「脊髄神経」の版間の差分
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脊髄神経は機能的には求心性の[[感覚神経]]([[皮膚感覚]]、[[深部感覚]]、[[内臓感覚]])と遠心性の[[運動神経]]([[wikipedia:ja:|骨格筋]]を支配する[[体性運動神経]]と[[wikipedia:ja:|血管]]や[[wikipedia:ja:|内臓]]の筋を支配する[[内臓運動神経]])を含んでいる。四肢体幹に分布する神経のほとんどは脊髄神経である(一部、脳神経である[[迷走神経]]が胸腹部の内臓を支配している)。 | |||
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[[ファイル:spinal nerves.png|thumb|200px|''' | [[ファイル:spinal nerves.png|thumb|200px|'''図.脊髄神経の構成'''<br>青:求心性感覚神経(体性、内臓)<br>赤:体性遠心性運動神経<br>緑:交感神経節前線維<br>黒:交感神経節後線維<br>Gray’s Anatomy (35th ed.)より改変]] | ||
脊髄神経は[[wikipedia:ja:|脊柱]]の前後の[[wikipedia:ja:|椎骨]]の間にできる[[wikipedia:ja:|椎間孔]]を通って[[wikipedia:ja:|脊柱管]]を出てくるので、そこの椎骨に対応して名づけられている。ヒトでは左右31対(第1[[頚神経]]~第8頚神経:C1-C8、第1[[胸神経]]~第12胸神経:T1-T12もしくはTh1-Th12、第1[[腰神経]]~第5腰神経:L1-L5、第1[[仙骨神経]]~第5仙骨神経:S1-S5、[[尾骨神経]]:Co)ある。C1は頭蓋の[[wikipedia:ja:|後頭骨]]と第1[[wikipedia:ja:|頸椎]]([[wikipedia:ja:|環椎]])のあいだからでるものをさし、C8は第7頸椎と第1[[wikipedia:ja:|胸椎]]のあいだからでるものをさす。第1胸椎と第2胸椎の間から出る神経をT1、次のものをT2というように、漸次各椎骨名に倣って名づけられている。(ここでの説明は[[wikipedia:ja:|ヒト]]の解剖所見をもとに書かれているが、基本的には他の[[wikipedia:ja:|脊椎動物]]にもあてはまることである。) | |||
==解剖== | ==解剖== | ||
脊髄神経は脊髄から伸びる各々数本の[[後根]]と前根が合流して一本の束となって椎間孔を通り脊柱管の外に出る。 | |||
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脊髄後索に入る求心性の知覚神経線維で体性感覚と自律性の内臓感覚機能を司る。 | 脊髄後索に入る求心性の知覚神経線維で体性感覚と自律性の内臓感覚機能を司る。 | ||
後根には前根との合流直前に後根神経節(脊髄神経節)という膨らみがあって、そのなかに神経節細胞とよばれる知覚性の神経細胞が集まっている。この神経細胞は細胞体から細胞質突起を一本だけ出す偽単極性の細胞である。この突起はやがて2本に分岐し、片方(中枢突起 central process)は脊髄に、もう片方(末梢突起 peripheral process)はその支配領域にむかう。末梢端はたとえば皮膚(体性知覚を司る一般体性求心性神経)、臓器(内臓感覚を司る一般内臓求心性の自律神経)など、その分布先で直接感覚情報を受容するほか、受容体と複合体を形成して感覚の受容を行う。末梢突起で受容した感覚情報は求心性に細胞体へ、また同時に中枢突起へと伝えられる。中枢突起の先端は脊髄内あるいは延髄まで上行してから、そこに位置する中枢神経系の感覚の伝導路の神経細胞にシナプス連結する。 | |||
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===脊髄神経の形成=== | ===脊髄神経の形成=== | ||
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===交感神経系=== | ===交感神経系=== | ||
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頸髄~腰髄レベルの前根からでる交感神経(遠心性)の節前線維(自律神経)は交感神経幹(脊柱の外側面に貼りつき、ところどころに神経節をつくりながら、頭蓋底から尾骨レベルまでつづく神経の束)に加わり、いずれか近隣の神経節(上頸・中頸・頸胸神経節、胸神経節、腰神経節、仙骨神経節など)で節後神経細胞にシナプス結合する。そこからの神経軸索(節後線維)は神経束を形成(大・小内臓神経など)したり、血管に絡まったり(頸動脈神経叢)、あるいは末梢神経の分岐に合流しながら、各支配臓器に向かう。臓器周辺では、よく発達した神経叢(心臓神経叢、肺神経叢、腹腔神経叢、骨盤神経叢など)の形成をみる。 | 頸髄~腰髄レベルの前根からでる交感神経(遠心性)の節前線維(自律神経)は交感神経幹(脊柱の外側面に貼りつき、ところどころに神経節をつくりながら、頭蓋底から尾骨レベルまでつづく神経の束)に加わり、いずれか近隣の神経節(上頸・中頸・頸胸神経節、胸神経節、腰神経節、仙骨神経節など)で節後神経細胞にシナプス結合する。そこからの神経軸索(節後線維)は神経束を形成(大・小内臓神経など)したり、血管に絡まったり(頸動脈神経叢)、あるいは末梢神経の分岐に合流しながら、各支配臓器に向かう。臓器周辺では、よく発達した神経叢(心臓神経叢、肺神経叢、腹腔神経叢、骨盤神経叢など)の形成をみる。 | ||
