「細胞外記録」の版間の差分

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===マルチユニット記録===
===マルチユニット記録===
 同一個体の脳などから、同時に複数の神経細胞のユニット活動を記録することをマルチユニット記録multi-unit recording(マルチニューロン記録multi-neuronal recording、多細胞同時記録などともいう)と呼ぶ。最も単純なマルチユニット記録は、1本(1チャンネル)の電極から数細胞のユニット活動を同時に記録し、波形の違いをもとに個別の数細胞のユニット活動に分離する方法である(1電極-数細胞)。なお、1電極における多細胞のユニット活動を集合的に(分離せずに)解析したものは、[[マルチプルユニット]]multiple unit活動(またはmulti-unit activity (MUA))と称する。一方、櫛状や剣山状にした複数の電極(数百ミクロン~数ミリ間隔)を使って、各電極から単一ユニット活動をそれぞれ同時に記録する方法は、特に広範囲の脳領域の活動を調べるのに適している(多電極-各1細胞)。また、複数の電極を近接配置(約25~50ミクロン間隔)したワイヤ・[[テトロード]]や[[シリコンプローブ]]をもちいると、多数の細胞のユニット活動を効率的に分離することができ、局所回路内の細胞間相互作用を詳細に解析することができる(多電極-多細胞)<ref><pubmed> 8351520 </pubmed></ref>。
 同一個体の脳などから、同時に複数の神経細胞のユニット活動を記録することをマルチユニット記録multi-unit recording([[マルチニューロン記録]]multi-neuronal recording、[[多細胞同時記録]]などともいう)と呼ぶ。最も単純なマルチユニット記録は、1本(1チャンネル)の電極から数細胞のユニット活動を同時に記録し、波形の違いをもとに個別の数細胞のユニット活動に分離する方法である(1電極-数細胞)。なお、1電極における多細胞のユニット活動を集合的に(分離せずに)解析したものは、[[マルチプルユニット]]multiple unit活動(またはmulti-unit activity (MUA))と称する。一方、櫛状や剣山状にした複数の電極(数百ミクロン~数ミリ間隔)を使って、各電極から単一ユニット活動をそれぞれ同時に記録する方法は、特に広範囲の脳領域の活動を調べるのに適している(多電極-各1細胞)。また、複数の電極を近接配置(約25~50ミクロン間隔)したワイヤ・[[テトロード]]や[[シリコンプローブ]]をもちいると、多数の細胞のユニット活動を効率的に分離することができ、局所回路内の細胞間相互作用を詳細に解析することができる(多電極-多細胞)<ref><pubmed> 8351520 </pubmed></ref>。


 近接電極から記録した多数の細胞のユニット活動を分離するためには、[[スパイク・ソーティング]]spike sortingという解析技術をもちいる。一般に、スパイク・ソーティングでは、スパイク検出、特徴抽出、クラスタリングの3過程を経て、個別の細胞に由来するスパイク群(クラスターcluster)に分類していく。スパイク検出では、記録トレースにおいて基準を超える電位変化をスパイク候補として選び出す。特徴抽出では、[[主成分分析]] principal component analysis (PCA)や[[ウェーブレット変換]]などをもちいて、各チャンネルのスパイク波形の特徴情報を算出する。最後に、多次元の特徴空間におけるスパイクの分布に基づいて、[[classification EM]] (CEM)法や[[変分ベイズ]]varietional Bayes法などにより、個々のスパイクをクラスターに分類する。クラスタリングには米国で開発された[http://osiris.rutgers.edu/frontmid/indexmid.html KlustaKwik]や我が国の[http://etos.sourceforge.net/ EToS]などの無料ソフトウェアが公開されている。また、複数の重複したスパイクを分離するために、[[独立成分分析]] independent component analysis (ICA)が用いられることもある。
 近接電極から記録した多数の細胞のユニット活動を分離するためには、[[スパイク・ソーティング]]spike sortingという解析技術をもちいる。一般に、スパイク・ソーティングでは、スパイク検出、特徴抽出、クラスタリングの3過程を経て、個別の細胞に由来するスパイク群(クラスターcluster)に分類していく。スパイク検出では、記録トレースにおいて基準を超える電位変化をスパイク候補として選び出す。特徴抽出では、[[主成分分析]] principal component analysis (PCA)や[[ウェーブレット変換]]などをもちいて、各チャンネルのスパイク波形の特徴情報を算出する。最後に、多次元の特徴空間におけるスパイクの分布に基づいて、[[classification EM]] (CEM)法や[[変分ベイズ]]varietional Bayes法などにより、個々のスパイクをクラスターに分類する。クラスタリングには米国で開発された[http://osiris.rutgers.edu/frontmid/indexmid.html KlustaKwik]や我が国の[http://etos.sourceforge.net/ EToS]などの無料ソフトウェアが公開されている。また、複数の重複したスパイクを分離するために、[[独立成分分析]] independent component analysis (ICA)が用いられることもある。