「前庭神経核」の版間の差分

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英語名:vestibular nuclei
英語名:vestibular nuclei


同類語:一次求心性神経,前庭神経、半規管、前半規管、上半規管、外側半規管、水平半規管、後半規管,耳石、卵形嚢、球形嚢、Deiters細胞、Deiters核,交連抑制、前庭動眼反射、前庭脊髄反射、前庭頚反射、前庭脊髄路、内側前庭脊髄路、外側前庭脊髄路,平衡覚
 [[橋・延髄移行部]]において、外転神経核のやや吻側から舌下神経核吻側部のレベルに広がる大きな神経核である。前庭神経(前庭器官に由来する前庭神経節細胞の中枢へ向かう軸索、すなわち一次求心性神経)が終止する領域(一次中継核)を含むが、前庭神経核の全体に前庭神経が投射しているわけではない。一次求心性神経以外に、前庭神経核へ入力を及ぼす部位として、対側の前庭神経核、小脳皮質、小脳核、舌下神経前位核、Cajal間質核、脊髄、大脳皮質前庭野、脳幹網様体などがある。前庭神経核からの投射先としては、外眼筋の運動神経核(動眼神経核、滑車神経核、外転神経核)、視床の他、上記の入力を及ぼす部位の多くに出力もしている。また、自律神経系の諸核とも線維連絡がある。したがって、前庭神経核は、単に末梢前庭からの入力を中枢に伝える感覚性の一次中継核であるという機能にとどまらず、多彩な入力を受け、中枢神経のさまざまな部位に出力し、眼球運動、体平衡機能などの運動機能や、自律神経機能にも深く関わっている。
 
 橋・延髄移行部において、外転神経核のやや吻側から舌下神経核吻側部のレベルに広がる大きな神経核である。前庭神経(前庭器官に由来する前庭神経節細胞の中枢へ向かう軸索、すなわち一次求心性神経)が終止する領域(一次中継核)を含むが、前庭神経核の全体に前庭神経が投射しているわけではない。一次求心性神経以外に、前庭神経核へ入力を及ぼす部位として、対側の前庭神経核、小脳皮質、小脳核、舌下神経前位核、Cajal間質核、脊髄、大脳皮質前庭野、脳幹網様体などがある。前庭神経核からの投射先としては、外眼筋の運動神経核(動眼神経核、滑車神経核、外転神経核)、視床の他、上記の入力を及ぼす部位の多くに出力もしている。また、自律神経系の諸核とも線維連絡がある。したがって、前庭神経核は、単に末梢前庭からの入力を中枢に伝える感覚性の一次中継核であるという機能にとどまらず、多彩な入力を受け、中枢神経のさまざまな部位に出力し、眼球運動、体平衡機能などの運動機能や、自律神経機能にも深く関わっている。


 前庭神経核は、大きく上核、外側核、内側核、下核の4亜核に分類される。外側核には巨大細胞(Deiters細胞)が存在し、Deiters核とも称される。このDeiters 細胞の存在する部位は、外側核の中でも背側部であり、その腹側には、大型の細胞の存在する領域があり、この領域をどのように考えるかにより、外側核の腹側の境界に関して、研究者により意見が異なる。Brodalらは、この領域を、ネコとサルにおいて、”外側核腹側部”とした <ref name=ref1><pubmed>6470216</pubmed></ref> <ref name=ref2>'''Brodal, A., Pompeiano, O. and Walberg, F.'''<br>The Vestibular nuclei and their connections - Anatomy and functional correlations -. <br>London, Oliver and Boyd; 1962. </ref>。Voogdらは、細胞構築学のみならず、中枢神経内の他の部位との線維連絡の様式の観点から、この領域を内側核の一部と考え、”内側核大細胞部magnocellular division”と呼んだ<ref name=ref3><pubmed>2458274</pubmed></ref> <ref name=ref4><pubmed>3995273</pubmed></ref>。機能的にも、Deiters細胞が存在する外側核の背側部は、腹側部とは異なることが知られている。すなわち、背側部は、発生学的に小脳核の一部と考えられ、一次求心性神経が投射せず、小脳皮質のプルキンエ細胞から直接抑制を受ける。それに対して腹側部は、半規管、耳石器からの一次求心性神経の強い投射を受けるが、プルキンエ細胞からの投射はない。
 前庭神経核は、大きく上核、外側核、内側核、下核の4亜核に分類される。外側核には巨大細胞(Deiters細胞)が存在し、Deiters核とも称される。このDeiters 細胞の存在する部位は、外側核の中でも背側部であり、その腹側には、大型の細胞の存在する領域があり、この領域をどのように考えるかにより、外側核の腹側の境界に関して、研究者により意見が異なる。Brodalらは、この領域を、ネコとサルにおいて、”外側核腹側部”とした <ref name=ref1><pubmed>6470216</pubmed></ref> <ref name=ref2>'''Brodal, A., Pompeiano, O. and Walberg, F.'''<br>The Vestibular nuclei and their connections - Anatomy and functional correlations -. <br>London, Oliver and Boyd; 1962. </ref>。Voogdらは、細胞構築学のみならず、中枢神経内の他の部位との線維連絡の様式の観点から、この領域を内側核の一部と考え、”内側核大細胞部magnocellular division”と呼んだ<ref name=ref3><pubmed>2458274</pubmed></ref> <ref name=ref4><pubmed>3995273</pubmed></ref>。機能的にも、Deiters細胞が存在する外側核の背側部は、腹側部とは異なることが知られている。すなわち、背側部は、発生学的に小脳核の一部と考えられ、一次求心性神経が投射せず、小脳皮質のプルキンエ細胞から直接抑制を受ける。それに対して腹側部は、半規管、耳石器からの一次求心性神経の強い投射を受けるが、プルキンエ細胞からの投射はない。
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 大脳皮質への前庭入力に関しては、「平衡覚」の項を参照されたい。
 大脳皮質への前庭入力に関しては、「平衡覚」の項を参照されたい。
== 関連項目 ==
*[[前庭神経]]
*[[半規管]]
*[[耳石]]
*[[前庭動眼反射]]
*[[前庭脊髄反射]]
*[[前庭頚反射]]
*[[前庭脊髄路]]
*[[内側前庭脊髄路]]
*[[外側前庭脊髄路]]
*[平衡覚]]


== 参考文献 ==
== 参考文献 ==