2012年5月29日 (火) 15:16時点における版
英語名:spinal nerves
脊椎動物の神経系は中枢神経系(脳と脊髄)と末梢神経系(たとえば顔面神経や坐骨神経など、いわゆる体中に張りめぐらされた神経の総称)に区分される。末梢神経系は脳や脊髄から伸びて全身の器官、組織を支配する神経からなる。脊髄神経は、脊髄から伸び出る末梢神経のことをいう。一方、脳から伸び出る末梢神経のことは脳神経と呼ぶ。
脊髄神経は機能的には求心性の感覚神経(皮膚感覚、深部感覚、内臓感覚)と遠心性の運動神経(骨格筋を支配する体性運動神経と血管や内臓の筋を支配する内臓運動神経)を含んでいる。四肢体幹に分布する神経のほとんどは脊髄神経である(一部、脳神経である迷走神経が胸腹部の内臓を支配している)。
名称
脊髄神経は脊柱の前後の椎骨の間にできる椎間孔を通って脊柱管を出てくるので、そこの椎骨に対応して名づけられている。ヒトでは左右31対(第1頚神経~第8頚神経:C1-C8、第1胸神経~第12胸神経:T1-T12もしくはTh1-Th12、第1腰神経~第5腰神経:L1-L5、第1仙骨神経~第5仙骨神経:S1-S5、尾骨神経:Co)ある。C1は頭蓋の後頭骨と第1頸椎(環椎)のあいだからでるものをさし、C8は第7頸椎と第1胸椎のあいだからでるものをさす。第1胸椎と第2胸椎の間から出る神経をT1、次のものをT2というように、漸次各椎骨名に倣って名づけられている。(ここでの説明はヒトの解剖所見をもとに書かれているが、基本的には他の脊椎動物にもあてはまることである。)
解剖
脊髄神経は脊髄から伸びる各々数本の後根と前根が合流して一本の束となって椎間孔を通り脊柱管の外に出る。
前根
前索から出る遠心性の運動神経線維と自律神経線維からなる。(適宜内容を御追加下さい)
後根
脊髄後索に入る求心性の知覚神経線維で体性感覚と自律性の内臓感覚機能を司る。
後根には前根との合流直前に後根神経節(脊髄神経節)という膨らみがあって、そのなかに神経節細胞とよばれる知覚性の神経細胞が集まっている。この神経細胞は細胞体から細胞質突起を一本だけ出す偽単極性の細胞である。この突起はやがて2本に分岐し、片方(中枢突起 central process)は脊髄に、もう片方(末梢突起 peripheral process)はその支配領域にむかう。末梢端はたとえば皮膚(体性知覚を司る一般体性求心性神経)、臓器(内臓感覚を司る一般内臓求心性の自律神経)など、その分布先で直接感覚情報を受容するほか、受容体と複合体を形成して感覚の受容を行う。末梢突起で受容した感覚情報は求心性に細胞体へ、また同時に中枢突起へと伝えられる。中枢突起の先端は脊髄内あるいは延髄まで上行してから、そこに位置する中枢神経系の感覚の伝導路の神経細胞にシナプス連結する。
脊髄神経の形成
脊髄神経は前根と後根が合流したあとで交感神経幹に交通枝を出しながら分岐し、脊髄神経前枝と脊髄神経後枝となる。これら前枝、後枝はそれぞれ体の前面、後面の支配を担う。概して、前枝は後枝より太く支配領域も広い。上下の脊髄神経の前枝は、吻合と分岐を繰り返しながら複雑な神経叢(頚神経叢:C1-C4、腕神経叢:C5-T1、腰神経叢:L1-L4、仙骨神経叢:L4-S3)を形成しながら特定の支配領域に向かう(それぞれの脊髄神経の皮膚の分布領域はデルマトームとよばれる)。
交感神経系
頸髄~腰髄レベルの前根からでる交感神経(遠心性)の節前線維(自律神経)は交感神経幹(脊柱の外側面に貼りつき、ところどころに神経節をつくりながら、頭蓋底から尾骨レベルまでつづく神経の束)に加わり、いずれか近隣の神経節(上頸・中頸・頸胸神経節、胸神経節、腰神経節、仙骨神経節など)で節後神経細胞にシナプス結合する。そこからの神経軸索(節後線維)は神経束を形成(大・小内臓神経など)したり、血管に絡まったり(頸動脈神経叢)、あるいは末梢神経の分岐に合流しながら、各支配臓器に向かう。臓器周辺では、よく発達した神経叢(心臓神経叢、肺神経叢、腹腔神経叢、骨盤神経叢など)の形成をみる。
副交感神経系
一方、副交感神経の節前線維は脊髄レベルではS2-S4の側索中間外側柱の神経細胞体からでる(脳神経に含まれる副交感神経については脳神経の項参照)。これらの節前線維は脊髄神経に混じって末梢器官(結腸下部、直腸、膀胱など)に進み、臓器周辺の神経叢に達してはじめて、そこの節後神経細胞に連結し、近隣の臓器を支配する。
関連項目
参考文献
Gray’s Anatomy: R. Warwick and P. L. Williams (Eds.), 35th edition, Longman Ltd., Edinburgh, GB, 1973.
Neurological Anatomy in Relation to Clinical Medicine: A. Brodal, 3rd edition, Oxford University Press, New York, USA, 1981.
(執筆者:端川勉 担当編集委員:伊佐正)