「嗅球」の版間の差分

97 バイト追加 、 2012年5月7日 (月)
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====嗅球局所回路における情報処理====
====嗅球局所回路における情報処理====


 傍糸球体細胞は糸球体内で嗅神経細胞軸索にGABA性前シナプス抑制を行うとともに、僧帽・房飾細胞に対しても双方向性シナプスを介してGABA性の抑制を行う。糸球体内には数1000本の嗅神経細胞軸索が入力しており、しかもシナプス放出確率も高いため、傍糸球体細胞による抑制回路は入力のダイナミックレンジを広くするために有効であると考えられる。糸球体間でどのような興奮性・抑制性相互作用があるかについては、さまざまな議論があるがよく分かっていない。意外なことに、僧帽細胞への興奮性入力は、嗅神経細胞からの直接入力の寄与は小さく、むしろ房飾細胞を介した入力を多く受け取っている。同じ糸球体に接続している姉妹僧帽細胞どうしは糸球体内におけるグルタミン酸の放出やギャップ結合によって同期性の高い入力を受けている。
 傍糸球体細胞は糸球体内で嗅神経細胞軸索にGABA性前シナプス抑制を行うとともに、僧帽・房飾細胞に対しても双方向性シナプスを介してGABA性の抑制を行う。糸球体内には数1000本の嗅神経細胞軸索が入力しており、しかもシナプス放出確率も高いため、傍糸球体細胞による抑制回路は入力の[[wikipedia:ja:ダイナミックレンジ|ダイナミックレンジ]]を広くするために有効であると考えられる。糸球体間でどのような興奮性・抑制性相互作用があるかについては、さまざまな議論があるがよく分かっていない。意外なことに、僧帽細胞への興奮性入力は、嗅神経細胞からの直接入力の寄与は小さく、むしろ房飾細胞を介した入力を多く受け取っている。同じ糸球体に接続している姉妹僧帽細胞どうしは糸球体内におけるグルタミン酸の放出やギャップ結合によって同期性の高い入力を受けている。


 僧帽・房飾細胞の側方樹状突起は、顆粒細胞を介して自己の抑制および他の僧帽・房飾細胞の[[側方抑制]]を行う。側方抑制は匂いシグナルのコントラストをつける働きがあるほか、嗅球における同期活動や非同期化にも重要であると考えられている。しかしながら、顆粒細胞や傍糸球体細胞を介した抑制性回路の接続特異性については不明な点が多く、側方抑制の結果、僧帽・房飾細胞がどのような[[受容野]]を有するのかについてもよく分かっていない<ref name=ref4/>。
 僧帽・房飾細胞の側方樹状突起は、顆粒細胞を介して自己の抑制および他の僧帽・房飾細胞の[[側方抑制]]を行う。側方抑制は匂いシグナルのコントラストをつける働きがあるほか、嗅球における同期活動や非同期化にも重要であると考えられている。しかしながら、顆粒細胞や傍糸球体細胞を介した抑制性回路の接続特異性については不明な点が多く、側方抑制の結果、僧帽・房飾細胞がどのような[[受容野]]を有するのかについてもよく分かっていない<ref name=ref4/>。


 従来、匂いの情報は活動する僧帽・房飾細胞の組み合わせによってコードされていると考えられてきたが、最近では時間的な活動パターンも重要であるという考えが受け入れられつつある(temporal coding)<ref name=ref6/>。すなわち、側方抑制は僧帽・房飾細胞の活動の時間的なパターン、たとえば呼吸サイクルにおける発火の位相を変化させ、これが匂い情報をコードしている可能性がある。嗅皮質の個々の錐体細胞は多くの僧帽・房飾細胞からの入力を受けていることから、僧帽・房飾細胞における発火の位相が異なれば錐体細胞の活動パターンも変わり得る。
 従来、匂いの情報は活動する僧帽・房飾細胞の組み合わせによってコードされていると考えられてきたが、最近では時間的な活動パターンも重要であるという考えが受け入れられつつある(temporal coding)<ref name=ref6/>。すなわち、側方抑制は僧帽・房飾細胞の活動の時間的なパターン、たとえば[[wikipedia:ja:呼吸|呼吸]]サイクルにおける発火の[[wikipedia:ja:位相|位相]]を変化させ、これが匂い情報をコードしている可能性がある。嗅皮質の個々の[[錐体細胞]]は多くの僧帽・房飾細胞からの入力を受けていることから、僧帽・房飾細胞における発火の位相が異なれば錐体細胞の活動パターンも変わり得る。


==副嗅球==
==副嗅球==