「ゴルジ体」の版間の差分

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 ゴルジ体の核周囲への局在は[[微小管]]依存性である。そこで、微小管脱重合をおこなうと、ゴルジ体の断片が細胞内に拡がり、脱重合剤を除くと、再び核周囲に局在する。注意すべき点は、微小管脱重合剤でゴルジ体を断片化しても、一般細胞の分泌は阻害されず、極性を持った輸送が阻害されるのみである。分泌される場所を細かく指定しないなら、一般細胞では、分泌小胞が拡散等で十分到達できるほど近くに細胞膜(のいずれかの部分)があると考えられる。  
 ゴルジ体の核周囲への局在は[[微小管]]依存性である。そこで、微小管脱重合をおこなうと、ゴルジ体の断片が細胞内に拡がり、脱重合剤を除くと、再び核周囲に局在する。注意すべき点は、微小管脱重合剤でゴルジ体を断片化しても、一般細胞の分泌は阻害されず、極性を持った輸送が阻害されるのみである。分泌される場所を細かく指定しないなら、一般細胞では、分泌小胞が拡散等で十分到達できるほど近くに細胞膜(のいずれかの部分)があると考えられる。  


== 神経細胞での局在 ==
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| '''動画 [[GFP]]ラベルした温度感受性ウィルス膜タンパク質VSV-Gが培養[[海馬]]神経細胞内で小胞体からゴルジ体へ移る過程'''<br>39℃ではVSV-Gは租面小胞体にあり、細胞体樹状突起全体に均一に分布する。その後温度を下げると、租面小胞体からゴルジ体への移動が起こる。まず、一様な分布をしていたVSV-Gが細胞の各部分で小さな輝く点となり、移動を始める。輝点は細胞体内で融合してゴルジ体に局在する。細胞体の下から出て左側にカーブする突起が[[軸索]]で、他の突起が樹状突起である。これら以外の細い突起は、他の神経から伸びた軸索である。
| '''動画 [[GFP]]ラベルした温度感受性ウィルス膜タンパク質VSV-Gが培養[[海馬]]神経細胞内で小胞体からゴルジ体へ移る過程'''<br>39℃ではVSV-Gは租面小胞体にあり、細胞体樹状突起全体に均一に分布する。その後温度を下げると、租面小胞体からゴルジ体への移動が起こる。まず、一様な分布をしていたVSV-Gが細胞の各部分で小さな輝く点となり、移動を始める。輝点は細胞体内で融合してゴルジ体に局在する。細胞体の下から出て左側にカーブする突起が[[軸索]]で、他の突起が樹状突起である。これら以外の細い突起は、他の神経から伸びた軸索である。
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== 神経細胞での局在 ==
 神経細胞では、電子顕微鏡の観察からゴルジ体は主に核の周囲にあることが分かっているが、それ以外に分布するだろうか?[[wikipedia:ja:リボゾーム|リボゾーム]]は細胞体だけでなく、[[樹状突起]]にも局在する。もし樹状突起にゴルジ体もあれば、樹状突起の局所で[[チャネル]]や[[受容体]]などの膜タンパク質が合成できることになり、神経細胞内での部位特異的なシナプス制御のメカニズムを提供する。[[蛍光タンパク質]]でラベルした[[wikipedia:ja:ウイルス|ウイルス]]膜タンパク質VSV-G(vesicular stomatits virus G protein)を使って小胞体からゴルジ体へのタンパク質の移動をみると、ゴルジ体は細胞体か樹状突起の根本の部分にあり、そこまでタンパク質が輸送されているように見える(動画)。しかし、たとえ典型的なゴルジ体はなくとも、同等の機能を持つ膜系が樹状突起にあったり、小さな輸送小胞にみえるものがゴルジ体の役割を果たしていたり、ゴルジ体を経ずに膜タンパク質を合成出来る場合があったりするかもしれない。これらは分子神経科学の諸問題に魅力的な説明を与えるかもしれないが、分泌経路、ゴルジ体の機能および膜タンパク質合成の根幹に関わる問題であり、細胞生物学的視点からは強い証拠が望まれる。
 神経細胞では、電子顕微鏡の観察からゴルジ体は主に核の周囲にあることが分かっているが、それ以外に分布するだろうか?[[wikipedia:ja:リボゾーム|リボゾーム]]は細胞体だけでなく、[[樹状突起]]にも局在する。もし樹状突起にゴルジ体もあれば、樹状突起の局所で[[チャネル]]や[[受容体]]などの膜タンパク質が合成できることになり、神経細胞内での部位特異的なシナプス制御のメカニズムを提供する。[[蛍光タンパク質]]でラベルした[[wikipedia:ja:ウイルス|ウイルス]]膜タンパク質VSV-G(vesicular stomatits virus G protein)を使って小胞体からゴルジ体へのタンパク質の移動をみると、ゴルジ体は細胞体か樹状突起の根本の部分にあり、そこまでタンパク質が輸送されているように見える(動画)。しかし、たとえ典型的なゴルジ体はなくとも、同等の機能を持つ膜系が樹状突起にあったり、小さな輸送小胞にみえるものがゴルジ体の役割を果たしていたり、ゴルジ体を経ずに膜タンパク質を合成出来る場合があったりするかもしれない。これらは分子神経科学の諸問題に魅力的な説明を与えるかもしれないが、分泌経路、ゴルジ体の機能および膜タンパク質合成の根幹に関わる問題であり、細胞生物学的視点からは強い証拠が望まれる。