット13日胚、マウス11日胚)までである(図2)(大隅、二宮ら、1997)。ラット11.5日、マウス9.5日以降の胚の発育は胎盤機能に依存するところが大きいため、この時期以降の培養可能器官は短くなる。この期間に起こる発生事象であれば、全胚培養法を用いて解析可能と言える。詳細な実験手法については文献を参照されたい<ref><pubmed> 18505466 </pubmed></ref> | 全胚培養に用いられる胚の発生段階は、器官形成初期(膣栓確認日を0日として、ラットなら胎齡8日目、マウスなら6日目)から、器官形成後期(ラット13日胚、マウス11日胚)までである(図2)(大隅、二宮ら、1997)。ラット11.5日、マウス9.5日以降の胚の発育は胎盤機能に依存するところが大きいため、この時期以降の培養可能器官は短くなる。この期間に起こる発生事象であれば、全胚培養法を用いて解析可能と言える。詳細な実験手法については文献を参照されたい<ref><pubmed> 18505466 </pubmed></ref><ref><pubmed> 20834217 </pubmed></ref>。なお、ウサギやスンクスなどは卵黄嚢膜の形態がげっ歯類と若干異なるために、胚操作の方法もやや異なる。 | ||
==発生学への応用== | ==発生学への応用== | ||
全胚培養で用いる胚の発生段階は器官形成期という最もダイナミックな形態形成が行われる時期であり、細胞増殖、細胞移動、細胞分化などの重要な発生事象が起こる。この発生段階に色素を用いた細胞標識、細胞移植など<ref><pubmed> 7981749 </pubmed></ref>を行うことで、細胞系譜や分化運命のポテンシャルを検討することができる。また、薬剤や生理活性物質を培養液に添加することで、発生毒性・胎児代謝の研究に応用されており、医薬品の安全性試験としても使用されている。 | |||
胚発生における特定遺伝子の機能を知るためには、時間的、空間的に制御可能な遺伝子操作が必要である。近年の遺伝子工学技術はめざましく、トランスジェニック動物やノックアウト動物などの技術が開発され、さらにcre- | 胚発生における特定遺伝子の機能を知るためには、時間的、空間的に制御可能な遺伝子操作が必要である。近年の遺伝子工学技術はめざましく、トランスジェニック動物やノックアウト動物などの技術が開発され、さらにcre-loxPシステムによる条件つき遺伝子改変が可能になったものの、その作製労力を考えると決して簡便ではない。全胚培養法を用いれば、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)を組み合わせることによって、遺伝子を直接細胞内に導入することができる<ref><pubmed> 11327800 </pubmed></ref>。導入する遺伝子は単独である必要はなく、複数の遺伝子を導入時に、あるいは時間差で導入することも可能である。また、ドミナントネガティブ分子による機能阻害実験、siRNAによるノックダウン実験<ref><pubmed> 16237179 </pubmed></ref>、およびレトロウィルスベクターを用いた遺伝子導入<ref><pubmed> 10461220 </pubmed></ref>も可能である。これらの技術は基礎研究だけでなく、特定の疾患モデル動物を対象とした遺伝子治療の研究にも有効であると考えられる。 | ||
==参考文献== | ==参考文献== | ||
<references /> | <references /> |